日本外交におけるこれまでの首脳会談は、総じて中身の無い形式的なもの、儀礼的なものであることが多かったが、今回の会談はそうではなかった。過去3年の民主党政権下で失われた信頼を回復し、「強い日米同盟」の再構築をめざす新たな出発点を確認するという大きな成果があった。特筆すべきは今回の首脳会談では、戦略性、主体性、積極性、攻めの姿勢が際立っていたということである。これらは小泉政権そして第一次安倍内閣では見られたものの、それ以後の政権では絶えて見られず、今回、日本外交がようやくあるべき姿に復帰したことを大いに歓迎したい。外交に限ったことではないが、物事は指導者が誰か、どういう方針で進むのかに大きく依存している。今回の外交成果は、日本の最高指導者である首相の資質、能力がいかに重要であるのかを改めて示すものとなった。安倍首相、そして政権の主要メンバーには、この調子で、戦略的で主体的、攻めの外交を継続してもらいたいものである。以下、23日、24日の産経 電子版のいくつかの記事を抜粋、再構成して、今回の外交の特徴点をクローズアップしてみたい。
《戦略性_「日米中 正三角形論」は完全に破綻した! 国益とパワーバランスの正確な認識こそ現実的な戦略の基礎だ》
首相は「同盟の信頼と強い絆が完全に復活した」と宣言し、大統領は「日米同盟はアジア太平洋の安全の中心的基盤で、米国は強力かつ頼れるパートナーだ」と応じた。以前ほどではないにせよ、今も世界最強の国家は米国であり、その米国と強固な同盟関係を維持することが、領土ほかへの野心を持つ国に対する抑止力になる。
「民主党政権は少なくとも当初はこの「常識」を理解しておらず、米国と中国を同列に並べた「日米中正三角形論」や米国排除を志向した東アジア共同体構想をぶち上げ、米国をはじめ世界が高く評価していたテロ対策であるインド洋での給油活動を取りやめるなど、日米関係を壊し続けた。 その結果、日米は離反したとみたロシア首脳は北方領土に、韓国大統領は島根県竹島にそれぞれ不法上陸し、中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返す。」(23日 産経)。
ここ3年間の経緯からもわかるように、中国、韓国、ロシアは、信義ではなく、パワーバランスを見ながら自国の利益の追求を行う国であり、日本のパワーが弱まったとみると、直ちに侵略行動に出てくるのである。「日米中 正三角形論」は完全に破綻し、小泉元首相が唱えた、「日米関係が良好であればあるほど中国、韓国、アジア諸国、世界各国と良好な関係を築ける」ということの正しさが、現実に改めて証明されたわけである。これは、対米追随とか、アジア軽視ということを意味せず、これらを重視するなら、その前提としての日米同盟の強化が不可欠だということである。これは、没主体的な対米追随どころか、利害を共にする米国と共通の戦略をもって、危険な野心を持つ近隣諸国をパワーで牽制し、蛮行を抑え込むという主体的で現実的な方策なのである。
「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を重視するのも、首相がもともと自由貿易論者であることや日本の経済的利益を考えての理由ばかりではない。「世界の成長センター」(首相)となっていくアジア太平洋地域の経済秩序構築をめぐる米中の主導権争いが激しさを増す中、日本としてどちらの「勝者」が望ましいのか。日本の国益を考えたとき、その答えは同じ自由主義経済をとる「米国」となるはずだ。 首相がこうした冷徹な判断に基づき、経済面においても日米同盟の強化を目指していることは、想像に難くない。」(23日 産経)。
《主体性は毅然たる外交を生み、外交を成功させる源だ》
最大の焦点であるTPP交渉では、TPPの関税撤廃で事実上の「例外」を認めさせる共同声明文書という「期待以上の成果」(自民党幹部)をあげることができた。これも、首相が毅然たる態度で日本の立場を主張して、理解を求めたことが功を奏したと言える。日本は交渉参加へ向け大きく踏み出した。
大統領は、日米双方が経済成長を遂げていく必要があるとの文脈でTPPの話を持ち出し、首相の返答を待った。
