せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

狂った時計の針

2007-12-23 20:01:20 | 小説
「ダム、よくやった。次も相手を甚振っておやり。」
「お褒めに預かり光栄です。」

甘い甘い薔薇の香りが鼻をくすぐる。僕たちは皆一律母と言う存在を知らないが、もし僕にそんな存在が居るのだとしたらこの女性がいい。この女性以外の女が僕の母だというのならその女を殺してしまったっていい、髪を伝う氷のような手が僕の世界で、今で、喜びだ。この女性以外の全ては要らない、唯一無二のペアとさえ謳われる"首刎ねレイヴン"だってRouge la Reginaに仰せ付かったからだ。そうでなければどうしてあんな"妄想男"と組まなければならないのか。そんな人生最大の屈辱さえReginaの為ならば快楽と化す。Reginaに仕えて死するのならそれで構わない。きっとReginaは褒めて下さる、こんな風に髪を頬を撫でながら。

「して、奴等の動きはどうだった?何か変わりはないか。」
「それがどうも可笑しいのですよ、Regina.グリフォンの奴等が一ターンで"同時に動い"て死しました。すれ違うようにして共倒れしましたよ、あの"聖獣もどき"等めが。汚らわしく愚かしき行為だとは思いませんか、由緒正しきアンダーボードチェス大会のルールを逸するなどと。」
「おまえの言う通りだな。…これからも監視を続けるように、これは褒美だ。」

Reginaの小さき微笑は今にも香って来そうに美しく華のように艶やかだ。顔の輪郭を伝って唇を撫でた冷たい指に目を閉じる。

「仰せのままに、Nostro la Sua Maestà la Regina.」

―――
(絶対服従関係)
それを愛だと誰が笑えよう。

題名(絶対服従関係)の下の文章はお題をお借りしました。
今耳元でダムから見たルージュのような美しき歌声で歌って
下さっているのはアリカ様。MDだけど。(笑)「赤と黒」。

短編型で行こうと思います。ちなみに造語なのであしからず。
短編だけで構成された長編でも短編でもSSでもない話の形で。

歪み軋む歯車

2007-12-23 02:43:27 | 小説
あのさ、なんでわたしたちがてきどうしになったかおぼえてる?

それは遠い遠い記憶。まだ私が私になりたての頃、リオンがリオンになった頃。ぼんやりとした視界の中で私は確かにその翼を掴んだ。ぼんやりとした感覚の中でリオンは確かにこの尻尾を掴んだ。赤子が母親の指を握るように、私は欠けた"私"を補うように真っ黒で堕天使のような翼を掴んだのだ。
気づけば私たちは常に一緒に居た。けれど何故か何もかもが間逆で、考え方も、生き様も、趣向も、もちろん、性別だって。全てが違い過ぎた所為か、気づけば血を流していた。何故って、そりゃあ。
どすどす、どくどく。何度も同じ場所に爪を突き立て合う私たちはどう見ても異質だったろう。けれど私たちは、あれ以上に楽しい遊びを知らなかった。そうして気が済んだら、自分が付けた傷口を舐め合ったのだ。だから相殺されているはずだった。私たちは、本当は。

「仲が悪くなんか、なかったのよね。」

猫のように鈴の結び付けられた尻尾を揺らしながらメアリがそうぼやく。事実だ。趣向は本当に間逆だったものの、本当はそこら辺の双子なんかよりもずっと仲が良かったはずだった。それが引き裂かれたのは第二千兆九十一億五千八百二十三万六千七百五十一回、アンダーボードチェス大会の時だった。毎回毎回メンバーは変わる、前回のチェスで死者が出た場合だけ。一度その役目に上れば二度と降りることはできない、それはアンダーボードの意思であり俺たちの意思には全く関係ない。だから嫌いだった、チェスで死者が出るのが。メアリと離れ離れになるのが。なにより、半身と殺し合うのは絶対に嫌だった。本能が告げていたから、メアリが死ねば俺も死ぬと。俺が死んでも、メアリは死ぬ。どちらが欠けても俺たちはもう生きてはいけなかった。ある意味ではとても幸福だ、ひとり残され異質な存在として、そしてこの死のゲームの勝者として崇め讃えられて生きていくなんて地獄を味わずに済むのだから。俺たちは、本当に、

