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税制改正大綱を閣議決定、納税者番号制度が重要テーマに

2009年12月23日 10時02分00秒 | ベーシックインカム
民主党の重点要望を受けて、最後の最後まで調整が続いた税制改正大綱がようやく閣議決定された。
大綱には、扶養控除の一部廃止や特定扶養控除の圧縮など、このブログで取り上げてきたことが盛り込まれ、ようやく「控除から手当へ」の基本的な考え方を実現することができた。ガソリン税の暫定税率廃止の取りやめや1本あたり3.5円のたばこ税の増税(販売価格では1本あたり5円)など、結果的に増税となったが、これで次年度予算の編成に目処が立ったのではないかと思われる。

「家計支援」の公約後退 税制改正大綱を閣議決定
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/business/CO2009122201000569.html

藤井大臣が閣議決定後の記者会見で、今後の税制調査会の重要なテーマの一つとしに納税者番号をあげ、納税の管理だけでなく社会保障の給付から落ちた人を救うことにも利用できる、低所得者などを所得税の減税と給付金を組み合わせて支援する「給付金付き税額控除」を行うためにも必要と述べた。

来年度税制改正大綱を閣議決定―政府
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25714.html

今後4年間の消費税引き上げはないが、財政状況がこれだけ逼迫してくると、消費税を目的税化したうえで、社会保障の財源にあてるために税率を引き上げることは避けられないだろう。問題になりそうなのは、生活に必要なものにまで高い税率の消費税をかけると、低所得層ほど税負担(収入に対する税の割合)が重くなってしまう。社会保障を充実させるために消費税率を引き上げた結果、給付の対象となる人たちの税負担が重くなるようでは何のための税率引き上げかわからなくなってしまう、ということである。
消費税の逆進性を解消するための仕組みには、次の2つがある。ヨーロッパ諸国の仕組みは、食料品など生活に必要なものの税率を軽減することである。この仕組みには、軽減するものとしないものの線引きが難しいこと、事業者の事務負担が重くなること、逆進性の解消にそれほどつながらないことなどの問題があるとされている。もう一つのカナダなどの仕組みは、低所得層に消費税相当分を還付(給付)することである。家計調査などから生活に必要なものにかかる消費税を計算し、その額を所得税から控除する。所得税額が控除額よりも低い低所得層には差額を給付するという「給付付き税額控除」の仕組みそのものである。この仕組みにおいては、国民一人ひとりの所得額を正しく把握する必要があり、かつ事務負担が重くなりすぎないようにしなければならない=納税者番号制度が必要になるという問題がある。

これまでの報道を合わせて読むと、納税者番号の導入で所得を把握できるようになれば、子ども手当などに所得制限を設けることもできるし、逆進性を解消しつつ消費税率を引き上げることもできる。給付付き税額控除の水準を引き上げて生活保護をはじめとする福祉制度を取り込み、一部機能を代替させることもできる。民主党は、このように考えているのではないだろうか。

社説 納税者番号 問題点の洗い出しから(12月21日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/206508.html

納税者番号14年に 税制大綱、消費増税4年間凍結
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091216AT3S1503115122009.html

日経新聞の報道によると、2011年度中に納税者番号制度に関する法律を整備、14年1月からの運用開始を目指すとのこと。消費税率の据え置きは「今後4年間」とされている。その期間が明けると同時に「給付付き税額控除」が始まることになるだろう。