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プラムの部屋♪

長い長い休暇中デス。(*_ _) ゴメンナサイ。

『ジェニィ』

2005-08-04 23:28:32 | 作家か行

 ポール・ギャリコです。



この作品は、猫好きで本好きなら、おそらく堪えられない作品ですね~。。

無類の猫好きとしても有名なポール・ギャリコの、

まさに掛け値なしに世界中の読者から愛されている作品、だと思います。



8歳の男の子、ピーターはある日突然白い猫になってしまいます。

今まで見慣れた景色、知っている人みなが、突然牙を剥き出し、

襲い掛かってくるかのような圧迫感の中、

必死で街を駆け回り逃げ惑う冒頭シーンから

一気に猫の世界に否応無く惹き込まれてしまうのです。



全身傷だらけでボロゾウキンのようなピーターを見つけ、

救い出してくれたのは雌猫ジェニィ。

ジェニィに総てを打ち明け、猫としてのあり方、掟等を細々教わるピーター。。

この辺の描写は、思わず猫のあらゆる仕草を思い出して微笑んでしまいます。

一番印象的なのは、なんといっても身づくろい。

「疑いが起きたら・・・身づくろいをすること。」ジェニィの教訓です。

ジェニィが住みかにしていた場所が人間に踏み込まれ、

追い出されてしまった事から

安住の地を求めて二匹の猫の世にも不思議な冒険物語が始まります。

船旅までしてしまうのですが、密航して見つかった時の為に

「ねずみを退治してるんだよ!」という意思表示を込めて

戦利品をずらっと並べて見せるところなんてとてもかわいい。。

要するに船賃代わりなのですね^^


ジェニィが海に落ちた時の事なんて、あり得ない事じゃないぞ、

なんて思えるくらいリアルでした。

特にぐったりと死んだようになっているジェニィを、

ピーターが一生懸命全身を身づくろいして・・・

要するに舐めてやって、介抱するシーンは素敵です。



飼い主に捨てられたと思い込み、人間不信だったジェニィが、

ピーターとの出会いを通し、再び人間を信じられるようになるくだり、

猫のホステルでのご挨拶、ジェニィを巡る最後の決闘等・・・何度も微笑み、涙し、

あ~猫もこんな事、考えながら生きてるのかな~なんて

しみじみ感慨に耽ってしまいます。



猫を主人公にした作品は世の中に数あれど・・・ここまで猫を愛し、見つめ、

一つ一つの仕草に意味を持たせた作品に、私は出会った事はありません。

・・・と、あえて断言しちゃいます^^



街の風景や自然の描写等も生き生きと眼前にするかのようなギャリコの世界。

是非堪能して頂きたいと思います~。。

 

素材提供:ゆんフリー写真素材集


『原告側弁護人』

2005-07-13 20:12:20 | 作家か行

 ジョン・グリシャムです。

 

グリシャムは一時期異常にはまり、当時発刊されていた作品はほとんど読破しました。

そもそも法廷物は検事と弁護士の丁々発止のやり取りが最高に面白くて

大好きなのです。

そしてなんてったってグリシャムは現役弁護士ですからネ。


で。。この作品。

メンフィスのロースクール卒業目前のルーディは、内定していた法律事務所の
 
合併騒ぎで採用取消にされ、就職活動するも不況で良い職が見つかりません。

借金まみれで自己破産、という崖っぷちの状況に立たされてしまうのです。

 

ところが転んでもただでは起きないルーディ^^
 
持ち前のバイタリティを発揮して、大学での法律業務実習で知り合った老婦人から

遺書書き換えの仕事を受け、部屋まで借りてしまいます。

 

そして更に、同じ実習時に知り合った老夫婦の以来を受け、
 
弁護士としての初仕事に挑みます。
 

ところがこの仕事。22歳の、白血病で死を待つばかりの息子を持つ老夫婦が、

保険会社が骨髄移植への保険金支払いを拒否した事に対する訴訟を起こしますが

相手は巨大な保険会社。。
 
常識で考えたら勝ち目は全くと言って良いほどありません。
 

このルーディの奮闘ぶりは本当に面白いです。

相棒(?)デックと共に陪審員選出の裏工作をするシーンなんて思いっきり笑えます。

原告側も被告側も正々堂々・・・んな訳ありません。

流石、ロースクールを出ただけあって、頭が良い同士の知恵比べ。。

壮絶なんです~^^必死なんです~^^うまいな~。。

 

