そらちゃんは、実はウエットごはんがあまり好きではない。
猫界で最強と言われるあのちゅーるでさえ、途中でイラネと言うことがある。
だいたいお昼頃がウエットごはんの時間。
朝5時前後にドライごはんを食べたあと、彼女は二度寝するわけで
雨なんぞ降ろうものならずーっと寝ているので
お昼になってもお腹が空かないとみえ
わざわざ寝床までお届けしても、イラニャと言われることが多い。
別に総合栄養食のドライだけで毎日ちゃんとウンチが出るなら
好きでもないウエットごはんを食べなくてもいいんだけど
かつて便秘になったことのあるそらちゃんなので
水分不足にならないようにとウエットごはんを用意してるのに
ちょっと小腹が空いてごはん欲しいにゃ~ぐらいのときに
ウエットの用意をしてるのを見ると去っていく。
それが好きなかつおのごはんだったとしても。
もうなんだかなあ、下僕の女は傷心だ。
そこで下僕たちは考えた。一休さんの将軍さま作戦
*でいこうと。
ちょっとお腹空いた~って言われても、あげない。
下僕の男は言った。
「将軍さまでもお腹が空けば、どんなごはんでも美味しく食べられるんだよ。
だからそらちゃんも、まだ食べちゃだめなんだ」
遊んで寝て起きて、また遊んで寝て起きて、
もうどうしようもなくギャースカわめくほどにお腹が空いた状態になってから
おもむろにウエットごはんを召し上がっていただくことに。



作戦成功して、ペロリと食べてくれるようになった。
そらちゃんは、将軍さまと呼ばれるようになった。
ただ、たまに食いつきの悪いことがあって、よく調べてみると
”ささみがベース”というごはんはお気に召さないのだった。
かつおって書いてあったのに、まさかのささみがベースって何なの。
下僕の女が作ったささみジャーキーは追いかけるほど好きなくせに。
仕方ないので下僕はささみふりかけをかけるのだった。
温めたささみの匂いが嫌いなのに、追いささみで食べるんだね。
猫はグルメとは言うけど、まったく将軍様だよ……。
*一休さんのお話
毎日毎食、贅を極めた料理なのにあまり美味しくないと箸の進まない将軍さま。
そこで一休さんが「私がこの世で一番美味しいお食事を差し上げます」と言って
将軍様に庭掃除、拭き掃除、薪割りまでさせておなかペコペコにさせて、
お寺でこしらえた粗末な粥と香の物を出す。
すると将軍さまは貪るように粥をかきこみ、お代わりをし、
「あぁ、見事にうまい食事だった」と満足したとさ。