「首相の言葉は明快だった。 「先の衆院選で、自民党は聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対するという公約を掲げ、政権に復帰した。国民との約束は極めて重要だ」。 大統領もすぐさま反応した。TPPに関する両首脳の合意は文書にとりまとめる方向だったが、実効性が薄い「覚書」や「報道資料」となる可能性も残っていた。しかし、安倍首相の主張を聞いた上で、大統領自らが「共同声明」という言葉を持ち出した。
両首脳のやりとりを固唾をのんで見守っていた同行筋は「二人の話はかみ合っていた。『日本にもいろいろ事情があって…』といった弁解調だったら、大統領は受け入れなかっただろう」と語る。」(24日 産経)。
日本がTPP交渉に参加する意志はあること、そのための条件、要求が何であるのかをはっきり示して、もしこれが容れられないなら日本は撤退せざるを得ないということを率直に示したがための結果であったと言えるだろう。「アベノミクスが効いたため、日本にTPPに入ってもらわなくてはいけないという動きがあった」(23日 世耕弘成官房副長官)と言うことらしいから、これが、今回の結果を後押ししたことになる。しかしアベノミクスも、安倍政権の独自の取り組みであるので、結局安倍政権の主体的な政策とその取組が外交を下から支え、今回の展開を見せたということだろう。
従来の日本外交は、「すり寄り」の外交であって、すり寄ればすり寄るほど、相手に不安を与えるか、もしくは足元を見られ馬鹿にされると同時に相手を付け上がらせるかのいずれかであった。理由もなくすり寄るということはあり得ないので、明確な説明もないまますり寄られれば誰でもその真意を疑い、薄気味悪く感じるのは自然なことである。また、日本にはすり寄るしか手立て、知恵がない、あるいはなにがしかの弱みがあるに違いないと喝破(誤解、下司の勘繰り?!)され、姑息で卑屈な国だと馬鹿にされて、これが相手を付け上がらせる原因となってきたのである。これまでの日本は、すり寄ればすり寄るほど相手は喜び、こちらを信用してくれるだろうと思ってきたようであるが、実際は全くの逆効果を招いてきた。このことは、これまでの対中、対韓外交の失敗から明らかであるだろう。
外交は、強固な主体性の上に成り立つ冷徹な駆け引きであり、知恵と度胸と決断略の勝負なのだ。いつでも今回のような成功が保障されているわけではないが、いずれにせよこれは外交の基本であるので、これが無ければ外交とは言えないだろ。中国、韓国に対しても、今回の経験を生かした外交を進めてもらいたいものだ。特に、韓国については、適宜突き放すことをしないと、付け上がる一方になるだろう。
《主体性を持ち、積極姿勢でもって、米国の背中を押す外交が重要。もう米国に甘えられる情勢ではない!》
一般に米国の民主党政権は内向きの傾向が強いと言われる。まして深刻な財政危機にある現状において、歴代政権以上に内向き志向を持ったオバマ政権が、尖閣や竹島などの日本の問題にできることなら関わりたくないという本音を持っているだろうことは意外なこととは言えないだろう。見方を変えれば尖閣はそれほど一発触発の危うい状態にあるとも言える。米側には重大な衝突に発展しないように、日中双方に自制を求める姿勢も強い。これを裏付けるかのように、中国国営通信の新華社は今回の結果を次のように報じている。「記事は、安倍氏が日米同盟関係強化で中国の台頭を抑えることを狙い、オバマ氏の支持を取り付けようともくろんだが、「米国にとって中国の戦略的重要性は高まっており、米国の核心的利益ではない釣魚島(尖閣)問題で軽々しく中国と対決することはない」と指摘した。 新華社は別の分析記事で、米国は日中間の軍事衝突に巻き込まれることを望んでおらず、日中関係が緊張している中での今回の日米首脳会談を極力、目立たないようにしたようだとの専門家の見方を伝えた。」(23日 産経)。
これは、今回の日米首脳会談の成功をやっかむものであり、日米の緊密化を阻止し、両国間にくさびを打ちたいという中国の希望の表明であるが、他方では一面の真理を突いているようにも思える。ケリー新国務長官は親中的考えの持ち主であるとも見られてきたし、新国防長官に予定されているヘーゲル氏も日米同盟の強化にさほど積極的ではないようにも言われている。このようなオバマ政権の中で、先に退任したクリントン国務長官、パネッタ国防長官、キャンベル国務次官補が、日本の民主党の度重なる迷走にも関わらず、一貫して日本重視、対中強硬姿勢をとってくれたのは、日本にとってありがたく、かつ幸運なことであったと言える。しかし、二期目のオバマ政権ではここまでの幸運は期待できず、その分は日本が補わなければならないだろう。
