2013年12月28日
これは、1996年の日米合意以来、様々な曲折を経てきた米軍普天間飛行場の移設問題が、実現に向けて確実に前進したということである。
「沖縄県の仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事は27日午後、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請について「基準に適合していると判断し、承認することとした」と表明した。 政府の沖縄振興策に関して「安倍内閣の沖縄に対する思いが、かつての、どの内閣にも増して強いと感じた」とも述べた。」(27日 産経)。
この問題は、日米両政府、沖縄県、名護市、米軍、そして野党など多くの関係者が様々な事情を抱えて絡み合う、複雑な連立方程式である。これら関係者がこの困難さを乗り越えて、今回の「辺野古移設」承認に辿りついたことには大きな意義がある。日本の安全保障環境が著しく悪化する中、これが日米の同盟関係をより強靱で持続可能なものにし、沖縄の基地負担軽減、沖縄経済の振興にも大きな貢献をすることになるだろう。この過程は、困難な国家的問題を「オールジャパン」で解決していくことの一つの重要なパターン、モデルを提供してくれたと言えるだろう。この問題に限らず、日本には、震災復興、デフレ脱却、財政再建、経済の活性化、少子高齢化、社会保障の立て直し、原発を柱とするエネルギー問題、農業の改革など、多くの課題があるが、今回の前進を一つの重要参考モデルとして、ぜひとも「オールジャパン」の体制で乗り切っていきたいものである。ここでは、普天間基地移設問題についての経緯、意義、今後の課題などは議論せず、とにかく今回の取り組みが「オールジャパン」体制確立に向けての明るい兆しになっていることを具体的に見てみたいと思う。
《知事の決断を評価》
「知事は「県民の意思に関係なく国際情勢は緊張している」として「沖縄は一定の役割を果たさなければならない」と語った。同時に「過重な基地負担は不公平」とも訴えた。 沖縄県民を含む国民全体で、安全保障の重要性をしっかりと受け止めることが欠かせない。」(28日 産経社説)。 「仲井真知事にとっては、まさに苦渋の決断だったろう。 当初は、辺野古移設を条件付きで支持していたが、民主党の鳩山首相が「最低でも県外移設」と県民の期待を無責任に煽(あお)ったため、2期目の知事選公約に「県外移設」を掲げざるを得なくなった。 しかし、埋め立てを承認しなければ、普天間飛行場の危険な現状が長期間にわたって固定化されてしまうのは確実だ。…略… 沖縄の米軍基地問題では常に、基地の抜本的な撤去を目指すか、段階的な負担軽減を進めるか、という方法論の対立がある。知事が着実な負担軽減を優先し、現実的選択をしたことを評価したい。…略… 知事の決断は、辺野古移設反対派から批判されているが、将来は高く評価されるはずだ。」(28日 読売社説)。
《不退転の決意を示した安倍政権》
首相は「出来ることはなんでもやる」と表明している。「知事の判断を後押しした安倍政権の努力も高く評価したい。基地負担の軽減策として、普天間飛行場や牧港補給地区の返還期間の短縮や訓練移転、米軍基地内の環境調査に関する新たな日米協定の協議開始などを示した。…略… 沖縄振興策でも、安倍首相は、来年度予算の積み増しに加え、2021年度まで毎年3000億円台の予算確保を約束するなど、最大限の配慮を示した。県北部振興策にも毎年50億円を計上する。 厳しい財政事情の中、異例の優遇措置だが、難局を打開するためにはやむを得まい。…略… 安倍政権が沖縄県の承認を得られたのは、不承認時の政権への打撃というリスクも覚悟し、一貫してぶれずに、仲井真知事との信頼関係を築いたことが大きい。だからこそ、知事も県民からの批判というリスクを取ったのだろう。」(同_読売社説)。
《自民党本部、沖縄県連の努力を評価》
つい先ごろまで、自民沖縄県連は「普天間 県外移設」を主張して、党本部方針とのねじれが生じていたのであるが、自民党石破幹事長、高村副総裁、官邸の菅官房長官らによる、沖縄県連そして地元選出の国会議員への説得が功を奏して、自民県連の方針転換が実現した。党と官邸による説得のよく練られた戦略的手順とその実行、そして沖縄県連と翁長県連会長の苦渋の英断には敬意を表したい。
《島袋前市長の貢献は大きい》
