またまた外交・安保の問題を取り上げるが、この分野では、民主党のこの二年半の滅茶苦茶な外交によって目も当てられないほどの惨状を呈しており、そのため次から次へと緊急事態が続いているので、どうにも止むを得ないことである。当分は、外交・安保中心の議論にならざるを得ないだろう。しかしながら、この議論は意外な側面も持っている。いま、国内問題としては、消費税、TPP、財政再建、国会議員定数是正、年金、景気浮揚策、そしてもちろん震災対応、原子力政策などが焦眉の課題になっているが、外交・安保の戦略を考えていくと、国内問題がどういう方向で解決されるべきかは自ずと決まってくるのである。つまり、国内問題といえども、国際情勢、外交・安保問題を切り離しては論じられないということなのである。
さて、今年の2月7日の北方領土の日はなんとか形がついた日だった。というのも、鳩山、菅と続いた、思いつきだけの反日的なデタラメ外交で、メドベージェフ大統領の北方領土視察を許し、ロシアによる実効支配を強めさせ、領土返還の実現を著しく遠のかせたのではあるが、野田政権になって、ようやく体勢を立て直す気配が見えたような気がするからである。報道によれば、「北方領土の日」の7日、「北方領土返還要求全国大会」が都内で開かれ、野田佳彦首相は挨拶で「北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、強い意志でロシアとの交渉を粘り強く進めていく」との決意を表明した。首相はまた、来賓の大島理森自民党副総裁に、「全ての政党と連立を組むつもりで、超党派で問題解決に全力を尽くす」と協力を求めた。 野田首相は大会開始から終了までの90分間参加し、領土問題に取り組む意欲を示した。同席した新党大地・真民主代表の鈴木宗男元衆院議員は挨拶で「歴代首相は挨拶をしたらすぐ帰った。野田首相は(挨拶した後も)座っている」と首相の姿勢を評価した。確かに、ここ数代の首相は、形ばかりの出席であったので、これは喜ばしいことではある。そこで、このブログで何が言いたいかと言えば、まずは、この二年半の間で失ったものはあまりにも大きく、我々は二度とこのような愚行を繰り返さぬことを決意する必要があるということ。そしてこの二年半の間で明らかになったことは、これまでの日本の北方領土返還交渉戦略は、内外の情勢の激変に伴い、その少なからぬ部分が破綻してしまったということである。このままでは、北方領土の返還は望むべくもなく、それゆえ、この機会を契機として、取り組みの抜本的見直し、取り組み体制の再構築が必要になるということである。
[1]_<またしても敗北の「日露外相会談! 政治の取り繕いのためだけのの無意味かつ不利益な会談はもうするな!>
先月28日の日ロ外相会談は、政治関係者そしてマスコミにも概ね好意的に受け止められているように見える。「最大の懸案である北方領土問題に関しては、棚上げせず、両国間のこれまでの文書や「法と正義」の原則に基づいて議論を進めていくことで一致したという。」(1月29日読売)。もし、この会談で、一連のロシアからの日本の主権侵害に対する日本の断固たる抗議が行われていたなら、そして「静かな議論」を今のような形で受け入れていなければ、それなりに意味がある会談になっていただろう。しかし現実はそうではなかった。
今回の会談は、外交としては、完全敗北と言わざるを得ないだろう。そもそもなぜこのような中身のない、しかも敗北のための会談をこの時期にやる必要があったのかも疑問と言わざるを得ない。なぜなら、一連のロシアの暴挙に対して、日本はこれまでも、そしてこの会談でもなんらの公的抗議もしなかったからである。抗議を避けて、当たり障りのない言葉で友好ムードを演出したのだから、日本はロシアの一連の暴挙を許した、その正当性を認めた(認めさせられた)ことに等しいからである。
ここ数年の日本政治の混乱と、日米同盟の弱体化の隙をついて、実質的な対日戦勝記念日の制定、メドベージェフ大統領の北方領土視察・訪問、軍事基地の建設、中国、韓国資本の呼び込みなど、数々の日本の主権侵害、実行支配の強化がなされたにも関わらず、これまで日本からロシアに向けての断固とした公式の抗議、世界に向けての公式のメッセージは発されていない。菅首相のように、暴挙がなされたときには沈黙し、直接抗議できる場(APEC)でも抗議せず、あとになって国内の集会(昨年の2月7日)で突如として「暴挙だ」と「負け犬の遠吠え」をしたり、前原政調会長のように威勢よく「不法占拠だ」と叫んでみたものの、ロシアから激しい個人攻撃、つまり分断攻撃に晒され、政府の団結した援護もない状態で急にトーンダウンしてしまった例もある。要は、日本としての毅然たる抗議は一度もなされていないのである(下記参考記事_1参照)。本来であれば、日本の激しい反発、対ロシアへの対抗措置、国際世論からの批判などによって、ロシアはそれなりの高い代償を支払わざるを得ない立場であったし、また、それを覚悟していたはずでもあったろう。一連の不法行為を成功裏になしととげたロシアにとって最後の仕上げは、この問題でくすぶる火を消し、何もなかったことにすることであった。そこでロシアは、静かな環境がないと、領土交渉は継続できないという牽制、脅しをかけ、「静かな環境」をキーワードにして、日本の怒りの沈静化を試みたのである。そして、「交渉の継続」というなんの中身もない言葉を持ち出すことによって、さも譲歩した装いを作ったのである。すでに取る者は十分に得ているから、あとはこの「食い逃げ」の火消しに務めたわけである。
ところが、彼らの懸念に反して、日本は今回もなんらの怒りの表明をすることなく、「静かな環境」の仕掛けに飛びつき、ロシアは何の苦労もなく、また代償も支払うことなく日本の怒りを鎮めることに成功したのである。それどころか、日本側から将来にわたる「静かな環境」という日本の抗議の封印とも読める言葉まで得たのであり、しかも日本に喜んでもらったというおまけまでついたのである。パブロフ外相は大成果を上げて凱旋したわけである。
片や日本側は、一昨年あれほどのデタラメをされたにも関わらず、「静かな環境」がないと、領土交渉は継続できないという脅しに簡単に屈して、「交渉の継続」の言葉を得て、安堵の胸をなで下ろしたらしい。しかし交渉は当然のことだから、成果でもなんでもない。北方領土問題の本質は「不法占拠」にあるわけだから、わが国が卑屈になって、ロシアの寛大さ、慈悲を乞うような性格のものではないにも関わらず、またしても政府、民主党は、慈悲を乞う外交を行ったのである。一体何のための会談であったのか。
たとえば、1月29日読売社説では次のように問題点を指摘している。「ただ、ラブロフ氏は最近、北方領土問題について、「第2次大戦の結果、法的根拠に基づきロシア領となった」と述べている。歴史的事実を一方的に否定するかのような態度は問題である。ロシア側は今後、大統領選を控えて、対外的には強硬な姿勢を崩すまい。日本政府はロシアの政権交代後の外交方針を十分見極めて、対露戦略を練り直す必要がある。領土問題の打開に、腰を据えて取り組まねばならない。
ラブロフ氏は、記者会見で北方領土での「共同経済活動」に言及し、漁業、水産加工、農業など日本との合同プロジェクトを歓迎する意向を表明した。だが、ロシアの国内法に基づく経済活動を前提としている。これでは、北方領土は日本固有の領土だという、日本の立場が損なわれることになる。」
8日産経社説でも次のように指摘している。「玄葉光一郎外相は先月28日の日露外相会談で、ラブロフ露外相と「静かな議論を続ける約束」をしたと述べ、「世論が割れないことが何より重要だ」と強調した。しかし、双方が対立する問題で「静かな議論」とは「決着の先送り」にほかなるまい。北方領土の共同経済開発では、日本は主権を侵害されない条件下で認めようとしているが、ロシア側は日本に配慮すると言いつつ自国の法制を適用する構えだ。これでは、不法占拠の正当化になりかねない。」
