凧師のひとり言

江戸角凧に魅せられて40数年。東京生まれ!江戸っ子? 実は三代続いていないので「東京っ子」かな? 千葉県九十九里に在住。

ナイロン生地に達磨を描く

2012年08月16日 | 凧の制作

蜘蛛の巣にかかった 昨日の 『ギンヤンマ』

元気だ。

昨夜は アジサイの葉にやっとつかまっていたのに

 

上の方の葉に しっかり つかまっている。

触ると 羽を震わし、足を動かす。

 

だいじょうぶか???

頑張れ!

元気になって 飛んで行け!!!

 

 

さて、今年の2月にオファーがあって、アメリカの大きな凧揚げ大会に招待されている。

アメリカはワシントン州の大会。

"The Washington State International Kite Festival in Long Beach” 

通称 "WSIKF"。

毎年8月に一週刊開催される大会だ。

一週間、毎日凧揚げ三昧。

まだ先だと思っていたが、あっという間に出発日が近づいてきた。

以前より アメリカ人に頼まれていた凧絵を描いて持参しなければならない。

凧は 3mの六角凧

リップストップナイロンでアメリカ人が縫ったもの。

リップストップナイロンはパラシュートなどに使われる強いナイロン生地だ。

絵を描くにはコーティングしていない生地を使う。

以前にもリップに描いたことがあるが、その時はアクリル絵の具を使った。

アクリル絵の具はいろいろ問題もあって、気に入っていない。

ナイロンに描ける絵の具を以前から探しているが、なかなか気に入ったものが無い。

 

以前、知人から聞いて取り寄せた “樹脂顔料” を使って描くことにした。

 

今月の初め、下書きからやり始めた。

大きさが 縦3m なので、下書きの紙も大きい。

模造紙を9枚貼り合わせて、縦3.3m × 横2.4m を作って

凧の原寸を測る事からスタート。

原寸が出来上がったら、鉛筆で絵を描く。

 

アメリカ人 二人に頼まれた。

一枚は達磨を黒の濃淡で、

もう一枚は色を入れて、描いて欲しいと言われている。

同じ絵を二枚描く。

下絵に墨を入れてみる。

 

 

 

 

まずは 墨絵の達磨から。

本番には “樹脂顔料” の黒を使う。

一度試したことがあるので、要領は ほぼわかっている。

さっそく 墨線から始めたが・・・

描くことに集中していて、この間の写真を撮り忘れてしまった。

気が付いたら・・・こんなところまで・・・

墨を使って和紙に描いても同じだが、

黒の濃淡で描く絵は黒の濃さが大事。

濃すぎると真っ黒になってしまう。

問題はナイロン生地だ。

和紙と違い、厚みが無い。

和紙ならば 一回の墨で、紙の厚みも手伝って、真っ黒に仕上がる。

ナイロンは薄いため、黒も透けてしまい、

グレーになってしまう。

 

描きあがって、これで良し と思っても、

日にかざすと、全体的に薄く、グレーの凧になってしまう。

以前、アクリルカラーで経験済みだ。

 

そんな訳で、髭の薄墨をもう一度 塗り重ねて もっと濃くする。

こうして 光を通さずに見ていると、真っ黒のようだが、

ちゃんと計算の上です。

一度、外へ持って行き、光を通して見たところ、

まだ、墨線が弱い。

そこで、もっと濃く解いた黒の絵の具を使って、上に塗り重ねる。

墨線の勢いが欲しいので、なぞる事はしないのが普通だが、

墨線の薄い凧は、絵がぼやけていけない。

前の線より太く、勢いをつけて描き直す。

 

細かった線は、もっと、もっと太く。

このくらいの太さで、良いだろうと、外で広げてみると、たいていは細いのだ。

凧の線は太い方が迫力を増す。

あと一息!

最後のグレーを塗って仕上げる。

仮に組んで、外で見てみる。

まだ、線が細い部分がある。

気に入らないので、もう一度上から描く予定。 

 

 

もう一枚は色で、仕上げる。

黒の線を入れる。

墨達磨の経験を生かして、今度は、もっと太い線で・・・

 

墨線が乾いたら、薄い黒で、髭を仕上げる。

鬚は刷毛を使うと、細かすぎるため、筆の線で描いた。

何と言っても、凧が大きいので・・・

 

黄色を塗り、オレンジでぼかす。

顔の色を塗って、茶色でぼかす。

いずれも 濃い目の絵の具を使用。

光を通すと薄くなるからだ。

グレーの汚れのようなものは、下に敷いてある布の汚れが透けて見えている。

 

 

目の青を入れ、

ピンクを塗る。

 

あとは、バックの紫と、

最後の 赤。

 

すべて塗り終わって・・・

仮組して外で、見てみる。

紫色が、思ったように出て無い・・・!

その他の色の具合は、良さそう。

墨絵の達磨も仕上げた。

 

もう少し乾く時間が欲しいので、

現在、二枚とも仕事場のロープに

洗濯物のように掛けられて、

アメリカ行きを待っているところだ。

リップストップナイロンに描くのは、勝手が違って、やりにくい。

 

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