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子どもの本の会

子どもたちにはありったけのお話をきかせよう。やがて、どんな運命もドッヂボールのように受け止められるように。(茨木のり子)

『雪のかえりみち』と『そのつもり』

2011年03月02日 | 日記
『そのつもり』(荒井良二:作)

風がソヨソヨふていている森がありました。

森のなまえは、"そのつ森"。

森にある空き地の有効利用をめぐって、動物たちの会議が延々と開かれていました。

「ぜひ穴を掘って、温泉にしましょうよ」とサル。

「いいねぇ、それ」といって、動物たちは、そのつもりになりました。

そんな感じで、皆の提案することに、いちいち、

「いいねぇ、それ」と目をつむって、それぞれが想像して、そのつもりになるだけで、何も決まりません。

何年も何年も決まりません。

そのうち、牛がやってきて…。



ほのぼのとさせられる1冊。いろいろと想像をめぐらす動物たちの様子がおかし楽しいです。







『雪のかえりみち』(藤原 一枝:著/はた こうしろう:絵)

主人公は1年生の男の子。

3時間目に雪が降ってきて、大雪になりそうだからと、早めの下校となりました。

ほとんどの親が学校に、迎えに来てくれましたが、ぼくのお母さんは仕事しているので、一人でバスに乗って帰ることに。

雪が降りしきる中、心細い状態でバス停でバスを待っていると、見かねた大人が声をかけてくれたり、バスに乗り込むと、手袋を差し出してくれるおばさんがいたり。

ようやく家に着くと、なんと、4年生のお兄ちゃんは、ちゃっかりタクシーで帰っていました(笑)

でも、弟想いのお兄ちゃん、ずぶ濡れの弟の世話をきちんとしてくれました。

やがて、お母さんも帰宅。今日の出来事をおしゃべり。

そして、雪遊び…。






月曜日はちょうど雨がミゾレ混じりの雪に変わり、タイムリーなお話でした。集まってくれた子ども達のほとんどが1年生で、バス通学している子も多いためか、等身大のお話に、じっと聞き入ってくれました。

自分一人で無事家に帰れたという小さい子の達成感と、世の中悪いひとばかりじゃないよ、大人やお兄ちゃんがちゃんと君のこと見守ってくれてるよ、という優しいメッセージが伝わってくる、温かい作品。


このお話に出てくる兄弟のお話かどうかはわかりませんが、同じ藤原一枝さんとはたこうしろうさんコンビの絵本で、

『まほうの夏』

というのがあります。こちらもおすすめ。

東京に暮らす兄弟の夏休みのおはなし。

両親が共働きのため、この兄弟の夏休みときたら、学校のプールとゲームと麦茶、ポテトチップスの毎日。

すっかり退屈していた二人に、いなかのおじさんから「遊びに来い!」とはがきが来ます。
2人は東京を脱出してお母さんのいなかへ。

いなかの子と一緒に、むしとり、川遊び。海水浴に釣り。

食事は、とれたての野菜、新鮮な魚、となりの豆腐屋さんが作った豆腐。

美味しくて、美味しくて、二人の食欲旺盛に。

最後は、真っ黒に日焼けしたいなかの子になって帰京。



『雪のかえりみち』も『まほうの夏』も、子ども達を巡る、いまどきの家庭事情というものが垣間見えて、そちらもまた、ちょっと考えさせられたりして…。