個性豊かな脇役陣も興を添え・・・その人々に起こる一つ一つの出来事が
 
結構重いです。

特に白血病の青年、ダニー・レイの願いを聞き入れ、共に過ごした数時間は、

忘れがたいとても印象的なシーンでした。

日暮れ直後の公園で行われていたソフトボールの試合を二人で見物。

淡々とした描写ながら、なんとなく伝わる二人の心情。。
 
 
ダニー・レイとぼくは、ほとんどしゃべらなかった。
 
ぼくは屋台でポップコーンとソーダを買ってきてやった。
 
ダニー・レイは礼をいい、ここに連れてきたことでも
 
ぼくに重ねて感謝の意を述べた。
 
・・・とても美しいシーンです。

 

また、暴力夫の魔の手から幾度となく救い、

いつの間にかのっぴきならない関係にまで陥った

とても愛らしい若妻ケリーとの関係も最後まで目が離せません。

めまぐるしい展開の末、これは究極のサクセス・ストーリーか!?・・・と思いきや

ラストでかなり驚かされました。。
 

おそらく賛否両論・・・私は・・・ルーディらしいな~と思いましたヨ。
 
 
素材提供:ゆんフリー写真素材集

『ケリー・ギャングの真実の歴史』

2005-07-06 10:11:37 | 作家か行

ピーター・ケアリーです。


ブッカー賞は『オスカーとルシンダ』に次いで二度目の受賞なんですね~。。

この作品は、作者が20歳の時にネッド・ケリーが書き残した手紙を読み、

ネッドの「声なき声」に、いつか声を与えたい、

と熱願してきた思いの集大成なのです。


19世紀のオーストラリアで生まれたアイルランド移民の子、ネッド・ケリーは、

獄中の父親に代わり、母と6人の姉弟妹を支えて懸命に働きます。

ところが愛する家族の為にと子牛を盗んだ事がきっかけで、

一度出所した父親を再び獄中に追いやる羽目に陥り、一家は更に極貧に・・・。

父親の死後、母親はネッドを山賊ハリー・パワーに託してしまうのです。

そして馬泥棒の共犯容疑でわずか15歳の時に逮捕されます。


当時のオーストラリアの移民たちの生活がいかに虐げられた悲惨なものだったか、

警察や裁判所がいかに権力という嵩を着て、大勢の罪無き人々を苦しめてきたか、

読んでいて、あまりの理不尽さにしばしば憤り、涙せずにいられませんでした。

ネッド・ケリーが、殺人を犯し、泥棒をし、仲間と共に大犯罪者として

歴史に名を残すほどになってしまった理由がとてもよく分かります。


ネッドの手紙を元に書かれたこの作品は、

ほとんどがネッド自身の言葉で語られています。

まともな教育を受ける事が出来なかった彼が娘にあてて書いた手紙。。

その時その時の心情が切々と綴られていて、

稚拙な表現や文章もそのままに翻訳され、

物凄い臨場感で・・・ホント、切なかったです。


大事な娘を警察におもちゃにされ、怒り狂った母親を必死でなだめるネッド。。

このシーンはも~言葉に出来ないくらい悔しかったな。


 拳銃を手に、警官を今にも撃とうとしている母親を前に

 はなせよ。母ちゃん。―――用心してくれよとおれはいった。―――

 でないとおれもあのヤナギの下に埋められることになる。

 とたんに母ちゃんの口もとがゆるみものすごいひめいをあげて

 髪の毛をかきむしりはじめた。

 ―――娘よ。おまえはあんな悲しそうな声を聞いたことはないだろうな。――


また、卑怯な警官ばかりが目立つ中、妻子ある警察官ケネディを、

相手が降参している事に気付かず撃ってしまい、

妻に宛てた最後の手紙を書き終えたケネディに


 「わかってもらえないだろうが本当に申しわけないと思っている。

あんたは勇敢な人だ。」

と呼びかけるシーンもまたなんとも切なく。。


生涯の親友ジョーが、恋人や友達と別れてどこまでも

ネッドについていく様々なエピソード等

言葉に尽くせないくらいの切ないシーンの連続で・・・

物凄い残虐なシーンも数多くあります。


あ~それなのに・・・不思議と心がふわっと包まれてしまうような

暖かさも感じられる、なんとも不思議な読後感。

まだ見ぬ娘への、この上もない優しい思慕に包まれた父親の手紙・・・

だからなのでしょう。。

これはも~是非多くの人に読んで頂きたい名作です。

 

素材提供:Pari’s Wind