今回の結果を見ると、腰の引けた二期目のオバマ政権に対して、安倍首相は日米同盟強化の意味を積極的に説いて、米国の背中を押し、尻を叩いたという印象がある。従来のように、すねたり渋ったりする日本の尻を米国が叩いて奮起させるという状況は、中国の台頭と共に、変化してきている。日本が積極的に動いて、独自の軍事力で国を防衛する体制を作ると同時に、攻めの外交を展開し、主体的に同盟を強化して行かない限り、同盟の機能は十分に発揮させられないのではなかろうか。
米国は「日中の衝突に米国が巻き込まれる恐れがある」との懸念を強めている。そこで首相は中国や韓国との連携に前向きな姿勢を強調し、米側に配慮した。そして尖閣を日本の領土と強調しながらも、冷静に対応する考えを示した。
こういう配慮の中で、同時に開かれた岸田文雄外相との外相会談でも、ケリー国務長官は尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲にあるとする米政府の「揺るぎない立場」を確認した。これは、オバマ政権としては、最大限の日本への支援ということだろう。
「首相が22日、米国の有力シンクタンク、戦略国際問題研究所で「日本は戻ってきた」と題して講演したのも、「日本は本来の同盟国の姿に立ち戻った」と強調する狙いがあった。」(23日 産経)。
さらに、首相はここでの質疑で「米国にこれをやってくださいということはない。尖閣は私たちの力で守る」と述べ、米国を巻き込む事態は招かない考えを示唆した(24日 毎日。
もちろんこれは米国が日本を助けなくても良いということではないし、実際米国はそれなりのことをするだろう。これは、日本はまずは自らの力で尖閣を守り抜く覚悟を固めるべきであり、それが米国のより強力な支援につながるだろうということであろうし、そのことを首相は表明したものと思われる。
ともあれ、米国の姿勢に若干の逡巡はあるにせよ、今回の日米首脳会談は、同盟の完全復活であり、この体制に対する自信の宣言であった。このことは、日本への領土的野心をむきだしにする中韓露3国に対する強力な牽制、抑止力となるはずである。同時に、アジア太平洋地域における軍事的、経済的覇権の拡大を狙う中国を牽制する上で、大きな成果となった。とにかくこれからが本番となる。日本が主体的に率先して迅速に行動することが求められているだろう。
《戦略性_「日米中 正三角形論」は完全に破綻した! 国益とパワーバランスの正確な認識こそ現実的な戦略の基礎だ》
首相は「同盟の信頼と強い絆が完全に復活した」と宣言し、大統領は「日米同盟はアジア太平洋の安全の中心的基盤で、米国は強力かつ頼れるパートナーだ」と応じた。以前ほどではないにせよ、今も世界最強の国家は米国であり、その米国と強固な同盟関係を維持することが、領土ほかへの野心を持つ国に対する抑止力になる。
「民主党政権は少なくとも当初はこの「常識」を理解しておらず、米国と中国を同列に並べた「日米中正三角形論」や米国排除を志向した東アジア共同体構想をぶち上げ、米国をはじめ世界が高く評価していたテロ対策であるインド洋での給油活動を取りやめるなど、日米関係を壊し続けた。 その結果、日米は離反したとみたロシア首脳は北方領土に、韓国大統領は島根県竹島にそれぞれ不法上陸し、中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返す。」(23日 産経)。
ここ3年間の経緯からもわかるように、中国、韓国、ロシアは、信義ではなく、パワーバランスを見ながら自国の利益の追求を行う国であり、日本のパワーが弱まったとみると、直ちに侵略行動に出てくるのである。「日米中 正三角形論」は完全に破綻し、小泉元首相が唱えた、「日米関係が良好であればあるほど中国、韓国、アジア諸国、世界各国と良好な関係を築ける」ということの正しさが、現実に改めて証明されたわけである。これは、対米追随とか、アジア軽視ということを意味せず、これらを重視するなら、その前提としての日米同盟の強化が不可欠だということである。これは、没主体的な対米追随どころか、利害を共にする米国と共通の戦略をもって、危険な野心を持つ近隣諸国をパワーで牽制し、蛮行を抑え込むという主体的で現実的な方策なのである。
