制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

「安心で信頼できる社会保障制度の確立に向けて」 その4

2009年10月29日 10時09分20秒 | 情報化・IT化
昨日に続き、急激に進む高齢化について考えていきたい(1日あたりのPVが300を超えたので!)。

昨日は、首都圏の高齢者が、わずか後5年で1000万人を超え、4人に1人が「高齢者」となると書いた。こう書くと、大きな「問題」と思えるが、高齢者の多くは元気に暮らしている人たちであり、医療や介護を必要とする人たちは、その一部である。例えば、介護保険の要支援・要介護認定を受けているのは、全体の2割程度。8割近くは「元気高齢者」で、普通に暮らしている人たちである。
4人に1人が高齢者で、その生活を支える人たちを含めると、人口の半数が「高齢者関連」となる。これまでは「高齢者や障害者に配慮して、バリアフリーを進めよう」という考え方であった。それは、高齢者や障害者が、特別な配慮を必要とする「マイノリティ(少数派)」だったからである。しかし、人口の半数を占めるようになると、立場が変わって「マジョリティ(多数派)」となる。

高齢者や障害者が使いやすいもの、暮らしやすい社会こそが「日本の標準=高齢者標準」となる。つまり、将来の日本においては、「高齢者」に選ばれないものは生き残れない。それでは、日本の市場が小さくなってしまうという悲観的な見方ができる一方で、その厳しい市場で鍛えられ、培われた技術や製品は、世界各国で受け容れられる(高齢化のトップランナーのポジションを活かすべき)という楽観的な見方もできる。

例えば、韓国は、日本を上回るスピードで少子高齢化が進んでいる。中国は、「一人っ子政策」のために一気に高齢化する(人口統計をどこまで信用できるかわからないが)。中国の人口に高齢化率を掛け合わせると、高齢者の数は、なんと「3億人」となる。「高齢者だけでなく誰にでも優しい=日本の標準」が、アジア諸国で受け容れられる可能性は高い。
アジア諸国は、これからも経済成長を続ける。日本の厳しい消費者に鍛えられた製品やサービスは、アジア諸国に輸出できるはずである。「優しさ」の実現には地道な積み重ねが必要だし、簡単にはコピーできない。しかも、社会のあり方が違う欧米の企業には負ける気がしない。日本経団連は、「介護ロボット」などと小さいことを言わずに、日本の企業をあげて新たな「日本の標準」をつくりあげよう!と提言して欲しい。

なお、「欧米の社会のほうが先進的で、バリアフリー化が進んでいる」というのは、大きな誤解である。
ヨーロッパを訪れたことがある人ならわかってもらえると思うが、200年から300年ほど前の石造りの家は残っているし、石畳の道は狭くて、そこらじゅうに階段がある。しかし、そのような社会インフラの整備状況であっても、なんと車いすで外出できてしまう(しかも1人で)社会なのである。それは、ちょっと困っていると、至るところから手が出てくるし、困っている人がいたら助けること・助けてもらうことが自然だからである。
日本では、家も道路も段差を無くし、困ったときに助けを求めなくても済むようにと外出支援のサービスを利用できるようにした。視覚障害者が困らないようにと、至るところに点字を貼り付けた。このソフトウェアとハードウェアのアプローチの違いが、いずれ独特の「日本の標準」をつくりあげ、世界に受け容れられる土壌となる(ヨーロッパでは奇妙に思われるかもしれないが)と考えられるからである。

例えば、介護保険サービスを提供するための基本情報や提供記録をコンピュータで管理して、必要に応じて共有できるようにして...といったITシステムは、ヨーロッパではほとんどみたことがない。コミュニティが小さいので、そのような仕組みがなくても何が必要なのかわかっているし、人数が少ないのでITシステムの助けは要らない。話し合う時間もたっぷりある。このヨーロッパのモデルをアジア諸国に持ち込もうとすると破綻するだろう。中国の潜在的な市場規模は「3億人」で人口が違い過ぎる。しかも、都市部になると人口は密集しているし、コミュニティのあり方も、宗教観も違うからである。日本のモデルのほうが親和性が高そうである。


《追記》
10月19日~25日の視聴率トップ(関東地区)は、なんと「サザエさん」の21.7%、「笑点」と「天地人」が20%台で続く。日本の社会は大きく変わりつつある。