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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

第3回ナショナルミニマム研究会が開催される

2010年01月21日 10時06分13秒 | ベーシックインカム
先週末に、第3回ナショナルミニマム研究会が開催されていたようである。
これまでと同様、長妻大臣を囲んでの1時間程度の研究会。配布資料は、以下のURLで公開されている。

第3回ナショナルミニマム研究会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/s0115-10.html

配布資料から、どのような議論がなされたのかを推測してみたい。
今回は、ナショナルミニマムをどう考えるかについて。「貧困社会への処方箋 ―新たなセーフティネットの構築―」と題して、委員からの発表があった。データによる裏づけがなされているが、これまでも様々な場所で繰り返し語られてきたこと。しかし、4部構成の最後の「政策提言」には、現政権の考え方が大きく取り入れられているので、ぜひともご覧いただきたい。
なかでも「生活保護への負担軽減」への取り組みが急がれるだろう。具体的には、国と地方の役割分担と、現物給付部分とケースワーク(生活支援サービス)部分の切り分け、ケースワーカーの専門性の確立と向上、ハローワークと福祉事務所の連携などの政策に展開されている。

昨年の11月の産経新聞の記事だが、生活保護の申請の急増に対応するために、大阪市が100名あまりの任期付き職員を募集している(1月頃と書かれているので、そろそろ募集がかかっているかもしれない)。大阪市の被保護世帯は、10万世帯を突破し、申請件数は、前年同月比で1.9倍。大阪市の配置基準に照らすと、昨年9月現在で、172人のケースワーカーが不足しているとのこと。正規職員の採用と別枠なので、福祉の現場に配置される職員は相当な数になる。逆にいえば、それだけの体制をとらないと、生活保護制度が機能しない状況だということである。

生活保護10万世帯!大阪市、足りぬケースワーカー100人超を募集
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/091130/lcl0911301338001-n1.htm

今さらだが、任期付き職員としてケースワーカーを配置するぐらいならば、社会福祉士会に協力を求めてはいかがだろうか。社会福祉士が「社会福祉士事務所」を立ち上げ、大阪市がケースワーク部分を委託すればよい。
社会福祉士の資格は、持っているからといって社会的に何ら有利になることがない。「士業」の一つでありながら、弁理士や弁護士、建築士のように事務所を立ち上げてやっていけるだけの専門性が社会的に認められているとは思えない。
それならば、行政職員ができることと、社会福祉士でなければできないことを切り分け、社会福祉士が生活支援サービスの提供を集中して担うことで、生活保護のケースワーカーとしての専門性の確立と向上が期待できる。

「政策提言」では、「生活保護への負担軽減」に加えて、「最低所得保障体系の立て直し」として、生活扶助基準・給付設計の見直し、最低賃金の引き上げや住宅手当、給付付き税額控除、最低保障年金の導入、失業扶助制度の導入、非典型労働者向け給付、「社会保険のアクセス保障」として、雇用保険の適用拡大や応能負担型の社会保険料体系への移行などが挙げられている。

「貧困社会への処方箋」は、いまや公的扶助=生活保護だけでは不十分で、総合的な対策が必要だということなのだろう。
最低賃金の引き上げなどの様々な制度・政策の手直しが必要になることはわかるが、最低賃金を引き上げると、企業の競争力が損なわれるかもしれないし、かえって失業者が増えるかもしれない。「貧困社会の処方箋」の枠を超えた影響が、どこに、どのようなかたちで出てくるのかを考えること、それらを踏まえた上で、制度・政策を適切に組み合わせて実行に移さなければならない。

派遣労働者も企業も混乱必至
規制強化狙う派遣法改正の愚
http://diamond.jp/series/closeup/10_01_16_001/