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プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『宮殿泥棒』

2007-01-15 16:39:48 | 作家か行

 イーサン・ケイニンです。

 

『会計士』『バートルシャーグとセレレム』『傷心の街』『宮殿泥棒』の全四編。

どれも普通の小説なら脇役で終わってしまうであろう優等生達が主人公。

彼らの心の葛藤を繊細に描きつつ、それでも自分なりに精一杯生き抜いている

―――自分らしくあり続けようとがんばる様は共感せずにいられません。

 

努力家タイプの謹厳実直な中年会計士、天才的な兄と比較される凡庸な弟、

かつては劣等生・・・いまや産業実業界の大立者になった元教え子に

翻弄される老いた高校教師etcetc・・・

優等生達の、枠からはみ出せない複雑な心情を

彼らの周りの、それと対比するような存在を描く事により、

より鮮明に際立たせている様は、とても味わい深いものがあります。

 

後書きに紹介されてる、批評家レスリー・フォードラーが書いた、

マーク・トウェインの小説を例に、アメリカ小説に出てくる少年を

分類した項目がとても面白いので、ここに引用させて頂きます。

 

 ①グッド・グッド・ボーイ。根っからのいい子。

  よく勉強するし、いたずらはしないし、親のいうこともきく。

  大人になっても、並外れた成功はしないかもしれないが、

  きっと手堅い地位につくであろう子供。

  トウェインの小説でいえばシド・ソーヤー(トム・ソーヤーの弟)。

 ②グッド・バッド・ボーイ。勉強はしない、いたずらはする、

  親のいうこともきかない。

  でも案外親思いのところもあったりして、根はいい子。

  子供のうちはワルでも、大人になったらチャッカリ出世して、

  ライオンズ・クラブ゛か何かに入って「わしも昔は悪さをしたもんです、

  わっはっは」とか言いそうなタイプ。トム・ソーヤー。

 ③バッド・バッド・ボーイ。勉強はしない、いたずらはする、

  親のいうこともきかない、案外親思いなんかでもないし、

  大人になっても社会に適応できそうにない(というか、

  大人になれそうもない)子供。ハックルベリー・フィン。

 

ここで書かれている中で、最もワルのハックこそ一番の人気者。

でも良い子ちゃんの優等生だって引け目を感じ、嫉妬に苦しむ普通の人間です。

これら、小説の題材にしても面白くなさそうな優等生達を軸に描かれる

様々な人間模様。。そしてささやかな抵抗。これが実に見事なのです。

殊に『会計士』のラストに主人公アバ・ロスが起こしたささやかな・・・

でも思いがけない反復行為は・・・思わず「君も中々やるじゃん 

な~んて心の中で拍手してしまいました^^;

 

四篇中最も切ない気持ちにさせられたのは『傷心の街』かな~。

よく出来た息子の素晴らしい姿を眼前にしつつ、

あ~でもない、こ~でもないと一人葛藤する父親の心情が見事です。

そうそう。

この作家さんはかなりの野球狂なのだろうかと思うくらい

野球のシーンが登場します。

ここでも野球場で知り合った一人の女性を巡って展開される

父子の行動、会話がとても味わい深くて・・・切ないのです。

 

表題作『宮殿泥棒』がマイケル・ホフマン監督、ケビン・クライン主演、

『卒業の朝』という題名で映画化されてます。

この作品で登場する「ミスター・ジュリアス・シーザー」コンテストって

なんとなく昔流行した「クイズ世界一周」(だったかな?)を

彷彿とさせるようで、ちょっとワクワクします。

本当にここでローマ史の勉強を教わってような錯覚を覚える程にリアルですヨ~。

ここでの登場人物の中では出番が非常に少ないうえ、かなり損な

役回りにも拘わらず・・・マーティン・ブライズが妙に印象的でしたっけ。

 

長くもなく短くもない、中篇小説ならではの面白さ。

適度な緊張感が全編に張り詰めていて、特別大きな事件が無いのにも拘わらず

次々ページを捲らずにいられない。。

この作品は、特に優等生というレッテルを貼られて苦しんでる方には

是非味わって頂きたい逸品です

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
プラムさんへ (kju96)
2007-02-26 22:22:10
映画「卒業の朝」見ました。
昔を振り返る
ミスター・ジュリアス・シーザー・コンテスト
印象的でした。
やはりグッドバットボーイでしょうか。

機会があれば本も読んでみます。
プラムさんのお陰で本の知識は深まっております。
購入はするんですが・・・まだ読んでいません。
追っかけますので・・・沢山紹介してください。
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kju96さん (プラム)
2007-02-27 10:04:19
はは^^
ですよね~。大将はグッド・バッド・ボーイですよね~^^
坊ちゃんがグッド・グッド・ボーイに該当しそうですネ。
ちなみに私も限りなくグッド・グッドタイプなので・・・
いわゆる逆コンプレックスって奴に悩まされた時期もありました。
なので、この作品の主人公達の気持ち、とっても分かる・・・気がするのです。
なんか・・・地のままで良いのよねって改めて思ったりして。。
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無縁 (ミーシャ)
2007-02-27 12:08:25
プラムさん、kju96さん、こんにちは。
o(*^▽^*)oあはっ♪ 大将はグッド・バッド・ボーイですよ!
プラムさんは絶対グッド・グッドタイプ・・・あこがれちゃうわ^^
ちなみに、私は優等生根性で悩まされたことはありません(笑) 優等生なんて無縁だしー
(>_<)
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この場をかりて (kju96)
2007-02-28 03:46:19
ミーシャさんもグッド・グッドタイプ。
少しバットも入っていますね。
プラムさんもほんのちょっぴり入るでしょう。
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ミーシャさん (プラム)
2007-02-28 10:59:54
>優等生なんて無縁だしー

え~??うっそだ~。。

kju96さんもミーシャさんも程よいバッドが素敵ですワ
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kju96さん (プラム)
2007-02-28 11:01:02
うっ

オトナになって擦れちゃったかしら。。
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