せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

セレストブルー

2008-10-05 21:52:36 | テイルズ
青空が、落ちてきた。

葉が木から離れて舞い落ちるように、それは鮮やかな散り様だった。ざまぁみなさい。そう言うはずだったのに私の世界のネジはちょうど回りきってしまったらしい、反応することもできずに、崩れ落ちていく手に巻き添えて地に膝をついた。肩にかかっていた手が滑り落ちて、まるで人形のようにだらしなく力なく、今まで人だったものは無言になった。ゾッとした。吐き気がする。怖い、コワイ。つま先から入り込んだ恐怖は背を這い上がって脳天を突きぬけ、今にも私を殺そうとしている。

「レイズデッド」

青空は馬鹿だ。決して追いつくことのない月を追いかけ続け、太陽に身を焦がして死んでしまった。月が太陽によって輝いているのだからと、自らの身が焦がれるのも構わず一心不乱にここまで走ってきたのに、青空は、堕ちてしまった。新月のように見えないときだって、月は、私はここに居るのに。

「レイズデッド!!」

青空は、大馬鹿者だ。

「…何で死んじゃったのよ、デクス…ッ!!」



膨らみすぎた夢はぱちんという音を立て、白く白く、暗い影を落として破裂した。薄く開いたカーテンからもれる微かな陽光が朝を告げていた。
夢は弾けたくせに未だ胸にもやをかけ、頬に涙となって伝うし、額には髪が、汗によって煩わしく張り付いている。鬱陶しくて手で払い落とす。その手すら、薄っすらと汗が滲み濡れていた。
体を起こせば、そこはどこかの宿屋のようだった。木製の壁は古臭く、火の点っていない暖炉はいかにも埃がたまっていそうで少々不潔。その部屋はシングルのベッド一つしかなく、どう考えても二人で泊まれるような広さではなかった。少なくとも、大人の男が一人、足を伸ばして座れるほどのスペースはない。彼がトレードマークのようにいつも抱えていたアイアンメイデンは姿さえないし、扉の向こうからでもゆうに臭いを訴えてくる香水の存在もわからない。その残り香さえ感じられない、静かな朝だった。底冷えするような感覚は、まだ胃の中に鉛となって残っているようだ。

重い体をベッドから降ろし、まず初めにしたのは顔を洗うことだった。汗でべとべとになった髪を人よりは尖った、けれどエルフよりは短い耳にかけ、冷たい水を手で掬っては顔に叩きつけるようにして汗を洗い流した。一緒に夢の残像も洗い流したつもりで鏡を見るとほくそ笑んだ私が言った、「ざまぁみなさい」。そうだ、そうだだって、着替えて階段を降りれば、紛いようもなく彼はそこに居るのだから。声には出さずもう一度弾け飛んだ夢の欠片に向かって言ってやる。ざまぁみなさい、所詮あんたは、夢でしかないのよ。私の勝ち。階段はステップを踏むように降りる。

「朝ごはんはまだ、デクス!」
「今作ってるよ、アリスちゃん」

ほら、居た。もう一度ほくそ笑んで、既視感とも相違感ともつかない気分の悪い感情をうちやって席につく。今日のメニューはシンプルにトーストとハムエッグにしてみたよ。そんな声に生返事を返して、ぼうっと考える。此処は宿ではないらしい。客に食事を作らせるような安い宿に私が泊まることを、デクスが許すはずがない。店主を締め上げてでも食事を出させるほどの執着が今はないのだから、ここはどこかの家なのだろうか。本当に馬鹿らしい執着、何度嘲笑ったことともしれないのに、それでもデクスは私を追いかけていつだって走っていた。

「…ねえ、マルタちゃんにやられた傷はもういいの」

そう、そうだ。夢の熱に浮かされでもしたのか起きる前の記憶は曖昧で、けれど彼はギンヌンガ・ガップの底でマルタちゃんに斬られたはずなのだ。もしそうだとすると、その場所から重傷の大人を抱えてきたことになる。それは無理だ、魔物の力を借りようにもあの時はエクスフィアが底をついていたし、一人で帰ってきたとして、誰がデクスを地上まで運ぶのだろう?
そういえばいつだってしていたと思っていた香水の臭いが、いつだって持ち歩いていたと思っていたアイアンメイデンが影も形も残っていない。ないといえば、私の鞭も見当たらない。もう一度デクスに視線を移せば苛立ちすら与えるようなハート形をした悪趣味なエプロンを翻らせ、今まで料理に没頭していたデクスは漸く振り向いた。そのデクスにも相違はあった。髪が短いし、何より服が絹を編んで作られたような、一般人の着用する服だ。そんなもので、どうして今まで戦いに身を投じられただろうか。

「マルタ? …俺は怪我なんかしてないぜ?」
「……え?」

怪訝そうな顔で、デクスは更に記憶と現実の相違を広げる決定的な台詞を吐く。尻上がりの名前。それはまるで、彼女を知らないとでも言いたげなものだった。一瞬だけ世界が止まったものと、勘違いする。

「夢でも見たんじゃないのか」

目を丸くし素っ頓狂な声を上げた私へ、やけに可笑しそうにしながらデクスが言った。確かにデクスは、彼女に斬られたはずだ。彼女、?彼がいつ、どこで、だれに斬られたと思っていたのだろう?物騒なことこの上ない。ハイマは今日も平和だし、何より馬鹿馬鹿しく非力で、慎ましく穏やかに生きているこの男を誰が斬るというのだろう。

そもそも私は一体なぜ、アイアンメイデンや二人ともが一度もつけたことのない香水の臭いを探していたのだったっけ?

ああ、それは今まで見ていた夢の中のものだったのだ、鮮明な夢に騙されて、私はまだ寝ぼけていたらしい。頬を両手で叩いて痛みを確認し、それからぽっかりとテーブルの横に空いた窓らしい吹き抜けから景色を仰いだ。
山の頂上付近に作られたこの家は、丁度海に面するように作られた窓があった。時折海風がやってきては頬を撫ぜ、夢の闇を取り去ってくれていた。目に映りこむセレストブルー。こちらのほうがいいに決まっている。目の前には湯気を立てる食事、目の前にはしまりの無い顔で味の是非を問うてくる隣人。口に運んだトーストの香りが口の中いっぱいに広がって、それで夢は全て忘れてしまった。

「いただきます」
「いただきます」




「アリスちゃんも今、そっちに行くからね」

落ちていく瞼の底に、散らばったセレストブルーの髪を見た。



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(セレストブルー)

書き直しだから所々意味がわからなくなってる…|||orz
ええと、これはつまり。

まず第一段落(むしろこれじゃ連だけど)。
アリスの「現実」です。こっちが本当の記憶。
眠る前、というか「死ぬ間際」の記憶ですね。
それで第二段落がこれは、もう、なんていうか。

天国です(どこだ)

ざまぁみなさい、って言ったのは死ぬ間際言い損ねたのを、
なんとなく覚えてて、さあ言ってやったぞ、とほくそ笑む。
誰にっていうのは特に無くて、言いたくなっただけです。

最後のうっすーい文字は、題名のオチ。
セレストブルー、青空、はデクスのことです。


ちなみに月と視点はアリスちゃんですよ、!(ぎゃふん)

セレストブルー

2008-10-05 20:56:33 | Weblog
セレストブルーという話を書いていたんだけど消えた。
書き終わった直後に消えた(死)

…まじでしにたい…。
デクアリ死にネタっぽいものだったんだけどな。
今日か明日か、とにかく書き直す。何年もさきかもだけど。