結局のところ、パブロフ外相は、最後の最後まで「北方領土はロシアのものである」ことをしっかり主張して帰ったのである。してみると、「交渉の継続」とは、ロシアは北方領土の主権がロシアにあることを日本に説明するために、日本と協議をすることはやぶさかではないということだから、これは成果でもなんでもなく、むしろ後退である。こんなことを確認するために、わざわざ会談を開いて、あまつさえ、これまでの暴挙を免罪してしまったのだから、完全な敗北と言うしかないだろう。これに対してある人たちは言うかもしれない。「そんなことを言っていたら、ロシアは怒って交渉のテーブルにつかず、それゆえ領土問題を解決する可能性すらなくしてしまうだろう」と。しかし、これは、正論のようにみえて実は大きな誤り、ないしは表面を取り繕う欺瞞だ。以下に述べるように、ただ交渉のテーブルにつくだけでは、そしてロシアの機嫌取りだけを進めるという交渉では、領土は永遠に、絶対に帰ってこないのである。ロシアの不当性、不法性を主張して、問題の本質がどこにあるかを明確にしていくことこそが、返還への道を開くのである。それでもし会談や、交渉が一時的に行き詰ることがあるにしても、正道に沿って断固とした態度を取っていけば、必ず道は開けるだろう。
[2]_<伝統的な慈悲を乞う外交は破綻した!! すべては占拠の「不当性」を主張することから始まる>
日本のこれまでの領土返還交渉は、武力選挙の不当性の追及を極度に抑制すると同時に、対ロ融和政策を進め、それに経済協力というテコでもって、事態の打開を計るというものであった。しかしこの路線の妥当性はすでに破綻している。というのは、この路線が友好であるのは、ロシアがかつてのソ連時代のように貧しい国であること、新生ロシアが民主的な国であること、日本に十分な財力があること、日本以外に極東地域においてロシアに協力できる技術、能力を持つ国がないことなどをその前提としているが、現在これらはいずれも成り立たなくなっている。中でも特に重要な変化は、日本の財政事情が極度に悪化し、ロシアを助けるどころか、経済活性化のためのテコをロシアに依存しようというところまで追い詰められようとしていることである。「金の切れ目は縁の切れ目」なので、もはやロシアは日本の要求に耳を貸さないばかりか、さまざまなプロジエクトをちらつかせて、日本を操ろうとしてさえいる。もう一つの変化はロシアは、ペレストロイカの時代のそれではなく、古いロシア、ソ連に回帰しようとしていることである。下記参考記事_2でも指摘されているように、「一般的にいって、「プーチノクラシー」は、ゴルバチョフ主義やエリツィン主義へのアンチテーゼである。プーチン氏の対日戦略もその意味で例外ではない。」ということである。大国主義、覇権国家に回帰しようとしているロシアが、いま狙っているのは、占領を恒久化し、正当化することだから、「静かな環境」下での「友好的話し合い」くらいのことで北方四島を返還するはずはないのである。このことについては、下記参考記事_2に、詳しくそして有益な分析がなされているのでぜひとも参照願いたい
8日づけの産経社説は次のように指摘している。
「一部の専門家や政治家は、プーチン露首相が来月4日の大統領選で返り咲けば、問題が前進するとみる。だが、プーチン氏は北方領土が「第二次大戦の結果、ソ連・ロシア領となった」と断言し、その意を受けたメドベージェフ大統領らは北方領土の恒久支配化を進めてきた。大統領復帰後に対日譲歩が得られる根拠は何もない。甘い幻想の下に問題を先送りする融和的外交では、同じ過ちを繰り返すだけだ。」
[3]_<戦略の転換が必要! 我々は「スターリン主義」の犠牲者なのだ! ロシアそして世界に「不法」と言えてこそ、可能性も開ける>
それでは、今後どうしていけばよいのか。この問いに十分な答はないが、必要条件はある。少なくとも次のことだけは言える。これまでのやり方に決定的に欠けていたものは、正論、筋論を中心に据えた外交を展開するということであった。これなしに、いくら融和政策を続けても、なんの効果もない。今までのやり方は、十分でないのみならず、必要条件すら満たしておらず、ただ日本の経済力があったという状況頼みのものでしかなかった。ましてその頼みの綱の日本の経済力が弱体化した今では、占拠の「不法性」を主張していくことは、絶対に必要な条件となるのである。
次のことを考えてみよう。ロシアの占拠が「不法」と言われないのであれば、ロシアには、北方四島を日本に返す理由がないことになってしまう。いくら、日本がロシアに友好的な国になる努力をして、たとえそれに成功したとしても、理由もなく自国の領土を日本に返すはずがないだろう。またたとえ誰であれ、そんなことをする大統領をロシア国民は許さないだろう。現在の占拠が「不法」であることをロシア国民、世界が、そして何よりも日本国民が理解していてこそ、返還の可能性が開けるのである。
これまでの日本政府の言い分は、「占拠が「不法」であることは言わずとも、お互いによく理解していることである。そんなことを言って、友好ムードを壊せば、領土交渉は台無しになって、帰るものも帰らなくなる」と言うものであったろう。しかし、これは全く事実に合っていないことがすでに証明されている。ロシア政府の要人は、北方領土の占領は「合法」であり「当然のことだ、不法などとはとんでもない」と言っている。もし占拠が不法だと思っているとすれば、メドベージェフ大統領が、北方領土視察など出来るはずがないのである。彼らは「不法」であることを覆い隠し、それを「合法」なものに摩り替え、その「事実化」をねらっている。この不当な行為は公に堂々とやられているわけだから、もしこれに日本が反論しないとすれば、第三者的、客観的には、日本は抗議する根拠、領土奪還の意志を持たないということになってしまう。下手をするとこの占拠は「合法」であり、不当な主張をしているのは日本だということにすらなりかねないのである。ロシア国民、世界がそう思うだけでなく、そのうちに、日本国民ですらそう思う人間が出てくるだろう
。
この「不法」を「合法」に書き換えるプロセスがどんどん進行している。言うべきことを言わなかったツケが今ごろ噴出してきているのである。しかし、今からでも遅くはない。日本国民が団結して、ロシアによる北方四島占拠は「不法・不当」であることを、そして日本は「スターリン主義の犠牲者」であって、我々は「スターリン主義の残滓」の一掃を求めていることを、ロシア政府、ロシア国民、世界に知らしめなければならない。この最も基本的で重要な行動を抜きにして、領土返還交渉など成り立つはずもないのである。
以下、産経社説の引用_「日本にいま必要なのは、法と正義の下に四島返還の主張を国民と政府が団結して貫いていくことである。そのためには首相自ら「北方領土問題の解決こそ地域の安定と発展につながる」と世界に根気強く発信していくことだ。今年はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が初めてロシアのウラジオストクで開かれる。5月には主要国首脳会議(G8)もある。 北方領土問題を世界に訴える好機だ。国を挙げて生かしたい。」
言うまでもないことではあるが、だからと言って、ロシアと良好な関係を築くことが重要でないということではない。これは引き続き重要である。こういう関係は、領土返還を促進するだろう。これは結構なことではあるが、ただ次のことはしっかり押さえられなければならない。
