益田森林・林業普及情報

島根県西部農林振興センター 益田事務所

ある雨の日の物語

2006年05月10日 | 森の環境と生き物
B A君、先日、吉賀町へ行ったときに、
 黄色い花の写真を撮ったんだけど、
 この花の名前を知っているかね。


A なるほど黄色い花ですね。
  でも、名前は分かりません。ヒントを

B 第一ヒントは、君が仕事で外に出るときは
 70%が雨などの荒天だということだよ。

A え・・・???

B それでは第二ヒント、太田道灌でどうかね。
  この花と太田道灌の逸話だよ。
  ただし、私も、太田道灌が文武両道に
 すぐれていた室町時代の武将ぐらいしか分から
 ないんだけどね。

A ???

B 第三ヒント、逸話の概略は、太田道灌が
 遠乗りにでた時、にわか雨に遭遇し・・・

A あー、あー、その話なら知っています。
    七重八重 花は咲けども・・・ん・ん・んー
      忘れました
  出雲農林勤務時にK本課長に
       聞いたことがあるのですが・・・

B よく覚えていたね、続きは
   七重八重 花は咲けども 山吹の 
      実のひとつだになきぞ かなしき、だよ

A しかし、なぜ、雨男の僕と関係があるんですか?

B 聞いたことはあるようだが、肝心なところを
 覚えてなければダメだね。
  それは、太田道灌が遠乗りにでた時、
 にわか雨に遭遇し、"みの"すなわち雨合羽を
 借りようと近くの農家に行ったんだ。
  すると農家の少女が"みの"ではなく、
 山吹(ヤマブキ)の花を差し出して黙っていたんだ。
  道灌は、この少女は頭がおかしいのではと
 思いながら、その場を去っていった。
  帰ってからこのことを話すと、
 同僚か家臣かの一人が後拾遺和歌集の中に

   七重八重 花は咲けども 山吹の 
      実のひとつだになきぞ かなしき

  という歌があり、その娘は、"実の"と"蓑"(みの)
 をかけたのではといったそうた。
  道灌は、自分の無学を恥じその日から一層勉学に
 精進するようになったという逸話のことだよ。

A なるほど、今回は是非とも覚えておきます

B ところで、ヤマブキは本当に実が生らないと思うかね。

A ん~む、分かりません。

B 益田事務所にもある牧野新日本植物図鑑では、
 この逸話に出てくるヤマブキは、ヤエヤマブキで
 実ができないとあるんだ。


 どういうことかというと、花びらが一重のヤマブキ
 には実ができるが、ヤエヤマブキには実が生らないと
 いうことなんだ。
  これは、ヤエヤマブキが突然変異種で、雄しべ雌しべ
 が花びらに変化したと言われているからなんだ。
  もっとも、この目でしっかりと確認した訳ではないがね。


  ヤマブキ
 一重のヤマブキ、控えめでなかなかのものですよ。
 控えめなところは、まるでA君似?


  ヤエヤマブキ
 見事なヤエヤマブキの花は、七重八重というより
十重二十重のいった感じですね。



 ヤエヤマブキの花を2つに切ってみました。
 柄の細いスプーン状の花びらが中心までビッシリでした。
 雄しべ、雌しべのようなものはみたりませんでした。


A なるほど、これも覚えておきます。

B でも、実のできない植物が、
       どうして増えるのか分かるかね?

A え!

B そんなに舞い上がらずに冷静に考えたら分かるよ。
  スギ苗には確か実生苗があったね。

A あ! そーか 挿し木です。

B そーゆこと
  ほかに接ぎ木、株分けなども考えられるね。

A なーるほど


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