それにしても、今回の仲井間知事の承認に大きな貢献をしたものは、来月の宜野湾市長選に、「基地移転推進派」候補として名乗りを上げた前市長の島袋氏の立候補表明であったように思う。氏は、保守系候補として自民が擁立していた末松前県議が、「辺野古移設」を明確にせず、基地移設を「仲井間知事が承認すれば、自分も移設を容認する」などと、あいまいでわかりにくい、腰の引けた対応に業を煮やし、保守系が分裂することを承知の上で、立候補を表明した。末松氏のような腰の引けた態度では、たとえ当選しても基地移設の難事業は到底実現できないと見越しての決断であったと思われる。これに慌てたのが自民党本部であり、沖縄県連であった。島袋氏の立候補表明によって、動きの鈍かった自民党が‘喝’を容れられたことになり、末松氏の政策の転換と、「移転推進」派の結束を固めることにつながった。
「来年1月19日投開票の沖縄県名護市長選に出馬表明していた島袋吉和前市長(67)は25日夜、立候補を見送ることを明らかにした。末松文信前県議(65)と同市内で会談し、末松氏からの候補者一本化要請を受け入れた。 末松氏は会談で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設を「推進する」と明言した。これまでの「移設容認」という立場から「移設推進」に踏み込むことで、「推進」を掲げてきた島袋氏に立候補辞退を求めた。これを受け、島袋氏は支持者とも協議し、立候補を見送ることを決めた。」(25日 産経)。
島袋氏の立候補という‘奇策・妙策’が無ければ、自民沖縄県連の政策転換が進んだかどうか、「推進」派の結束ができたかどうかは疑わしく、この意味で島袋氏は、今回の承認の実現の立役者の一人であったと言える。氏の政治姿勢、その能力を高く評価したい。氏は末松氏の選対本部長になるとのことであり、勝利を期待するものである。
《岩国基地他、全国自治体への訓練移転協力の広がりを歓迎》
知事は政府に対し、普天間の24機のオスプレイの半数程度を県外に配備し、さらに5年以内に普天間の運用を停止するよう求めていた。首相は、オスプレイの訓練の半分を県外に移すと言っている。移転先の同意を得るのは容易ではない。だが、山口県岩国市は岩国基地に、普天間の空中給油機を受け入れると決めた。この他にも、オスプレイの一時的訓練や、公開展示などに応じる自治体も出始めている。こうした自治体の動きを評価すると共に、これが更に広がり、本格化するように期待したい。
《民主、維新の積極・建設的姿勢を歓迎! 公明は責任与党として、「末松支持」を鮮明にすべきであり、そうでなければ「与党」の名に値しないことを肝に銘じるべきだ!》
「(仲井真知事が辺野古への移設を承認したことに)、民主党からは評価する声があがった。
海江田万里代表は27日、国会内で記者団に「知事の判断は大変重い。その思いをしっかりと受け止めて、沖縄の負担軽減、普天間飛行場の早期使用停止に向けて後押しをしたい」と述べた。岡田克也前副総理は「大変な中で、重い決断をしたと評価している。米国との関係、沖縄のために政府もしっかりと努力してほしい」と語った。大畠章宏幹事長も「普天間飛行場の固定化を避けるには辺野古移設が有効だ」と評価する考えを表明。 日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長も国会内で記者団に「一つの方向性が見えたことは大変よかった。野党だが協力したい」と述べた。」(27日 産経)。
何をやっても、煮え切らない民主党が、今回は、かなり積極的で建設的な立場に立った発言をしていることは歓迎したい。
公明党は、党本部は辺野古移設方針であるが、地元の沖縄県連は「県外移設」を主張しており、いまだ「ねじれ」のままである。来月の宜野湾市長選では、公明党が末松支持に廻ることが、推進派が勝つ鍵とされている。辺野古移設の問題は、普天間が固定化するかどうか、沖縄の経済や未来がどうなるか、更には日本の主権、領土を守れるかどうか、アジアの平和を守れるかどうかの問題に大きく影響するものである。公明党の動きは非常に重要であり、国政に責任を持つ与党として、ぜひとも末松氏の支持に廻るよう強くお願いしておきたい。
《沖縄、盛り上がらない反対運動_ 県庁集結は約10人! 朝日の主張は国を分裂させ、国防を無力化するものだ!》