それは、北方四島の占拠が不法であることは、最優先で主張されるべきことであり、これは絶対的な前提なのである。つまりこの前提は、経済協力などよりもはるかに重要な要素であるということである。もし、良好な関係が、あるいは経済協力がなければ奪われた領土は帰ってこないというのであれば、貧しい国、権利の主張を行って対立を厭わない国は永久に奪われた領土を回復できないことになるが、これは歴史的事実に反する。その例は身近にもあふれている。それゆえ、正論、筋論をおろそかにして、友好だけを先行させてロシアに擦り寄るというような行動は取るべきでないということである。日本からすれば、「これだけ経済面で協力したのだから、そろそろ、こちらの願いである北方領土を返して欲しい」ということだろうが、これはとんでもない的外れな認識に立った考えである。と言うのは、これをロシア側から見れば、「日本は、北方領土などに関心を向けることも出来ないほど、困窮してプロジエクトを求めた。ロシアは、それに答えてプロジェクトを与えたのだから、それでギブ・アンド・テイクは完結している。日本は、このロシアの配慮に感謝すべきである」ということにしかならない。原則をおろそかにしたままでの経済協力は、「北方領土を返さなくてもよいから、その代わりにプロジェクトをくれ」と要求している」と映ることになる。現に下記参考記事_3にはそのような見方が紹介されている。つまり、筋論を欠いたままで経済協力を言えば言うほど、領土返還は遠のくというのが、現在の日本が置かれている状況なのである。約20年前から、世界は激変しているのであり、この変化に対応した戦略は、何はさておき、基本に返ることなのである。
もう一つ重要なことは、それはなんといっても、日米同盟の再構築、強化をはかることである。このロシアの暴挙を許したのも、鳩山政権が日米同盟をガタガタにしたからであり、菅政権が、日本の国家機構を統治できていないこと、それゆえ日米同盟の修復が出来ないことを見透かされてのことだったわけだからである。日米関係の問題は、重要すぎるゆえに、別途、これから取り上げていくつもりである。
[4]_<日本は再生しなければならない、古いものの一掃を!!>
現在の状況を踏まえた団結が求められているにも関わらず、国内では、相も変わらず40年ぐらい前の意識で政治をやっている人たちがいる。こういう人たちには、一日も早く退場願わなければならない。その一つが次のような‘とんでも’問題である。8日付けの産経によれば「民主党は7日、計11人いる党最高顧問・副代表に特定分野の政策を担当させる方針を固めた。最高顧問の鳩山由紀夫元首相は外交、菅直人前首相は新エネルギー政策を担当し、幹事長室に提言する。輿石東幹事長が発案し、両氏も了承した。ただ、首相時代に鳩山氏は普天間飛行場移設問題で、菅氏は東京電力福島第1原子力発電所事故に絡むエネルギー問題で迷走した経緯があるだけに「ミスキャスト」との声も出そうだ。」とある。鳩山氏は、日本の外交・安保の基軸である日米安保を、普天間問題でガタガタに壊し、のみならずロシアや中国、韓国に擦り寄って、これらの国からの対日主権侵害を加速させた人物である。また、菅氏は、これらの国にからむ日本の主権侵害になんらの友好な手立てを打てなかったばかりか、国内法を曲げて、中国の不当行為を許容し、韓国には、一方的に彼らの要求する資料を返還し、理由もなく韓国に謝罪したりして、日本の国益を著しく損ねた人物である。あまつさえ、原発事故に適切に対処できず、日本の原子力技術の国際的地位の低下に邁進した人物である。この二人が、「史上最低の首相」、「史上最悪の首相」と呼ばれるのも当然のことである。こういう国益を損なう政策しかできない人たちを、政策顧問にするとは!!、開いた口がふさがらない。一体全体、輿石氏、民主党、野田首相は何を考えているのか。そもそも、輿石人事は、一川、山岡、田中人事で、その政治音痴ぶりが証明されているのに、これをまた繰り返すのか。輿石人事は、単に「親分・子分、兄弟関係」しか考慮しない人事であって、政治、政策、外交・安保などには全く無縁のものである。この「御三方」には、そしてもちろん「天下・国家のため」と唱えながら、個人的趣味で政局ゲーム、マネーゲームに熱中している小沢氏にも、一日も早く政治から退去してもらいたい。この四人は、毛沢東時代に、中国を私物化した「四人組」にも匹敵する日本をダメにする民主党の「四人組」なのである。
次に、日本人は、古い意識、古い呪縛から解放される必要があることである。それは、戦争への贖罪意識である。戦後からここに至る約60年もの間、我々は我々なりに努力した。さまざまな毀誉褒貶を伴いつつ、中国、韓国は言うに及ばず、アジアの国々、そして世界に、資金と技術、人材の支援をしてきた。国連にも、少なくとも資金面ではアメリカに次ぐ貢献をしてきた。ところがこうしたことが一つの要因にもなって、日本の力は国が成り立たなくなる手前まで衰退してしまった。もう贖罪は済んだのであり、我々はこの意識から解放されてしかるべきだろう。
日本は、これからも国際貢献はするにしても、これまで封印していた自分たちの身を守るということを、どの国もがやっている当然のことをしてもよい時期だろう。それは、国民が、日本の利益を守るために団結することである。そして、戦後一貫して続いた、自虐的な反日の学校教育をやめることである。国民は、正しい歴史、国家観を取り戻す権利がある。ゆがんだ、自己被虐的な日教組の教育を捨て去り、真に主体的で、民主主義国の一員として国際社会に貢献できる理念を育てる新たな教育を作ろう。国民全体が、新たな日本の再生に向けて一致団結する必要がある。領土問題は、北方領土だけではなく、竹島、尖閣、ガス田、日本海呼称などの問題もある。これらを十把一からげに論じることは出来ないが、いずれにしても、国を挙げて取り組むべき課題であることは確かである。こうした国民の団結が、北方領土問題の解決にも力を与えるだろう。以下の日を、名実ともに国を挙げて、領土主権を守るための決起日としようではないか。
竹島の日 2月22日
尖閣諸島(開拓)の日 1月14日
そして、北方領土の日 2月7日
参考記事_1
<民主党は、思いつき外交、及び腰外交をやめ、国の利益に沿った戦略的外交を展開せよ>
_1月27日 産経 電子版_
【民主党政権「不法占拠」封印の及び腰】
ロシアのラブロフ外相が28日に来日し、玄葉光一郎外相と会談する。北方領土問題も話し合われるが進展は望めそうもない。民主党政権の歴代外相は北方領土について「不法占拠」という表現を避けるなど配慮を重ねてきた。だが、融和政策は何の効果も生まず、かえってロシア側からくみしやすしと足元を見られる始末だ。
外務省のホームページは「ロシアによる不法占拠が続いている」と明記しており、不法占拠は日本政府の公式見解だ。ところが、民主党政権はなぜかこの言葉を使いたがらない。
「(ロシアによる)北方四島の占拠は国際法上、根拠のないものだ」
玄葉氏は25日の記者会見でこう語ったが、「不法占拠」とはやはり言わなかった。しかも、理由を尋ねられると「言葉の違いで法的な立場が変わるわけではない。どのような表現を使うかはその時々の政策判断だ」と言葉を濁した。
「(ロシアと)見解が異なるのはやむを得ない」
平成21年10月には当時外相の岡田克也副総理が北方領土問題についてこう述べた。
前原誠司政調会長の場合は、沖縄・北方担当相当時の21年10月に「終戦のどさくさに紛れて(旧ソ連が)不法占拠した」と断言したものの、22年9月に外相に就任すると「不法占拠」という表現を封印した。メドベージェフ大統領が露首脳として初めて北方領土の国後島を訪問したのはその2カ月後だ。
<もっとも、これは民主党だけの問題ではないだろう。自民党時代の首相や、外相にも腰が引けた人たちがいたことも事実である。自民党は、政権復帰を言うなら、しっかりとした外交戦略を立て、そしてディベート能力を高めて欲しい。現在の党首討論のような有様では、プーチンなどとの外交交渉など望むべくもないだろう>
参考記事_2 <甘い幻想捨てるべき>
_産経 2月7日「正論」_
【北海道大学名誉教授・木村汎 プーチン氏の水も辛い北方領土】
