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子どもの本の会

子どもたちにはありったけのお話をきかせよう。やがて、どんな運命もドッヂボールのように受け止められるように。(茨木のり子)

『卒業ホームラン 自選短編集・男子編』重松清

2013年02月13日 | 日記
重松氏の文章は,大変読みやすく,男子編とあったので,息子にどうかと買ったもの。
しかし,どの作品も,これは,大人に特に親に読んでもらいたい。

タイトルにもなっている「卒業ホームラン」。
息子の入っている少年野球チームの監督でもあるお父さんが,今季全勝がかかっている小学校生活最後の試合で,指導者として「勝負」をとるか,親心から最後くらいは…と,息子をベンチ入りさせるかどうするか,悩める姿が上手く描かれています。

加えて,今どきのスポーツ少年団の抱える悩みも。
つまり,保護者の対応。

「なぜ,うちの子が途中で降板させられたんですか?」
「どうして,うちはいつも補欠なんですか?」
「今日は,祖父母も応援に来てるので,ひとつ,よろしく!」

などなど。大変だ~。
いったい,誰のための,何のためのスポーツなんでしょうね。ふふふ

結局,大差で負けてしまった試合。
監督としても最後の試合。
試合そのものより何よりも,周り保護者にも気を使ったりして…へとへと。
最後の試合もベンチにすら入れなかった息子の,最後の一言に救われます。

上手か下手か,勝ったか負けたか…それよりも何よりも,野球をする理由は,

「だって,野球が好きだから!」

でいいのではないでしょうかね?

収録されている作品は,

1 エビスくん
2 卒業ホームラン
3 さかあがりの神様
4 フイッチのイッチ
5 サマーキャンプへようこそ
6 また次の春へ-トン汁-

の6作品。

どの作品も,重松ワールド全開。
多感な小学校高学年の少年・少女,また,そういう子を持つ父親が主人公。
親友とは?父親とは?家族とは?
涙なくしては読めないものも…

個人的には,「卒業ホームラン」に次いで,「サマーキャンプへようこそ」が好きです。
我が家も,アウトドアなんて無縁だった夫を,「子どもはやっぱり自然の中で遊ばせるべきよ!」なんて,無理やりアウトドア父さんに仕立てあげた経緯があり…,身につまされます。

子どもはよく大人を見抜いているものですね。

重松氏が3.11震災直後,自身の愛着深い作品を集めたもの。女子編『まゆみのマーチ』と共に印税のすべてが,将来にわたって,あしなが育英会に寄付されます。