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾=ぎのわん=市)の名護市辺野古への移設に反対するグループ約10人は27日午前、沖縄県庁の1階ロビーで反対演説を行った。ただ、通行人が足を止めることもなく、反対運動は盛り上がっていない。反対派グループは拡声器を使って「知事は辞めろ」「県民を裏切る行為だ」などと仲井真氏を批判。政府による辺野古埋め立て申請の承認撤回を呼びかけ、メディアの注目は集めた。」(27日 産経)。
現在の、中韓北からの日本の国家主権や領土侵略行動の激化と、それに対して安倍政権が毅然とした反撃行動を行っている状況のもとでは、「反日」的な沖縄基地撤去要求運動も、今回の承認への反対も勢いを欠いたものにならざるを得ないようだ。しかし、彼らは、見えないところで陰湿に反撃の準備をしているだろう。その一例が朝日新聞の主張であり、今回の件を次のように社説で論じている。
「承認を得たらこちらのもの。抵抗する市民を排除して工事を進めればいい――。そんな発想が政府側にあるとすれば、すぐ捨てなければならない。県民の反発を強め、今後の数々のハードルを高くするだけだろう。…略… 知事の判断にも、首相の回答にも、沖縄の思いは複雑だ。 振興策への歓迎。負担軽減策への落胆。札束でほおをたたいて基地負担を我慢せよと迫るのか、という反発もある。 沖縄の内部も、本土と沖縄の間も、分断が深まったようにみえる。近年の沖縄では「差別」という言葉が頻繁に使われる。…略… 基地の負担と歴史を重ね、差別だと訴える声もしばしば耳にする。王国をとりつぶされた琉球処分、本土防衛の「捨て石」にされた沖縄戦、独立する本土から切り離されて米国に「質入れ」された経緯である。 それは、本土に暮らす者も等しく考えるべき問題だ。 日本は戦後、憲法9条の下で平和国家の地位を築いた。ただし、それは日米安保条約による米軍の駐留と沖縄の負担の上になりたつ平和だ。 本土の人々はその事実を忘れがちだ。だが、負担を強いられる側は忘れない。意識のギャップが広がれば、何かのきっかけで不満が爆発しかねない。」(28日 朝日社説)。
なんと陰湿でおどろおどろしい内容だろうか。沖縄の人と本土の人は、全く相いれないものであり、両者は本質的に対立・抗争せざるを得ない宿命にあるとでも言わんばかりの書き方だ。ここでは、何百年にもわたる交流と友好、そして融和の努力とその成果が全く無視されている。「差別」、「捨石」、「質入れ」などといった視点で見ている人がいないとは言えないだろうが、大部分はそうではないはずだ。これは沖縄の人、そして本土の人のこれまでの問題解決に向けての懸命の努力を侮辱する見方ではないか?!
さすがの朝日も、今回のような、さまざまな形で沖縄にメリットをもたらす決断を正面切って批判するわけにもいかなかったらしい。そこで例によって、支持しているのか反対なのかを玉虫色にし、相手(知事、政府)のやることについて、「…しかし…」の主旨でひたすらケチをつけ、非現実的な負のイメージ(たとえば、「差別」、「捨石」、「質入れ」など)を想起させ、国民の不信感と不安感を煽り、両者を離反させることによって、この問題での混乱のネタを仕込んでおこうとの意図が読み取れる。そもそも朝日には「国家」や「国防」についての概念、意思がないのであり、このことは次の一説からもわかる。「同盟に不可欠なのは、集団的自衛権の行使より何より、駐留米軍への地元の人々の理解である。」(同 社説)。「地元の理解」が重要であることは論を待たないが、集団的自衛権はどうでもよいと言わんばかりの情緒的な内容には大きな違和感がある。集団的自衛権は、防衛のための武力をどう行使するかという問題だから一般には基地外の問題であり、基地問題とは直接の関係がない。両者は次元も分野も違う問題であり、それゆえ両立は可能であり、また両立させねばならない。にも関わらず、それを強引に同列に並べて択一を迫り、集団的自衛権の問題を実質的に切り捨てている。挙句の果ては、いつ「不満が爆発」するかわからないとして、テロリストの脅迫まがいのことまで書いて、不安感、不信感の醸成に努めている。これは悪意のレトリック、詭弁、扇動である。真の国防に何の関心もなく、あるのは自社の部数をいかに増やすかという経営上の欲求と、上から目線の主張による自己陶酔だけしかないから、このような脳天気で無責任なことが書けるのだろう。
ともあれ、今回の承認は、辺野古移設の実現に向けての一歩にしか過ぎない。年明けの宜野湾市長選、米国との交渉などまだいくつものハードルを越えねばならない。また、反対派が計画の実現行動に対して理不尽、非合法的な阻止行動に出てくる可能性もある。国民一丸となって、「オールジャパン」での移設推進運動を展開したいものである。