3月4日のロシア大統領選でプーチン現首相の当選はほぼ確実だという予測には、私も与(くみ)する。同意できないのは、プーチン氏の大統領復帰に伴って、懸案の北方領土問題を解決するチャンスが到来するという安易な臆測である。2島ぽっきり返還でこの論争にケリをつけることのみを狙うクレムリン戦略に、結局、乗じられてしまう危険性大だからである。
≪多元方程式の5変数の1つ≫
日露間の領土交渉は多元方程式の解を求める作業であり、少なくとも5つの変数が絡んでいる。ロシア指導部、ロシア世論、日露間の力関係、日本側の交渉法、国際状況である。プーチン氏の大統領への返り咲きは、そのうちの1つが変わるにすぎない。それは、確かに最重要変数であるかもしれないが、そうだとしても、以下の2点に注意する必要がある。
第一は、大統領がメドベージェフ氏からプーチン氏へと代わることの意味を、過大評価してはならないということである。メドベージェフ大統領-プーチン首相の双頭体制下の4年間に、ロシアの対日外交を決めていたのは、本当はプーチン氏だったからだ。
例えば、メドベージェフ大統領が一昨年11月に強行した国後島への上陸ですら、実のところ、プーチン首相の黙認なしにはあり得なかっただろう。ロシアの国家元首の誰一人としてあえてやらなかった北方領土訪問を、プーチン氏の事実上の「部下」たるメドベージェフ氏が独断で成し得たはずがない。訪問はプーチン氏の承認、いやひょっとすると、奨励すら受けて、行われたに違いない。
≪国後訪問も親分の差し金?≫
そのことは、メドベージェフ大統領の国後訪問に続き相次いで北方領土入りしたロシアの要人たちが一体、誰だったかを知れば、自ずと明らかだろう。一人の例外もなく、大統領府ではなくて首相府の人間、すなわちプーチン氏直属の部下だったのである。
第二に注意すべきは、メドベージェフ氏に比べてプーチン氏が対日政策に関してより融和的であるということを示す根拠が、どこにもないことである。
一般的にいって、「プーチノクラシー」は、ゴルバチョフ主義やエリツィン主義へのアンチテーゼである。プーチン氏の対日戦略もその意味で例外ではない。
旧ソ連のゴルバチョフ、新生ロシアのエリツィンの両大統領は、北方四島を日露間の領土交渉の対象地域と決め、ビザ(査証)なし交流を提唱したり、交渉の指導原則として「法と正義」に準拠することに合意したりした。それはプーチン氏の目にロシア側から日本への過大な譲歩と映る。これら2人の先輩権力者が日露関係に残した「負(?)の遺産」をなし崩し的に修正し克服していかねばならない。プーチン氏がそう決意していることは想像に難くない。
プーチン氏はまず、ビザなし交流プログラムに数々の嫌がらせを加え、あわよくばプログラムを廃止に追い込もうともくろむ。このプログラムは、プーチン氏の考えに立てば、ロシア側には実に具合の悪い、次のような理論的前提に基づいているからである。
北方四島は今後の交渉次第で日露いずれの領土になるか未確定の地域である。主権帰属に関し黒白が決せられていない灰色地帯であり、それゆえ、そこに出入りする日本人にパスポートの所持またはビザ取得が免除される-。
≪ロシアに一石三鳥の共同開発≫
プーチン氏はビザなし交流プログラムを締め付ける一方で、日本側に対し、四島の「(日露)共同経済開発」を執拗(しつよう)に提案する。万一、日本側が提案に乗ってくれれば、ロシア側に“一石三鳥”の効果をもたらすからである。
まず経済的利益である。日本のカネ、モノ、ヒト、科学技術が四島や周辺海域に導入され、現地経済が一気に活性化する。つまり、ロシア中央、サハリン州政府が十分やれないことを、日本が肩代わりしてくれることになる。
次に法的利益である。共同開発の実施に伴って発生する事故、犯罪、トラブルはすべて、四島を実効支配するロシアの法律によりロシアの裁判官の手で裁かれる。そのことを通じて、ロシアによる事実上(de facto)の四島支配は、法的(de jure)な支配にまで高められる。
そして心理的、外交的利益である。経済的利益が得られる限り文書の上でどの国に主権が属するかはさして問題ではないといった心理を、元日本人島民の間に醸成でき、さらには、日本人一般が「経済的利益に目がくらんで、ついに領土返還を諦めた」というイメージを全世界に広げられる。そこまでいければ、万々歳である。
プーチン氏の大統領返り咲きは99%動かないかもしれない。それはしかし、次期政権が無事安泰であることを意味しない。6年の任期中には、北方領土をめぐる多元方程式の他の変数にも必ず何らかの変化が表れよう。日本側が諦めない限り領土の返還はいずれ実現する。「北方領土の日」の今日、改めてそう胸に刻みたい。(きむら ひろし)
【参考記事_3】<完全にロシアになめられている日本>
_産経1月6日 電子版_
【日々是世界 国際情勢分析】玄葉外相はメディアの攻撃に耐えている】
先月末に東京で行われた日露外相会談では、北方領土問題をめぐる激しい応酬は見られず、「双方の努力のもと、建設的で友好的な雰囲気で行われた」(外交筋)という。会談で領土問題に割かれた時間は全体の4時間半のうち40分。ラブロフ外相は露側の強硬姿勢を示す要人の一人として知られるが、「今までの表現を強めるような発言はなく」(同)、会談後の会見でも、4島での共同経済活動について「日本の法律的な立場に損害を与えないようにさらなる努力をしたい」とまで述べた。
こうした態度の表れは民主党政権が、露側が最も懸念を示す「不法占拠」発言を封印するなど「融和政策」とも受け止められる姿勢を取っていることが背景の一つにある。会談前に北方領土を視察した玄葉光一郎外相が現場で「あらゆる分野でロシアと協力を進める。私はロシアを重視している」と発言したことも露側は高く評価。露外交筋は「日本側のポジティブなシグナル」と受け止め、会談準備につなげた経緯があった。
1月29日付の露紙イズベスチヤが「日本側は未解決の領土問題にもかかわらず、経済協力の方に関心を持っている」と報じたように、露側メディアは会談について、概して同様の見方を伝えている。
露国営ラジオ局「ロシアの声」は同28日付の電子版で、日露関係専門家の分析を紹介。露外相の来日自体が領土問題の進展がないことの証明とみるこの専門家は、「両国には今日、この問題をしつこく繰り返す必要はないという明確な認識が生まれた。しばらくの間、この問題を脇に置く必要がある」と露側の姿勢を代弁している。
一方、イタル・タス通信のゴロブニン東京支局長は自らのブログに、日本側の「不法占拠」封印姿勢に3つの理由があると分析している。
まず第1に、2年前のメドベージェフ露大統領の国後島訪問後に両国間で起こった騒動の教訓から、「日本側はいたずらに衝突をしたくない」と考えている。第2に、昨年の東日本大震災後に寄せられたロシアからの支援に「日本側は心を打たれた」から。そして第3が最も重要として、来月行われる大統領選挙に言及する。日本側は、大統領選挙のテーマに北方領土問題が取り上げられ、露側からの反響が激化することを懸念しているのだという。支局長は故に「玄葉外相が、日本側メディアの(批判的な)追及にストイックに耐えている」と指摘する。
<玄葉外相は、日本国民の批判に抗して、正義、大道のために闘う求道者の地位に祭りあげられている。玄葉さん、「領土問題よりも、経済協力を重視している」と見られていますよ。 ともあれ、日本の政治家を個別に、持ち上げたり貶めたりして、世論の分断を計るのは、ロシア、中国の常套手段である。しかしながら日本が、ロシアとの対立を恐れて、今回の手打ちを行ったという見方は、あながち誤りでもないのである。本来、ロシアの方が、彼らの暴挙に対する日本からの反撃を恐れなければならないはずなのに、逆に日本の方が勝手に恐れてくれたので、彼らは一連の暴挙が正しいやりかたであったことにさぞや自信を深めたことであろう。それは、「北方領土の日」の集会で野田首相が「強い意志でロシアとの(返還要求)交渉を進める」と表明した翌日の8日、5機の露軍機が日本海の日本領空近辺に接近したことに、早速現れている。これは、野田首相の演説に対する対抗措置、抗議行動とみられている。つまり、彼らは「日本は脅すに限る」と考えているのである。>
