制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

社会保障カードとレセプトオンラインを使って資格の確認を

2009年10月09日 10時15分12秒 | 情報化・IT化
レセプトのオンライン請求が義務化されたため、全国の医療機関などが審査支払機関に接続するための通信回線やパソコンなどを購入することになった。支払基金も国保連合会もレセプトの受付は月に1度。高いものを買わされたけれども、使うのは月に数回。事務効率化の効果があるといわれても、これでは、さすがに元が取れない。
だからというわけではないが、厚生労働省は「社会保障カード」を使ってリアルタイムで医療保険の資格があることを確認してはどうか、と考えたようである。
例えば、普通のサラリーマンをしていれば、会社から健康保険証(被保険者証)を渡されている。辞める時には、健康保険証を返さなければならないが、無くしたなどといって返さなかったとする。そのまま、病院にいっても使えてしまう。レセプトを医療保険者に出しても「うちの被保険者じゃないから払わない」と返戻されるため、病院が損を被らなければならなくなる(医療保険者に被保険者証を回収する義務があるので、医療保険者が損を被るべきだが)。
それならば、社会保障カード(ICカード)に格納されているデータを使って医療保険者に被保険者かを問い合わせよう、そうすれば病院も医療保険者も損をしない。レセプトオンラインネットワークの回線はほとんど使われていないのだから、それで元を取りましょう、という考え方である。

国民=患者をそこまで疑うなら、社会保障カードのデータを使ってレセプトに電子署名してはどうか。レセプトの作成と提出は月に1度。レセプトデータからは、何日の分の請求なのかはわからない。記載する検査の回数を減らしたり増やしたりしても誰にもわからないということである。そのような不正請求をしている医療機関はないと信じたいが、簡単にできてしまうのだから疑いたくもなる。
自己負担分を支払う時には請求データはできているのだから、社会保障カードで電子的に署名する。それが審査支払機関や医療保険者にリアルタイムで届けられるようにすれば、そのような疑いを持たずに済む。

双方にとってフェアなシステムをつくるなら、これぐらいすべきだろう。

ちなみに、社会保障カードの実証事業に投じられる予算は、なんと約24億円(2009年度補正予算(案)には、71億円の枠がある)。
「宙に浮いた年金記録問題」の解決手段の一つとして社会保障カードの構想(住民基本台帳カードの失敗を隠すための新たな構想でもある)が出てきたことを考えると、「ミスター年金」こと、長妻大臣が社会保障カードと国民電子私書箱の構想をそのまま引き継ぐとは思えない。
そのような中で、本当に実証事業のスタートが切られるのか、引き続き注目していきたい。


厚生労働省
「社会保障カード(仮称)の制度設計に向けた検討のための実証事業」の受託者及び実証地域について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/09/h0909-1.html

[PDF] 社会保障カード(仮称)の検討状況について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/epo-box2/dai4/siryou2_1.pdf

平成21年度厚生労働省補正予算(案)の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/09hosei/dl/hosei01.pdf