これは、1996年の日米合意以来、様々な曲折を経てきた米軍普天間飛行場の移設問題が、実現に向けて確実に前進したということである。
「沖縄県の仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事は27日午後、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請について「基準に適合していると判断し、承認することとした」と表明した。 政府の沖縄振興策に関して「安倍内閣の沖縄に対する思いが、かつての、どの内閣にも増して強いと感じた」とも述べた。」(27日 産経)。
この問題は、日米両政府、沖縄県、名護市、米軍、そして野党など多くの関係者が様々な事情を抱えて絡み合う、複雑な連立方程式である。これら関係者がこの困難さを乗り越えて、今回の「辺野古移設」承認に辿りついたことには大きな意義がある。日本の安全保障環境が著しく悪化する中、これが日米の同盟関係をより強靱で持続可能なものにし、沖縄の基地負担軽減、沖縄経済の振興にも大きな貢献をすることになるだろう。この過程は、困難な国家的問題を「オールジャパン」で解決していくことの一つの重要なパターン、モデルを提供してくれたと言えるだろう。この問題に限らず、日本には、震災復興、デフレ脱却、財政再建、経済の活性化、少子高齢化、社会保障の立て直し、原発を柱とするエネルギー問題、農業の改革など、多くの課題があるが、今回の前進を一つの重要参考モデルとして、ぜひとも「オールジャパン」の体制で乗り切っていきたいものである。ここでは、普天間基地移設問題についての経緯、意義、今後の課題などは議論せず、とにかく今回の取り組みが「オールジャパン」体制確立に向けての明るい兆しになっていることを具体的に見てみたいと思う。
《知事の決断を評価》
「知事は「県民の意思に関係なく国際情勢は緊張している」として「沖縄は一定の役割を果たさなければならない」と語った。同時に「過重な基地負担は不公平」とも訴えた。 沖縄県民を含む国民全体で、安全保障の重要性をしっかりと受け止めることが欠かせない。」(28日 産経社説)。 「仲井真知事にとっては、まさに苦渋の決断だったろう。 当初は、辺野古移設を条件付きで支持していたが、民主党の鳩山首相が「最低でも県外移設」と県民の期待を無責任に煽(あお)ったため、2期目の知事選公約に「県外移設」を掲げざるを得なくなった。 しかし、埋め立てを承認しなければ、普天間飛行場の危険な現状が長期間にわたって固定化されてしまうのは確実だ。…略… 沖縄の米軍基地問題では常に、基地の抜本的な撤去を目指すか、段階的な負担軽減を進めるか、という方法論の対立がある。知事が着実な負担軽減を優先し、現実的選択をしたことを評価したい。…略… 知事の決断は、辺野古移設反対派から批判されているが、将来は高く評価されるはずだ。」(28日 読売社説)。
《不退転の決意を示した安倍政権》
首相は「出来ることはなんでもやる」と表明している。「知事の判断を後押しした安倍政権の努力も高く評価したい。基地負担の軽減策として、普天間飛行場や牧港補給地区の返還期間の短縮や訓練移転、米軍基地内の環境調査に関する新たな日米協定の協議開始などを示した。…略… 沖縄振興策でも、安倍首相は、来年度予算の積み増しに加え、2021年度まで毎年3000億円台の予算確保を約束するなど、最大限の配慮を示した。県北部振興策にも毎年50億円を計上する。 厳しい財政事情の中、異例の優遇措置だが、難局を打開するためにはやむを得まい。…略… 安倍政権が沖縄県の承認を得られたのは、不承認時の政権への打撃というリスクも覚悟し、一貫してぶれずに、仲井真知事との信頼関係を築いたことが大きい。だからこそ、知事も県民からの批判というリスクを取ったのだろう。」(同_読売社説)。
《自民党本部、沖縄県連の努力を評価》
つい先ごろまで、自民沖縄県連は「普天間 県外移設」を主張して、党本部方針とのねじれが生じていたのであるが、自民党石破幹事長、高村副総裁、官邸の菅官房長官らによる、沖縄県連そして地元選出の国会議員への説得が功を奏して、自民県連の方針転換が実現した。党と官邸による説得のよく練られた戦略的手順とその実行、そして沖縄県連と翁長県連会長の苦渋の英断には敬意を表したい。
《島袋前市長の貢献は大きい》