さて、今年の2月7日の北方領土の日はなんとか形がついた日だった。というのも、鳩山、菅と続いた、思いつきだけの反日的なデタラメ外交で、メドベージェフ大統領の北方領土視察を許し、ロシアによる実効支配を強めさせ、領土返還の実現を著しく遠のかせたのではあるが、野田政権になって、ようやく体勢を立て直す気配が見えたような気がするからである。報道によれば、「北方領土の日」の7日、「北方領土返還要求全国大会」が都内で開かれ、野田佳彦首相は挨拶で「北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、強い意志でロシアとの交渉を粘り強く進めていく」との決意を表明した。首相はまた、来賓の大島理森自民党副総裁に、「全ての政党と連立を組むつもりで、超党派で問題解決に全力を尽くす」と協力を求めた。 野田首相は大会開始から終了までの90分間参加し、領土問題に取り組む意欲を示した。同席した新党大地・真民主代表の鈴木宗男元衆院議員は挨拶で「歴代首相は挨拶をしたらすぐ帰った。野田首相は(挨拶した後も)座っている」と首相の姿勢を評価した。確かに、ここ数代の首相は、形ばかりの出席であったので、これは喜ばしいことではある。そこで、このブログで何が言いたいかと言えば、まずは、この二年半の間で失ったものはあまりにも大きく、我々は二度とこのような愚行を繰り返さぬことを決意する必要があるということ。そしてこの二年半の間で明らかになったことは、これまでの日本の北方領土返還交渉戦略は、内外の情勢の激変に伴い、その少なからぬ部分が破綻してしまったということである。このままでは、北方領土の返還は望むべくもなく、それゆえ、この機会を契機として、取り組みの抜本的見直し、取り組み体制の再構築が必要になるということである。
[1]_<またしても敗北の「日露外相会談! 政治の取り繕いのためだけのの無意味かつ不利益な会談はもうするな!>
先月28日の日ロ外相会談は、政治関係者そしてマスコミにも概ね好意的に受け止められているように見える。「最大の懸案である北方領土問題に関しては、棚上げせず、両国間のこれまでの文書や「法と正義」の原則に基づいて議論を進めていくことで一致したという。」(1月29日読売)。もし、この会談で、一連のロシアからの日本の主権侵害に対する日本の断固たる抗議が行われていたなら、そして「静かな議論」を今のような形で受け入れていなければ、それなりに意味がある会談になっていただろう。しかし現実はそうではなかった。
今回の会談は、外交としては、完全敗北と言わざるを得ないだろう。そもそもなぜこのような中身のない、しかも敗北のための会談をこの時期にやる必要があったのかも疑問と言わざるを得ない。なぜなら、一連のロシアの暴挙に対して、日本はこれまでも、そしてこの会談でもなんらの公的抗議もしなかったからである。抗議を避けて、当たり障りのない言葉で友好ムードを演出したのだから、日本はロシアの一連の暴挙を許した、その正当性を認めた(認めさせられた)ことに等しいからである。
ここ数年の日本政治の混乱と、日米同盟の弱体化の隙をついて、実質的な対日戦勝記念日の制定、メドベージェフ大統領の北方領土視察・訪問、軍事基地の建設、中国、韓国資本の呼び込みなど、数々の日本の主権侵害、実行支配の強化がなされたにも関わらず、これまで日本からロシアに向けての断固とした公式の抗議、世界に向けての公式のメッセージは発されていない。菅首相のように、暴挙がなされたときには沈黙し、直接抗議できる場(APEC)でも抗議せず、あとになって国内の集会(昨年の2月7日)で突如として「暴挙だ」と「負け犬の遠吠え」をしたり、前原政調会長のように威勢よく「不法占拠だ」と叫んでみたものの、ロシアから激しい個人攻撃、つまり分断攻撃に晒され、政府の団結した援護もない状態で急にトーンダウンしてしまった例もある。要は、日本としての毅然たる抗議は一度もなされていないのである(下記参考記事_1参照)。本来であれば、日本の激しい反発、対ロシアへの対抗措置、国際世論からの批判などによって、ロシアはそれなりの高い代償を支払わざるを得ない立場であったし、また、それを覚悟していたはずでもあったろう。一連の不法行為を成功裏になしととげたロシアにとって最後の仕上げは、この問題でくすぶる火を消し、何もなかったことにすることであった。そこでロシアは、静かな環境がないと、領土交渉は継続できないという牽制、脅しをかけ、「静かな環境」をキーワードにして、日本の怒りの沈静化を試みたのである。そして、「交渉の継続」というなんの中身もない言葉を持ち出すことによって、さも譲歩した装いを作ったのである。すでに取る者は十分に得ているから、あとはこの「食い逃げ」の火消しに務めたわけである。
ところが、彼らの懸念に反して、日本は今回もなんらの怒りの表明をすることなく、「静かな環境」の仕掛けに飛びつき、ロシアは何の苦労もなく、また代償も支払うことなく日本の怒りを鎮めることに成功したのである。それどころか、日本側から将来にわたる「静かな環境」という日本の抗議の封印とも読める言葉まで得たのであり、しかも日本に喜んでもらったというおまけまでついたのである。パブロフ外相は大成果を上げて凱旋したわけである。
片や日本側は、一昨年あれほどのデタラメをされたにも関わらず、「静かな環境」がないと、領土交渉は継続できないという脅しに簡単に屈して、「交渉の継続」の言葉を得て、安堵の胸をなで下ろしたらしい。しかし交渉は当然のことだから、成果でもなんでもない。北方領土問題の本質は「不法占拠」にあるわけだから、わが国が卑屈になって、ロシアの寛大さ、慈悲を乞うような性格のものではないにも関わらず、またしても政府、民主党は、慈悲を乞う外交を行ったのである。一体何のための会談であったのか。
たとえば、1月29日読売社説では次のように問題点を指摘している。「ただ、ラブロフ氏は最近、北方領土問題について、「第2次大戦の結果、法的根拠に基づきロシア領となった」と述べている。歴史的事実を一方的に否定するかのような態度は問題である。ロシア側は今後、大統領選を控えて、対外的には強硬な姿勢を崩すまい。日本政府はロシアの政権交代後の外交方針を十分見極めて、対露戦略を練り直す必要がある。領土問題の打開に、腰を据えて取り組まねばならない。
ラブロフ氏は、記者会見で北方領土での「共同経済活動」に言及し、漁業、水産加工、農業など日本との合同プロジェクトを歓迎する意向を表明した。だが、ロシアの国内法に基づく経済活動を前提としている。これでは、北方領土は日本固有の領土だという、日本の立場が損なわれることになる。」
8日産経社説でも次のように指摘している。「玄葉光一郎外相は先月28日の日露外相会談で、ラブロフ露外相と「静かな議論を続ける約束」をしたと述べ、「世論が割れないことが何より重要だ」と強調した。しかし、双方が対立する問題で「静かな議論」とは「決着の先送り」にほかなるまい。北方領土の共同経済開発では、日本は主権を侵害されない条件下で認めようとしているが、ロシア側は日本に配慮すると言いつつ自国の法制を適用する構えだ。これでは、不法占拠の正当化になりかねない。」
