益田森林・林業普及情報

島根県西部農林振興センター 益田事務所

美林を温ねて新しきを知る?

2008年05月16日 | 森づくり
 GWは、しっかりとリフレッシュされましたか?
 私も美林を見て心の洗濯をしてきました。

「林業普及員ならいつも森林を見てるだろう?」
「なぜ、休みにわざわざ?」
 疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

 しかしながら、実際は、
「長らく手入れがされず、放ったらかしの森林を
 この度、やっと間伐しました。」
 という現場が多く、
 美林をじっくり眺めたり、中を歩く機会は、
 業務上、ほとんどないのです。


 ヘタな写真を撮りながら、林の中を歩きました。
 写真で皆さんに美しさが伝わるでしょうか?





 

 雨上がりであったため、林内の空気は冷ややかで、
 余計にすがすがしく感じられました。


 日本の美林(井原俊一著 岩波新書1997年発行)
 という本の冒頭、こんな文章が出てきます。

 いまから植えて、その森が実際に姿を現すのは、
 数十年先ということになる。
 いや、もっとかかるかもしれない。
 最低でも、100年後になるだろう。
 ここに、農業や工業とはちがう、
 森づくりの特殊性がある。
 つねに、時間のギャップがあるのだ。

 しかも、いま理想とする森は、
 はたして数十年、数百年後にも、
 多くの人々から支持される緑でありつづけるのだろうか。
 ここにも問題がある。
 この50年間を振り返ってみても、
 人々の森林への価値観は、時計の振り子のように揺れてきた。
 当初は、木材資源の造成が第一であり、
 いまは環境が優先する。
 緑の価値はこれからも、
 時代によって変わっていくにちがいない。
 (中略)
 価値観の変動があっても、その振幅には限りがある。
 「環境」と「資源」、「保全」と「利用」のあいだで、
 揺れ動いていく。
 その揺れの最大幅に対応できる
 森を求めていけばいいのではないか。
 わが国には、そんな森がまだ残されている。
 「美林」と呼ばれてきた緑である。

 戦後間もない頃ですが、
 朝日新聞が、
「森林資源の開発を急げ」という見出しで、
「木材需要の増大が明らかであるから、
 過密状態の奥地林を開発せよ。」という
 今の世の中では考えられない記事を出した時代もあり、
 価値観というものは、常に一定ではありません。

 今また、「環境」から「資源」「保全」から「利用」
 振り子が振れる時代であるような気がします。
 
 この二つが、同時に成立することが林業の特殊性ですが、
 それを具現化したものが「美林」だと思います。

 色々な情報が溢れている中、
 何が大切なのかわからなくなることがありますが、
「美林」を見ることでヒントが得られるのではないでしょうか?


 投稿者 島根県西部農林振興センター益田事務所林業普及グループ 
     主任林業普及員 大場寛文

 ~清流高津川、山の緑に映える柿色の瓦屋根の町並み~ 
  なつかしの国石見(いわみ)  


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