それにしても、今回の仲井間知事の承認に大きな貢献をしたものは、来月の宜野湾市長選に、「基地移転推進派」候補として名乗りを上げた前市長の島袋氏の立候補表明であったように思う。氏は、保守系候補として自民が擁立していた末松前県議が、「辺野古移設」を明確にせず、基地移設を「仲井間知事が承認すれば、自分も移設を容認する」などと、あいまいでわかりにくい、腰の引けた対応に業を煮やし、保守系が分裂することを承知の上で、立候補を表明した。末松氏のような腰の引けた態度では、たとえ当選しても基地移設の難事業は到底実現できないと見越しての決断であったと思われる。これに慌てたのが自民党本部であり、沖縄県連であった。島袋氏の立候補表明によって、動きの鈍かった自民党が‘喝’を容れられたことになり、末松氏の政策の転換と、「移転推進」派の結束を固めることにつながった。
「来年1月19日投開票の沖縄県名護市長選に出馬表明していた島袋吉和前市長(67)は25日夜、立候補を見送ることを明らかにした。末松文信前県議(65)と同市内で会談し、末松氏からの候補者一本化要請を受け入れた。 末松氏は会談で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設を「推進する」と明言した。これまでの「移設容認」という立場から「移設推進」に踏み込むことで、「推進」を掲げてきた島袋氏に立候補辞退を求めた。これを受け、島袋氏は支持者とも協議し、立候補を見送ることを決めた。」(25日 産経)。
島袋氏の立候補という‘奇策・妙策’が無ければ、自民沖縄県連の政策転換が進んだかどうか、「推進」派の結束ができたかどうかは疑わしく、この意味で島袋氏は、今回の承認の実現の立役者の一人であったと言える。氏の政治姿勢、その能力を高く評価したい。氏は末松氏の選対本部長になるとのことであり、勝利を期待するものである。
《岩国基地他、全国自治体への訓練移転協力の広がりを歓迎》
知事は政府に対し、普天間の24機のオスプレイの半数程度を県外に配備し、さらに5年以内に普天間の運用を停止するよう求めていた。首相は、オスプレイの訓練の半分を県外に移すと言っている。移転先の同意を得るのは容易ではない。だが、山口県岩国市は岩国基地に、普天間の空中給油機を受け入れると決めた。この他にも、オスプレイの一時的訓練や、公開展示などに応じる自治体も出始めている。こうした自治体の動きを評価すると共に、これが更に広がり、本格化するように期待したい。
《民主、維新の積極・建設的姿勢を歓迎! 公明は責任与党として、「末松支持」を鮮明にすべきであり、そうでなければ「与党」の名に値しないことを肝に銘じるべきだ!》
「(仲井真知事が辺野古への移設を承認したことに)、民主党からは評価する声があがった。
海江田万里代表は27日、国会内で記者団に「知事の判断は大変重い。その思いをしっかりと受け止めて、沖縄の負担軽減、普天間飛行場の早期使用停止に向けて後押しをしたい」と述べた。岡田克也前副総理は「大変な中で、重い決断をしたと評価している。米国との関係、沖縄のために政府もしっかりと努力してほしい」と語った。大畠章宏幹事長も「普天間飛行場の固定化を避けるには辺野古移設が有効だ」と評価する考えを表明。 日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長も国会内で記者団に「一つの方向性が見えたことは大変よかった。野党だが協力したい」と述べた。」(27日 産経)。
何をやっても、煮え切らない民主党が、今回は、かなり積極的で建設的な立場に立った発言をしていることは歓迎したい。
公明党は、党本部は辺野古移設方針であるが、地元の沖縄県連は「県外移設」を主張しており、いまだ「ねじれ」のままである。来月の宜野湾市長選では、公明党が末松支持に廻ることが、推進派が勝つ鍵とされている。辺野古移設の問題は、普天間が固定化するかどうか、沖縄の経済や未来がどうなるか、更には日本の主権、領土を守れるかどうか、アジアの平和を守れるかどうかの問題に大きく影響するものである。公明党の動きは非常に重要であり、国政に責任を持つ与党として、ぜひとも末松氏の支持に廻るよう強くお願いしておきたい。
《沖縄、盛り上がらない反対運動_ 県庁集結は約10人! 朝日の主張は国を分裂させ、国防を無力化するものだ!》
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾=ぎのわん=市)の名護市辺野古への移設に反対するグループ約10人は27日午前、沖縄県庁の1階ロビーで反対演説を行った。ただ、通行人が足を止めることもなく、反対運動は盛り上がっていない。反対派グループは拡声器を使って「知事は辞めろ」「県民を裏切る行為だ」などと仲井真氏を批判。政府による辺野古埋め立て申請の承認撤回を呼びかけ、メディアの注目は集めた。」(27日 産経)。