結局のところ、パブロフ外相は、最後の最後まで「北方領土はロシアのものである」ことをしっかり主張して帰ったのである。してみると、「交渉の継続」とは、ロシアは北方領土の主権がロシアにあることを日本に説明するために、日本と協議をすることはやぶさかではないということだから、これは成果でもなんでもなく、むしろ後退である。こんなことを確認するために、わざわざ会談を開いて、あまつさえ、これまでの暴挙を免罪してしまったのだから、完全な敗北と言うしかないだろう。これに対してある人たちは言うかもしれない。「そんなことを言っていたら、ロシアは怒って交渉のテーブルにつかず、それゆえ領土問題を解決する可能性すらなくしてしまうだろう」と。しかし、これは、正論のようにみえて実は大きな誤り、ないしは表面を取り繕う欺瞞だ。以下に述べるように、ただ交渉のテーブルにつくだけでは、そしてロシアの機嫌取りだけを進めるという交渉では、領土は永遠に、絶対に帰ってこないのである。ロシアの不当性、不法性を主張して、問題の本質がどこにあるかを明確にしていくことこそが、返還への道を開くのである。それでもし会談や、交渉が一時的に行き詰ることがあるにしても、正道に沿って断固とした態度を取っていけば、必ず道は開けるだろう。
[2]_<伝統的な慈悲を乞う外交は破綻した!! すべては占拠の「不当性」を主張することから始まる>
日本のこれまでの領土返還交渉は、武力選挙の不当性の追及を極度に抑制すると同時に、対ロ融和政策を進め、それに経済協力というテコでもって、事態の打開を計るというものであった。しかしこの路線の妥当性はすでに破綻している。というのは、この路線が友好であるのは、ロシアがかつてのソ連時代のように貧しい国であること、新生ロシアが民主的な国であること、日本に十分な財力があること、日本以外に極東地域においてロシアに協力できる技術、能力を持つ国がないことなどをその前提としているが、現在これらはいずれも成り立たなくなっている。中でも特に重要な変化は、日本の財政事情が極度に悪化し、ロシアを助けるどころか、経済活性化のためのテコをロシアに依存しようというところまで追い詰められようとしていることである。「金の切れ目は縁の切れ目」なので、もはやロシアは日本の要求に耳を貸さないばかりか、さまざまなプロジエクトをちらつかせて、日本を操ろうとしてさえいる。もう一つの変化はロシアは、ペレストロイカの時代のそれではなく、古いロシア、ソ連に回帰しようとしていることである。下記参考記事_2でも指摘されているように、「一般的にいって、「プーチノクラシー」は、ゴルバチョフ主義やエリツィン主義へのアンチテーゼである。プーチン氏の対日戦略もその意味で例外ではない。」ということである。大国主義、覇権国家に回帰しようとしているロシアが、いま狙っているのは、占領を恒久化し、正当化することだから、「静かな環境」下での「友好的話し合い」くらいのことで北方四島を返還するはずはないのである。このことについては、下記参考記事_2に、詳しくそして有益な分析がなされているのでぜひとも参照願いたい
8日づけの産経社説は次のように指摘している。
「一部の専門家や政治家は、プーチン露首相が来月4日の大統領選で返り咲けば、問題が前進するとみる。だが、プーチン氏は北方領土が「第二次大戦の結果、ソ連・ロシア領となった」と断言し、その意を受けたメドベージェフ大統領らは北方領土の恒久支配化を進めてきた。大統領復帰後に対日譲歩が得られる根拠は何もない。甘い幻想の下に問題を先送りする融和的外交では、同じ過ちを繰り返すだけだ。」
[3]_<戦略の転換が必要! 我々は「スターリン主義」の犠牲者なのだ! ロシアそして世界に「不法」と言えてこそ、可能性も開ける>
それでは、今後どうしていけばよいのか。この問いに十分な答はないが、必要条件はある。少なくとも次のことだけは言える。これまでのやり方に決定的に欠けていたものは、正論、筋論を中心に据えた外交を展開するということであった。これなしに、いくら融和政策を続けても、なんの効果もない。今までのやり方は、十分でないのみならず、必要条件すら満たしておらず、ただ日本の経済力があったという状況頼みのものでしかなかった。ましてその頼みの綱の日本の経済力が弱体化した今では、占拠の「不法性」を主張していくことは、絶対に必要な条件となるのである。
次のことを考えてみよう。ロシアの占拠が「不法」と言われないのであれば、ロシアには、北方四島を日本に返す理由がないことになってしまう。いくら、日本がロシアに友好的な国になる努力をして、たとえそれに成功したとしても、理由もなく自国の領土を日本に返すはずがないだろう。またたとえ誰であれ、そんなことをする大統領をロシア国民は許さないだろう。現在の占拠が「不法」であることをロシア国民、世界が、そして何よりも日本国民が理解していてこそ、返還の可能性が開けるのである。
これまでの日本政府の言い分は、「占拠が「不法」であることは言わずとも、お互いによく理解していることである。そんなことを言って、友好ムードを壊せば、領土交渉は台無しになって、帰るものも帰らなくなる」と言うものであったろう。しかし、これは全く事実に合っていないことがすでに証明されている。ロシア政府の要人は、北方領土の占領は「合法」であり「当然のことだ、不法などとはとんでもない」と言っている。もし占拠が不法だと思っているとすれば、メドベージェフ大統領が、北方領土視察など出来るはずがないのである。彼らは「不法」であることを覆い隠し、それを「合法」なものに摩り替え、その「事実化」をねらっている。この不当な行為は公に堂々とやられているわけだから、もしこれに日本が反論しないとすれば、第三者的、客観的には、日本は抗議する根拠、領土奪還の意志を持たないということになってしまう。下手をするとこの占拠は「合法」であり、不当な主張をしているのは日本だということにすらなりかねないのである。ロシア国民、世界がそう思うだけでなく、そのうちに、日本国民ですらそう思う人間が出てくるだろう
。
この「不法」を「合法」に書き換えるプロセスがどんどん進行している。言うべきことを言わなかったツケが今ごろ噴出してきているのである。しかし、今からでも遅くはない。日本国民が団結して、ロシアによる北方四島占拠は「不法・不当」であることを、そして日本は「スターリン主義の犠牲者」であって、我々は「スターリン主義の残滓」の一掃を求めていることを、ロシア政府、ロシア国民、世界に知らしめなければならない。この最も基本的で重要な行動を抜きにして、領土返還交渉など成り立つはずもないのである。
以下、産経社説の引用_「日本にいま必要なのは、法と正義の下に四島返還の主張を国民と政府が団結して貫いていくことである。そのためには首相自ら「北方領土問題の解決こそ地域の安定と発展につながる」と世界に根気強く発信していくことだ。今年はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が初めてロシアのウラジオストクで開かれる。5月には主要国首脳会議(G8)もある。 北方領土問題を世界に訴える好機だ。国を挙げて生かしたい。」
言うまでもないことではあるが、だからと言って、ロシアと良好な関係を築くことが重要でないということではない。これは引き続き重要である。こういう関係は、領土返還を促進するだろう。これは結構なことではあるが、ただ次のことはしっかり押さえられなければならない。
