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レセプトオンライン請求の「原則化」、現実路線に

2009年10月05日 10時56分11秒 | 情報化・IT化
民主党のマニフェストにおいて、これまで進められてきたレセプトのオンライン請求を「完全義務化」から「原則化」に改める、とされている。
小規模な医療機関(診療所)では、レセプトオンライン化のためにIT投資をしても「元がとれない」として、医師をパソコンに向かわせるぐらいなら「廃業する」と地域住民を人質にとって脅しをかけたから、とも言われている。
今からパソコンの使い方を覚えなければならないのは大変との理由はわからないでもないが、個人的には、そのような医師が最新の医療技術・医療情報を身につけているとは思えず、できれば、そのような医師にはかかりたくない。最新のエビデンスはインターネットを使わないと得られないし、英語で書かれた論文を読み、しっかり吟味できないと最新の医療から取り残される。

レセプトオンライン化について考えるにあたり、社会保障論の研究がいかに実践的でないか、との思いが強くなる。どの教科書をみても支払基金や国保連合会が何をしているかは書かれていないし、これまでいかに非効率なことをしてきたかも論じられていない。レセプトとは何かを正面から詳しく論じている論文も文献もみたことがない(不勉強なだけかもしれないが)。どこかに研究者はいるのだろうか。

レセプトがオンライン化されていないということは、医療機関から審査支払機関(支払基金や国保連合会)にレセプトが紙で提出される、ということである。レセプトの量は膨大になるので、紙のままでは審査できない。そのため、紙のレセプトを全てパンチ入力してデータ化する。基本的なチェックをした後、医師によって誤りがないかを確かめるために全て紙に印刷する(医師がコンピュータの画面を使って審査するのを嫌がるため)。赤鉛筆でチェックされたレセプトは再びパンチ入力され、データ化される。その後、医療機関に返戻したり、医療保険者別に振り分ける。先ほどような医療機関にはデータのままでは渡せないので、再び紙に印刷し、郵送する。このような、紙からデータへ、データから紙への移し変えが何度もなされていたのである。
レセプトオンライン化を完全義務化にし、医師もコンピュータの画面を使って審査するようになれば、審査支払機関の事務は大幅に効率化できる。韓国では、審査支払機関の事務は完全コンピュータ化し、効率化を進めている。日本でもできなくはないし、無駄を無くすためにも後退させることなく取り組み続ける必要がある。

妥協策として、審査支払機関には紙のレセプトをパンチ入力するサービスを残し、その後のプロセスは全てコンピュータ化する。コンピュータを使いたくないという医師(最新の医療情報を得る責任を放棄し、患者の利益を損ねている)は、少しずついなくなっていくだろう。「原則化」により、多少の後退感はあるが、審査支払機関と医療保険者の間のオンライン化と蓄積したデータによる審査は今後も進めていくべきである。