現在の、中韓北からの日本の国家主権や領土侵略行動の激化と、それに対して安倍政権が毅然とした反撃行動を行っている状況のもとでは、「反日」的な沖縄基地撤去要求運動も、今回の承認への反対も勢いを欠いたものにならざるを得ないようだ。しかし、彼らは、見えないところで陰湿に反撃の準備をしているだろう。その一例が朝日新聞の主張であり、今回の件を次のように社説で論じている。
「承認を得たらこちらのもの。抵抗する市民を排除して工事を進めればいい――。そんな発想が政府側にあるとすれば、すぐ捨てなければならない。県民の反発を強め、今後の数々のハードルを高くするだけだろう。…略… 知事の判断にも、首相の回答にも、沖縄の思いは複雑だ。 振興策への歓迎。負担軽減策への落胆。札束でほおをたたいて基地負担を我慢せよと迫るのか、という反発もある。 沖縄の内部も、本土と沖縄の間も、分断が深まったようにみえる。近年の沖縄では「差別」という言葉が頻繁に使われる。…略… 基地の負担と歴史を重ね、差別だと訴える声もしばしば耳にする。王国をとりつぶされた琉球処分、本土防衛の「捨て石」にされた沖縄戦、独立する本土から切り離されて米国に「質入れ」された経緯である。 それは、本土に暮らす者も等しく考えるべき問題だ。 日本は戦後、憲法9条の下で平和国家の地位を築いた。ただし、それは日米安保条約による米軍の駐留と沖縄の負担の上になりたつ平和だ。 本土の人々はその事実を忘れがちだ。だが、負担を強いられる側は忘れない。意識のギャップが広がれば、何かのきっかけで不満が爆発しかねない。」(28日 朝日社説)。
なんと陰湿でおどろおどろしい内容だろうか。沖縄の人と本土の人は、全く相いれないものであり、両者は本質的に対立・抗争せざるを得ない宿命にあるとでも言わんばかりの書き方だ。ここでは、何百年にもわたる交流と友好、そして融和の努力とその成果が全く無視されている。「差別」、「捨石」、「質入れ」などといった視点で見ている人がいないとは言えないだろうが、大部分はそうではないはずだ。これは沖縄の人、そして本土の人のこれまでの問題解決に向けての懸命の努力を侮辱する見方ではないか?!
さすがの朝日も、今回のような、さまざまな形で沖縄にメリットをもたらす決断を正面切って批判するわけにもいかなかったらしい。そこで例によって、支持しているのか反対なのかを玉虫色にし、相手(知事、政府)のやることについて、「…しかし…」の主旨でひたすらケチをつけ、非現実的な負のイメージ(たとえば、「差別」、「捨石」、「質入れ」など)を想起させ、国民の不信感と不安感を煽り、両者を離反させることによって、この問題での混乱のネタを仕込んでおこうとの意図が読み取れる。そもそも朝日には「国家」や「国防」についての概念、意思がないのであり、このことは次の一説からもわかる。「同盟に不可欠なのは、集団的自衛権の行使より何より、駐留米軍への地元の人々の理解である。」(同 社説)。「地元の理解」が重要であることは論を待たないが、集団的自衛権はどうでもよいと言わんばかりの情緒的な内容には大きな違和感がある。集団的自衛権は、防衛のための武力をどう行使するかという問題だから一般には基地外の問題であり、基地問題とは直接の関係がない。両者は次元も分野も違う問題であり、それゆえ両立は可能であり、また両立させねばならない。にも関わらず、それを強引に同列に並べて択一を迫り、集団的自衛権の問題を実質的に切り捨てている。挙句の果ては、いつ「不満が爆発」するかわからないとして、テロリストの脅迫まがいのことまで書いて、不安感、不信感の醸成に努めている。これは悪意のレトリック、詭弁、扇動である。真の国防に何の関心もなく、あるのは自社の部数をいかに増やすかという経営上の欲求と、上から目線の主張による自己陶酔だけしかないから、このような脳天気で無責任なことが書けるのだろう。
ともあれ、今回の承認は、辺野古移設の実現に向けての一歩にしか過ぎない。年明けの宜野湾市長選、米国との交渉などまだいくつものハードルを越えねばならない。また、反対派が計画の実現行動に対して理不尽、非合法的な阻止行動に出てくる可能性もある。国民一丸となって、「オールジャパン」での移設推進運動を展開したいものである。