それは、北方四島の占拠が不法であることは、最優先で主張されるべきことであり、これは絶対的な前提なのである。つまりこの前提は、経済協力などよりもはるかに重要な要素であるということである。もし、良好な関係が、あるいは経済協力がなければ奪われた領土は帰ってこないというのであれば、貧しい国、権利の主張を行って対立を厭わない国は永久に奪われた領土を回復できないことになるが、これは歴史的事実に反する。その例は身近にもあふれている。それゆえ、正論、筋論をおろそかにして、友好だけを先行させてロシアに擦り寄るというような行動は取るべきでないということである。日本からすれば、「これだけ経済面で協力したのだから、そろそろ、こちらの願いである北方領土を返して欲しい」ということだろうが、これはとんでもない的外れな認識に立った考えである。と言うのは、これをロシア側から見れば、「日本は、北方領土などに関心を向けることも出来ないほど、困窮してプロジエクトを求めた。ロシアは、それに答えてプロジェクトを与えたのだから、それでギブ・アンド・テイクは完結している。日本は、このロシアの配慮に感謝すべきである」ということにしかならない。原則をおろそかにしたままでの経済協力は、「北方領土を返さなくてもよいから、その代わりにプロジェクトをくれ」と要求している」と映ることになる。現に下記参考記事_3にはそのような見方が紹介されている。つまり、筋論を欠いたままで経済協力を言えば言うほど、領土返還は遠のくというのが、現在の日本が置かれている状況なのである。約20年前から、世界は激変しているのであり、この変化に対応した戦略は、何はさておき、基本に返ることなのである。
もう一つ重要なことは、それはなんといっても、日米同盟の再構築、強化をはかることである。このロシアの暴挙を許したのも、鳩山政権が日米同盟をガタガタにしたからであり、菅政権が、日本の国家機構を統治できていないこと、それゆえ日米同盟の修復が出来ないことを見透かされてのことだったわけだからである。日米関係の問題は、重要すぎるゆえに、別途、これから取り上げていくつもりである。
[4]_<日本は再生しなければならない、古いものの一掃を!!>
現在の状況を踏まえた団結が求められているにも関わらず、国内では、相も変わらず40年ぐらい前の意識で政治をやっている人たちがいる。こういう人たちには、一日も早く退場願わなければならない。その一つが次のような‘とんでも’問題である。8日付けの産経によれば「民主党は7日、計11人いる党最高顧問・副代表に特定分野の政策を担当させる方針を固めた。最高顧問の鳩山由紀夫元首相は外交、菅直人前首相は新エネルギー政策を担当し、幹事長室に提言する。輿石東幹事長が発案し、両氏も了承した。ただ、首相時代に鳩山氏は普天間飛行場移設問題で、菅氏は東京電力福島第1原子力発電所事故に絡むエネルギー問題で迷走した経緯があるだけに「ミスキャスト」との声も出そうだ。」とある。鳩山氏は、日本の外交・安保の基軸である日米安保を、普天間問題でガタガタに壊し、のみならずロシアや中国、韓国に擦り寄って、これらの国からの対日主権侵害を加速させた人物である。また、菅氏は、これらの国にからむ日本の主権侵害になんらの友好な手立てを打てなかったばかりか、国内法を曲げて、中国の不当行為を許容し、韓国には、一方的に彼らの要求する資料を返還し、理由もなく韓国に謝罪したりして、日本の国益を著しく損ねた人物である。あまつさえ、原発事故に適切に対処できず、日本の原子力技術の国際的地位の低下に邁進した人物である。この二人が、「史上最低の首相」、「史上最悪の首相」と呼ばれるのも当然のことである。こういう国益を損なう政策しかできない人たちを、政策顧問にするとは!!、開いた口がふさがらない。一体全体、輿石氏、民主党、野田首相は何を考えているのか。そもそも、輿石人事は、一川、山岡、田中人事で、その政治音痴ぶりが証明されているのに、これをまた繰り返すのか。輿石人事は、単に「親分・子分、兄弟関係」しか考慮しない人事であって、政治、政策、外交・安保などには全く無縁のものである。この「御三方」には、そしてもちろん「天下・国家のため」と唱えながら、個人的趣味で政局ゲーム、マネーゲームに熱中している小沢氏にも、一日も早く政治から退去してもらいたい。この四人は、毛沢東時代に、中国を私物化した「四人組」にも匹敵する日本をダメにする民主党の「四人組」なのである。
次に、日本人は、古い意識、古い呪縛から解放される必要があることである。それは、戦争への贖罪意識である。戦後からここに至る約60年もの間、我々は我々なりに努力した。さまざまな毀誉褒貶を伴いつつ、中国、韓国は言うに及ばず、アジアの国々、そして世界に、資金と技術、人材の支援をしてきた。国連にも、少なくとも資金面ではアメリカに次ぐ貢献をしてきた。ところがこうしたことが一つの要因にもなって、日本の力は国が成り立たなくなる手前まで衰退してしまった。もう贖罪は済んだのであり、我々はこの意識から解放されてしかるべきだろう。
日本は、これからも国際貢献はするにしても、これまで封印していた自分たちの身を守るということを、どの国もがやっている当然のことをしてもよい時期だろう。それは、国民が、日本の利益を守るために団結することである。そして、戦後一貫して続いた、自虐的な反日の学校教育をやめることである。国民は、正しい歴史、国家観を取り戻す権利がある。ゆがんだ、自己被虐的な日教組の教育を捨て去り、真に主体的で、民主主義国の一員として国際社会に貢献できる理念を育てる新たな教育を作ろう。国民全体が、新たな日本の再生に向けて一致団結する必要がある。領土問題は、北方領土だけではなく、竹島、尖閣、ガス田、日本海呼称などの問題もある。これらを十把一からげに論じることは出来ないが、いずれにしても、国を挙げて取り組むべき課題であることは確かである。こうした国民の団結が、北方領土問題の解決にも力を与えるだろう。以下の日を、名実ともに国を挙げて、領土主権を守るための決起日としようではないか。
竹島の日 2月22日
尖閣諸島(開拓)の日 1月14日
そして、北方領土の日 2月7日
参考記事_1
<民主党は、思いつき外交、及び腰外交をやめ、国の利益に沿った戦略的外交を展開せよ>
_1月27日 産経 電子版_
【民主党政権「不法占拠」封印の及び腰】
ロシアのラブロフ外相が28日に来日し、玄葉光一郎外相と会談する。北方領土問題も話し合われるが進展は望めそうもない。民主党政権の歴代外相は北方領土について「不法占拠」という表現を避けるなど配慮を重ねてきた。だが、融和政策は何の効果も生まず、かえってロシア側からくみしやすしと足元を見られる始末だ。
外務省のホームページは「ロシアによる不法占拠が続いている」と明記しており、不法占拠は日本政府の公式見解だ。ところが、民主党政権はなぜかこの言葉を使いたがらない。
「(ロシアによる)北方四島の占拠は国際法上、根拠のないものだ」
玄葉氏は25日の記者会見でこう語ったが、「不法占拠」とはやはり言わなかった。しかも、理由を尋ねられると「言葉の違いで法的な立場が変わるわけではない。どのような表現を使うかはその時々の政策判断だ」と言葉を濁した。
「(ロシアと)見解が異なるのはやむを得ない」
平成21年10月には当時外相の岡田克也副総理が北方領土問題についてこう述べた。
前原誠司政調会長の場合は、沖縄・北方担当相当時の21年10月に「終戦のどさくさに紛れて(旧ソ連が)不法占拠した」と断言したものの、22年9月に外相に就任すると「不法占拠」という表現を封印した。メドベージェフ大統領が露首脳として初めて北方領土の国後島を訪問したのはその2カ月後だ。
<もっとも、これは民主党だけの問題ではないだろう。自民党時代の首相や、外相にも腰が引けた人たちがいたことも事実である。自民党は、政権復帰を言うなら、しっかりとした外交戦略を立て、そしてディベート能力を高めて欲しい。現在の党首討論のような有様では、プーチンなどとの外交交渉など望むべくもないだろう>
参考記事_2 <甘い幻想捨てるべき>
_産経 2月7日「正論」_
【北海道大学名誉教授・木村汎 プーチン氏の水も辛い北方領土】
3月4日のロシア大統領選でプーチン現首相の当選はほぼ確実だという予測には、私も与(くみ)する。同意できないのは、プーチン氏の大統領復帰に伴って、懸案の北方領土問題を解決するチャンスが到来するという安易な臆測である。2島ぽっきり返還でこの論争にケリをつけることのみを狙うクレムリン戦略に、結局、乗じられてしまう危険性大だからである。
≪多元方程式の5変数の1つ≫
