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プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『真珠の耳飾りの少女』

2005-10-27 20:39:08 | 作家さ行
 トレイシー・シュヴァリエです。


かの有名な画家、フェルメールの作品をモチーフに描かれたこの作品は

本当に真珠のような美しさです。


ヒロイン・フリートは、まだ16歳の時にタイル職人であった父親の失明により

家計を助ける為、画家フェルメールの家に女中として住み込みで働く事になります。

フェルメール家は、このフリートの存在により、大きく揺れ動く事になるのです。


フェルメールの妻カタリーナはなぜかフリートに冷たく、

その影響もあってか長女コルネーリアは最初からフリートに敵意を抱いており、

事あるごとに辛くあたります。

でもこの家の実力者でカタリーナの母親のマーリア・ティンスの庇護の元

どうにか居場所を見出していきます。


そんなフリートの最も大事な仕事はフェルメールのアトリエの掃除です。

本物の芸術に出会った少女にとって、フェルメールは最初から特別な存在でした。

この名画の完成までの心の機微や、様々な出来事が繊細に美しく描かれていて

絵筆を握るフェルメールの息遣いまで聞こえてきそうな臨場感が漂っています。


フェルメールは、フリートの中に豊かな芸術性を見出していたのでしょう。

とても印象的な心に残るシーンが随所に散りばめられていてワクワクします。

 

「あの雲は何色だろう?」

「まあ、白でございます」

心持ち眉がもち上がる。「そうかね?」

もう一度ちらりと見た。「それから灰色でしょうか。雪になるかもしれません」

「いいかねフリートや。お前ならもう少し何とかなるはずだよ。

あの野菜を思い出してごらん」

「あの野菜でございますか?」

首を微かに振る素振り。またご気分を害してしまった。

顎のあたりに強張りを感じる。

「同じ白い野菜でも、別々にしてたじゃないか。

蕪と玉葱、あれは同じ白かね?」

突然、閃いた。

「いえ、ちがいます。蕪には緑が混じっていて、玉葱には黄色が」

「その通りだ。さあ、雲にはどんな色が見えるかね?」

 

     ―――――――――――――――――――

 

情景が整然としすぎていると気づいたのは、そのときだ。

わたしは何につけきちんとしているのが好きではあるけれど、

ほかの絵を見た経験から、机の上にはいくぶん乱れたところがあったほうが

よいと知っていた。そこで目が滞る。品物ひとつひとつに思いを寄せる。

宝石箱、青いテーブルクロス、真珠、インク壺。

そして何を変えるか決心した。音を立てないように、屋根裏部屋に戻る。

我ながら、自分の考えの大胆さに驚いていた。

 

この作品のタイトル「真珠の耳飾りの少女」は、

フェルメールの作品として実在していますが、この作品はもちろんフィクションです。

でもこの作品を読んでいると、まるで事実であるかのように錯覚してしまいます。

青と黄色のターバンを頭に巻き、「旦那様、着けていただけますでしょうか」

と言ってフェルメールに真珠の耳飾りを着けてもらうフリート。。

 

なんていうか・・・俗世間的な場所から離れたアトリエでの空間は

窓から射し込む光と印象的なブルーが全体を美しく彩り、

まるで別世界のようで、そこだけ浮世離れしている印象なので

下界とのコントラストがなんとも絶妙なのです。



主人と召使の結ばれぬ恋、なんていう陳腐な作品では断じて無く

優れた芸術家と美を解する一人の少女の美しい物語・・・といった風情で

読後感も前向きな印象の、とても素敵なお話しでした。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


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8 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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関東^^ (プラム)
2006-01-15 22:36:48
 ミーシャさん、こんばんは^^



ミーシャさんは千葉でしたか。

なんとなく東京かな~と思ってました。

私は横浜ですヨ。

ジュリアさん家と近いかも~。。

昨日は凄い暴風雨でしたが、本日は晴れて良かったです~。

・・・といっても午後には雲行きが怪しくなりましたけど。。



フェルメールの絵は光の効果が素晴らしいってよく言われてますね。

それと印象的な青!