「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を重視するのも、首相がもともと自由貿易論者であることや日本の経済的利益を考えての理由ばかりではない。「世界の成長センター」(首相)となっていくアジア太平洋地域の経済秩序構築をめぐる米中の主導権争いが激しさを増す中、日本としてどちらの「勝者」が望ましいのか。日本の国益を考えたとき、その答えは同じ自由主義経済をとる「米国」となるはずだ。 首相がこうした冷徹な判断に基づき、経済面においても日米同盟の強化を目指していることは、想像に難くない。」(23日 産経)。
《主体性は毅然たる外交を生み、外交を成功させる源だ》
最大の焦点であるTPP交渉では、TPPの関税撤廃で事実上の「例外」を認めさせる共同声明文書という「期待以上の成果」(自民党幹部)をあげることができた。これも、首相が毅然たる態度で日本の立場を主張して、理解を求めたことが功を奏したと言える。日本は交渉参加へ向け大きく踏み出した。
大統領は、日米双方が経済成長を遂げていく必要があるとの文脈でTPPの話を持ち出し、首相の返答を待った。
「首相の言葉は明快だった。 「先の衆院選で、自民党は聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対するという公約を掲げ、政権に復帰した。国民との約束は極めて重要だ」。 大統領もすぐさま反応した。TPPに関する両首脳の合意は文書にとりまとめる方向だったが、実効性が薄い「覚書」や「報道資料」となる可能性も残っていた。しかし、安倍首相の主張を聞いた上で、大統領自らが「共同声明」という言葉を持ち出した。
両首脳のやりとりを固唾をのんで見守っていた同行筋は「二人の話はかみ合っていた。『日本にもいろいろ事情があって…』といった弁解調だったら、大統領は受け入れなかっただろう」と語る。」(24日 産経)。
日本がTPP交渉に参加する意志はあること、そのための条件、要求が何であるのかをはっきり示して、もしこれが容れられないなら日本は撤退せざるを得ないということを率直に示したがための結果であったと言えるだろう。「アベノミクスが効いたため、日本にTPPに入ってもらわなくてはいけないという動きがあった」(23日 世耕弘成官房副長官)と言うことらしいから、これが、今回の結果を後押ししたことになる。しかしアベノミクスも、安倍政権の独自の取り組みであるので、結局安倍政権の主体的な政策とその取組が外交を下から支え、今回の展開を見せたということだろう。
従来の日本外交は、「すり寄り」の外交であって、すり寄ればすり寄るほど、相手に不安を与えるか、もしくは足元を見られ馬鹿にされると同時に相手を付け上がらせるかのいずれかであった。理由もなくすり寄るということはあり得ないので、明確な説明もないまますり寄られれば誰でもその真意を疑い、薄気味悪く感じるのは自然なことである。また、日本にはすり寄るしか手立て、知恵がない、あるいはなにがしかの弱みがあるに違いないと喝破(誤解、下司の勘繰り?!)され、姑息で卑屈な国だと馬鹿にされて、これが相手を付け上がらせる原因となってきたのである。これまでの日本は、すり寄ればすり寄るほど相手は喜び、こちらを信用してくれるだろうと思ってきたようであるが、実際は全くの逆効果を招いてきた。このことは、これまでの対中、対韓外交の失敗から明らかであるだろう。
外交は、強固な主体性の上に成り立つ冷徹な駆け引きであり、知恵と度胸と決断略の勝負なのだ。いつでも今回のような成功が保障されているわけではないが、いずれにせよこれは外交の基本であるので、これが無ければ外交とは言えないだろ。中国、韓国に対しても、今回の経験を生かした外交を進めてもらいたいものだ。特に、韓国については、適宜突き放すことをしないと、付け上がる一方になるだろう。
《主体性を持ち、積極姿勢でもって、米国の背中を押す外交が重要。もう米国に甘えられる情勢ではない!》