日露間の領土交渉は多元方程式の解を求める作業であり、少なくとも5つの変数が絡んでいる。ロシア指導部、ロシア世論、日露間の力関係、日本側の交渉法、国際状況である。プーチン氏の大統領への返り咲きは、そのうちの1つが変わるにすぎない。それは、確かに最重要変数であるかもしれないが、そうだとしても、以下の2点に注意する必要がある。
第一は、大統領がメドベージェフ氏からプーチン氏へと代わることの意味を、過大評価してはならないということである。メドベージェフ大統領-プーチン首相の双頭体制下の4年間に、ロシアの対日外交を決めていたのは、本当はプーチン氏だったからだ。
例えば、メドベージェフ大統領が一昨年11月に強行した国後島への上陸ですら、実のところ、プーチン首相の黙認なしにはあり得なかっただろう。ロシアの国家元首の誰一人としてあえてやらなかった北方領土訪問を、プーチン氏の事実上の「部下」たるメドベージェフ氏が独断で成し得たはずがない。訪問はプーチン氏の承認、いやひょっとすると、奨励すら受けて、行われたに違いない。
≪国後訪問も親分の差し金?≫
そのことは、メドベージェフ大統領の国後訪問に続き相次いで北方領土入りしたロシアの要人たちが一体、誰だったかを知れば、自ずと明らかだろう。一人の例外もなく、大統領府ではなくて首相府の人間、すなわちプーチン氏直属の部下だったのである。
第二に注意すべきは、メドベージェフ氏に比べてプーチン氏が対日政策に関してより融和的であるということを示す根拠が、どこにもないことである。
一般的にいって、「プーチノクラシー」は、ゴルバチョフ主義やエリツィン主義へのアンチテーゼである。プーチン氏の対日戦略もその意味で例外ではない。
旧ソ連のゴルバチョフ、新生ロシアのエリツィンの両大統領は、北方四島を日露間の領土交渉の対象地域と決め、ビザ(査証)なし交流を提唱したり、交渉の指導原則として「法と正義」に準拠することに合意したりした。それはプーチン氏の目にロシア側から日本への過大な譲歩と映る。これら2人の先輩権力者が日露関係に残した「負(?)の遺産」をなし崩し的に修正し克服していかねばならない。プーチン氏がそう決意していることは想像に難くない。
プーチン氏はまず、ビザなし交流プログラムに数々の嫌がらせを加え、あわよくばプログラムを廃止に追い込もうともくろむ。このプログラムは、プーチン氏の考えに立てば、ロシア側には実に具合の悪い、次のような理論的前提に基づいているからである。
北方四島は今後の交渉次第で日露いずれの領土になるか未確定の地域である。主権帰属に関し黒白が決せられていない灰色地帯であり、それゆえ、そこに出入りする日本人にパスポートの所持またはビザ取得が免除される-。
≪ロシアに一石三鳥の共同開発≫
プーチン氏はビザなし交流プログラムを締め付ける一方で、日本側に対し、四島の「(日露)共同経済開発」を執拗(しつよう)に提案する。万一、日本側が提案に乗ってくれれば、ロシア側に“一石三鳥”の効果をもたらすからである。
まず経済的利益である。日本のカネ、モノ、ヒト、科学技術が四島や周辺海域に導入され、現地経済が一気に活性化する。つまり、ロシア中央、サハリン州政府が十分やれないことを、日本が肩代わりしてくれることになる。
次に法的利益である。共同開発の実施に伴って発生する事故、犯罪、トラブルはすべて、四島を実効支配するロシアの法律によりロシアの裁判官の手で裁かれる。そのことを通じて、ロシアによる事実上(de facto)の四島支配は、法的(de jure)な支配にまで高められる。
そして心理的、外交的利益である。経済的利益が得られる限り文書の上でどの国に主権が属するかはさして問題ではないといった心理を、元日本人島民の間に醸成でき、さらには、日本人一般が「経済的利益に目がくらんで、ついに領土返還を諦めた」というイメージを全世界に広げられる。そこまでいければ、万々歳である。
プーチン氏の大統領返り咲きは99%動かないかもしれない。それはしかし、次期政権が無事安泰であることを意味しない。6年の任期中には、北方領土をめぐる多元方程式の他の変数にも必ず何らかの変化が表れよう。日本側が諦めない限り領土の返還はいずれ実現する。「北方領土の日」の今日、改めてそう胸に刻みたい。(きむら ひろし)
【参考記事_3】<完全にロシアになめられている日本>
_産経1月6日 電子版_
【日々是世界 国際情勢分析】玄葉外相はメディアの攻撃に耐えている】
先月末に東京で行われた日露外相会談では、北方領土問題をめぐる激しい応酬は見られず、「双方の努力のもと、建設的で友好的な雰囲気で行われた」(外交筋)という。会談で領土問題に割かれた時間は全体の4時間半のうち40分。ラブロフ外相は露側の強硬姿勢を示す要人の一人として知られるが、「今までの表現を強めるような発言はなく」(同)、会談後の会見でも、4島での共同経済活動について「日本の法律的な立場に損害を与えないようにさらなる努力をしたい」とまで述べた。
こうした態度の表れは民主党政権が、露側が最も懸念を示す「不法占拠」発言を封印するなど「融和政策」とも受け止められる姿勢を取っていることが背景の一つにある。会談前に北方領土を視察した玄葉光一郎外相が現場で「あらゆる分野でロシアと協力を進める。私はロシアを重視している」と発言したことも露側は高く評価。露外交筋は「日本側のポジティブなシグナル」と受け止め、会談準備につなげた経緯があった。
1月29日付の露紙イズベスチヤが「日本側は未解決の領土問題にもかかわらず、経済協力の方に関心を持っている」と報じたように、露側メディアは会談について、概して同様の見方を伝えている。
露国営ラジオ局「ロシアの声」は同28日付の電子版で、日露関係専門家の分析を紹介。露外相の来日自体が領土問題の進展がないことの証明とみるこの専門家は、「両国には今日、この問題をしつこく繰り返す必要はないという明確な認識が生まれた。しばらくの間、この問題を脇に置く必要がある」と露側の姿勢を代弁している。
一方、イタル・タス通信のゴロブニン東京支局長は自らのブログに、日本側の「不法占拠」封印姿勢に3つの理由があると分析している。
まず第1に、2年前のメドベージェフ露大統領の国後島訪問後に両国間で起こった騒動の教訓から、「日本側はいたずらに衝突をしたくない」と考えている。第2に、昨年の東日本大震災後に寄せられたロシアからの支援に「日本側は心を打たれた」から。そして第3が最も重要として、来月行われる大統領選挙に言及する。日本側は、大統領選挙のテーマに北方領土問題が取り上げられ、露側からの反響が激化することを懸念しているのだという。支局長は故に「玄葉外相が、日本側メディアの(批判的な)追及にストイックに耐えている」と指摘する。
<玄葉外相は、日本国民の批判に抗して、正義、大道のために闘う求道者の地位に祭りあげられている。玄葉さん、「領土問題よりも、経済協力を重視している」と見られていますよ。 ともあれ、日本の政治家を個別に、持ち上げたり貶めたりして、世論の分断を計るのは、ロシア、中国の常套手段である。しかしながら日本が、ロシアとの対立を恐れて、今回の手打ちを行ったという見方は、あながち誤りでもないのである。本来、ロシアの方が、彼らの暴挙に対する日本からの反撃を恐れなければならないはずなのに、逆に日本の方が勝手に恐れてくれたので、彼らは一連の暴挙が正しいやりかたであったことにさぞや自信を深めたことであろう。それは、「北方領土の日」の集会で野田首相が「強い意志でロシアとの(返還要求)交渉を進める」と表明した翌日の8日、5機の露軍機が日本海の日本領空近辺に接近したことに、早速現れている。これは、野田首相の演説に対する対抗措置、抗議行動とみられている。つまり、彼らは「日本は脅すに限る」と考えているのである。>
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