この作品の表紙に、この作品のモデルになった絵が載ってますヨ。

実際にはどのようないきさつで、この作品を描いたのか分かりませんが

とても興味深いですね。



沢山本を読んでいる、というか多分好きな作品がちょっとマニアックなのだと思います。

最近の流行作家の作品なんてよく分かりませんもの
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窓のある絵 (ミーシャ)
2006-01-15 00:27:36
プラムさん、今日は一日雨でしたね。

プラムさんも関東ですか?

私は千葉県北西部、柏市です。



フェルメールの「真珠の首飾り」は

真珠の首飾りをつけて鏡に見入っている女性でしたよね。

身を飾るという虚栄のすぐ先にある虚しさを感じる作品でしたが、プラムさんが記事にした作品は知りませんでした。興味深く読ませていただきました。

アリガト♪



この絵と同じらしい部屋の片隅かしら?

「真珠を秤る女」という絵がありますね。

この絵にも窓が^^

窓のある絵が多いけど、好きです♪

窓の光に敏感なのはオランダの低地地方の画家に特有な現象と言われますね。



プラムさんはほんとにいろいろな本をたくさん読んでますね。すごいわァ~!
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フェルメール♪ (プラム)
2006-01-14 20:47:42
 豆猫さん、TBサンキュです~。



フェルメールはとても謎の多い画家ですね。

でもとても綺麗な絵を描く方ですよね~。

ルノアールを好む人は大抵好きじゃないかな。

な~んて自分がそうなだけだったりして・・・



豆猫さんのレヴューはとても味があって面白いです^^

美術に関しては全く、といって過言でないくらい分からないので

いつも勉強させて頂いてます~。

誰かのレヴューでは光の効果が素晴らしかったような事を

読んだ記憶がありますが

どちらにしてもフェルメールは絵になる方ですね
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こんばんは♪ (豆猫)
2006-01-14 00:59:35
プラムさん、こんばんは。トラバ成功していました

!こちらからもトラバさせてくださいませ。

映画のほうは、プラムさんの記事を読むと

どうやら原作本の雰囲気とはまた違ったものになった模様です



またまた・・・ちらっとだけ絵を知っている物の常で

つっこみたくなってしまったりして・・・

駄目ですね。



フェルメールの絵から想像する世界って

現実なんだけど不思議な異空間のよう。

だから召使と主人としての緊張感のある

”同士”という設定って面白いなぁって

プラムさんの記事読んで改めて思いました
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ひだまりさん♪ (プラム)
2005-11-24 12:42:53
 TB有難うございます。

いつの間にか読んでいたのですね。

そうそう。。

物悲しくて美しい作品。

まさしくフェルメール・・・って印象ですよね~。。
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読みました (ひだまり)
2005-11-22 17:42:15
こんにちは読みましたよ。

すごく綺麗でどこかもの悲しい作品でした。まさに、彼の絵のような感じでしょうか。。。

TBさせていただきました!!
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芸術家・・・ (プラム)
2005-10-29 11:22:55
 わたりとりさん、寝言なんてそんな。。

素晴らしいです~



特別な感性の持ち主って、見方が全く違うものですよね。

「エドウィン・マルハウス」でも子供の感性について書きましたが

視点が違うとこんなにも感動するものなの??

って驚嘆しきり。。



詩や小説を書く人の力。。

物事を鋭敏に捕らえて自分の中に取り入れて栄養分にしてしまう力・・・

一つの事柄からいくつもの展開を想像する空想力・・・

そしてそれを文章で表現する筆力・・・

あたりでしょうか。

でもこうやって書いてしまうとあまりにも陳腐な気がしますね
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ちょい寝言っぽいですが (わたりとり)
2005-10-29 01:34:39
絵描きの人の世界を「見る」力は、絵を描かない人のそれからは想像もつかないほど鋭敏で精緻だと読んだ事があります。

(たしか有名な絵本作家の話で・・・)



芸術家の鋭敏な感性は、同じ感性を持つ同士を探し、見つけ出すのかもしれませんね。



詩や小説を書く人の力は・・・

どこにあるのかな。どこに向かうのかな。

と、しばらく考えました

(今回はちょい真面目に)
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