一般に米国の民主党政権は内向きの傾向が強いと言われる。まして深刻な財政危機にある現状において、歴代政権以上に内向き志向を持ったオバマ政権が、尖閣や竹島などの日本の問題にできることなら関わりたくないという本音を持っているだろうことは意外なこととは言えないだろう。見方を変えれば尖閣はそれほど一発触発の危うい状態にあるとも言える。米側には重大な衝突に発展しないように、日中双方に自制を求める姿勢も強い。これを裏付けるかのように、中国国営通信の新華社は今回の結果を次のように報じている。「記事は、安倍氏が日米同盟関係強化で中国の台頭を抑えることを狙い、オバマ氏の支持を取り付けようともくろんだが、「米国にとって中国の戦略的重要性は高まっており、米国の核心的利益ではない釣魚島(尖閣)問題で軽々しく中国と対決することはない」と指摘した。 新華社は別の分析記事で、米国は日中間の軍事衝突に巻き込まれることを望んでおらず、日中関係が緊張している中での今回の日米首脳会談を極力、目立たないようにしたようだとの専門家の見方を伝えた。」(23日 産経)。
これは、今回の日米首脳会談の成功をやっかむものであり、日米の緊密化を阻止し、両国間にくさびを打ちたいという中国の希望の表明であるが、他方では一面の真理を突いているようにも思える。ケリー新国務長官は親中的考えの持ち主であるとも見られてきたし、新国防長官に予定されているヘーゲル氏も日米同盟の強化にさほど積極的ではないようにも言われている。このようなオバマ政権の中で、先に退任したクリントン国務長官、パネッタ国防長官、キャンベル国務次官補が、日本の民主党の度重なる迷走にも関わらず、一貫して日本重視、対中強硬姿勢をとってくれたのは、日本にとってありがたく、かつ幸運なことであったと言える。しかし、二期目のオバマ政権ではここまでの幸運は期待できず、その分は日本が補わなければならないだろう。
今回の結果を見ると、腰の引けた二期目のオバマ政権に対して、安倍首相は日米同盟強化の意味を積極的に説いて、米国の背中を押し、尻を叩いたという印象がある。従来のように、すねたり渋ったりする日本の尻を米国が叩いて奮起させるという状況は、中国の台頭と共に、変化してきている。日本が積極的に動いて、独自の軍事力で国を防衛する体制を作ると同時に、攻めの外交を展開し、主体的に同盟を強化して行かない限り、同盟の機能は十分に発揮させられないのではなかろうか。
米国は「日中の衝突に米国が巻き込まれる恐れがある」との懸念を強めている。そこで首相は中国や韓国との連携に前向きな姿勢を強調し、米側に配慮した。そして尖閣を日本の領土と強調しながらも、冷静に対応する考えを示した。
こういう配慮の中で、同時に開かれた岸田文雄外相との外相会談でも、ケリー国務長官は尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲にあるとする米政府の「揺るぎない立場」を確認した。これは、オバマ政権としては、最大限の日本への支援ということだろう。
「首相が22日、米国の有力シンクタンク、戦略国際問題研究所で「日本は戻ってきた」と題して講演したのも、「日本は本来の同盟国の姿に立ち戻った」と強調する狙いがあった。」(23日 産経)。
さらに、首相はここでの質疑で「米国にこれをやってくださいということはない。尖閣は私たちの力で守る」と述べ、米国を巻き込む事態は招かない考えを示唆した(24日 毎日。
もちろんこれは米国が日本を助けなくても良いということではないし、実際米国はそれなりのことをするだろう。これは、日本はまずは自らの力で尖閣を守り抜く覚悟を固めるべきであり、それが米国のより強力な支援につながるだろうということであろうし、そのことを首相は表明したものと思われる。
ともあれ、米国の姿勢に若干の逡巡はあるにせよ、今回の日米首脳会談は、同盟の完全復活であり、この体制に対する自信の宣言であった。このことは、日本への領土的野心をむきだしにする中韓露3国に対する強力な牽制、抑止力となるはずである。同時に、アジア太平洋地域における軍事的、経済的覇権の拡大を狙う中国を牽制する上で、大きな成果となった。とにかくこれからが本番となる。日本が主体的に率先して迅速に行動することが求められているだろう。
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