「馬鹿だよな。俺、メアリのこと大好きなのに。」

そんなの私もだ。趣向も思考も違う私たち。けれど抱く感情だけは常に一緒だった。リオンの愛する人は私の愛する人、私の殺意はリオンの殺意、逆もまた然り。そうして私たちは守り守られ生きてきた。第二千兆九十一億五千八百二十三万六千七百五十一回、アンダーボードチェス大会の一ヶ月前。私たちの所に二人の女王様が現れた。一人は真っ赤なドレスを纏った、今のリオンのキング、レヌ=ルージュ。もう一人は、真っ黒なドレスを纏った、今の私のキング、レヌ=ブラン。彼女たちは声を揃えて言った、お前たちは選ばれた。次のチェス大会に参加せよ、と。
私たちは一瞬にして引き裂かれた。咄嗟に伸ばした手が相手に届かなかったことが、今の惨劇を招いた。何度謝ったって足りない。何度、怒ったって足りない。私たちはそれぞれの場所でそれぞれルークの焼印を首元に押され、その役目から逃げることはできなくなった。私はディーに会うまで口を閉ざし、リオンはダムに会うまで口を閉ざした。いつかこの手でレヌを殺すことを願いながら。だって私たち、抱く感情は一緒だものね。ああ、ほんとに、

「私だってリオンのこと大好きよ。また一緒に出掛けたい。」

だから彼女はアリスを守る。だから俺はアリスを奪う。最終ゲームでチェックされたキングは一度相手の城に連れて行かれる。その時を狙ってレヌを殺してもらえば、あるいはこの殺戮ゲームが終わるかもしれない。俺がアリスを殺してしまわなければ、の話だけれど。メアリだって同じだ。逆にレヌを殺さないかが心配で仕方がない、感情は同じでも立場は若干違ってくるのだから。彼女が遊びたいと言わないのはこのゲームが遊びの延長戦であることに気付きはじめたからだろう。傷付いて傷付けて、爪を切り落とし二人でまたお気に入りの木の上で眠るまで遊び続けるのだから。俺がメアリを傷付けたところと同じところに血が伝う。生暖かくて鉄臭い、大嫌いな大嫌いな赤。だから赤く染まったメアリなんか見たくない。けれど体は意思と関係なく彼女を傷付ける。いっそのこと喉でも掻き切って死んでやろうかと思ったこともあったけど、ダムにぶん殴られたから止めた。メアリも舌を噛み切って死んでやろうと思ったことがあったらしいけど、ディーに泣きつかれて止めたらしい。結構俺たちは友人関係と悪運に恵まれているらしい。
だからさ、ねえ。メアリ。

「今度は一緒に、逝ってあげる。」

ありがと、とメアリは笑った。

―――
(絶対均衡関係)
しんでもいっしょよ、リオン。
しんでもいっしょだ、メアリ。

Dead or Killより後。前のつもりだったんだが。
あ、リオンが公正しましたヨ(いやな公正!)
アリスの箱庭は過去に結構一物持ってる人多い。

まだ構想段階だしチェイシャとハリーとソリエ、
この三人の存在って危ういんですよねえ。
(ソリエは結構お気に入りだから消したくない)
とりあえずニセガメとハンプティダンプティを
入れるかどうかを検討中。ナイトが居ないから。

キングとクイーンは敵味方合わせて双子なんで、
両方とも味方に居る必要がないんです、よ、ね。
アリスをポーンにしてチェイシャを対に…とか。
…ありかもしれない。とりあえず役柄変更必須。