Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 窓絵 山水文 小皿

2021年03月03日 14時33分40秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 窓絵 山水文 小皿」の紹介です。

 これは、平成2年に(今から31年前に)、東京の古美術店から買ってきたものです。

 

表面

 

 

表面の下半分の拡大

 

 

裏面

 

 高台内の「銘款」は、何と書いてあるのか不明ですが、「古人(いにしえびと)」字銘や「金」字銘に通じるものがあります。

 「古人」字銘や「金」字銘を伴う作品は、レベルの高いものが多いですから、この小皿も、平凡ではありますが、レベルの高い作品といえるかもしれません。

 

生 産  地: 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ  イズ : 口径;14.5cm  高さ;2.8cm  底径;8.6cm

 

 

 

 なお、この小皿につきましては、以前、今では止めてしまっているかつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介していますので、次に、それを再掲し、この小皿の紹介とさせていただきます。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー128 古九谷様式染付窓絵山水文小皿(平成20年12月1日登載)

 

 

 平々凡々、何の変哲もない小皿である。

 見込みが山水文で、いかにも平凡を強調している。

 でも、やや平凡さを逸脱させるのは下半分に描かれた墨ハジキの牡丹唐草文であろう。

 ちょっと粋で、ちょっぴり華を感じさせる、心憎いばかりの演出である。

 地味ながら、こんなに粋で瀟洒な小皿を使ったのはどんな人なのだろうか?

 

江戸時代前期      口径:14.5cm   高台径:8.6cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌63 古伊万里との対話(山水文の小皿) (平成20年11月筆)

登場人物
  主 人 (平凡な田舎のサラリーマン)
  初 老 (古九谷様式染付窓絵山水文小皿)

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 すっかり寒さも強まり、主人の家の周辺では、朝がた、霜で真っ白になっている光景が見られるようになってきた。
 このような時には、南側の廊下でゆったりと日向ぼっこでもしながら古伊万里との対話を楽しみたいところである。
 ところが、主人の家の南側の廊下が、経年劣化で、近年、所々、歩くとフワフワとし、危険な状態になってきていた。とてもとても、ゆったりと日向ぼっこなどという状況にはない。
 主人は、そのまま放置しておいて、歩いているうちに床が抜け落ちて怪我でもしては大変と、床の張り替えを思い立った。
 幸い、工務店との話がトントン拍子に進み、貼り替え工事も完了したので、押入れから古伊万里を引っ張り出してきて、新装なった南側の廊下で日向ぼっこをしながら対話をはじめた。

 


 

主人: 床も貼り替えたばかりなので木の香もするし、しかも、床板の下の垂木までも新しく交換しているから、しっかりとし、危険もなくなったので、安心してゆったりと日向ぼっこをしながらお前と対話が出来るよ(^_^)

初老: それはようございましたね。

主人: うん、うん。
 まあ、「衣・食・住」と言うぐらいだから、日常生活では「住」も大きな要素だからね。残り少なくなってきた人生だから、「住」も出来るだけ充実させて、ストレスの少ない余生を送りたいと思っているんだ。
 ところで、お前を見ると「初老」というイメージが浮かぶんだよね。銘「初老」というところかな。

初老: それはどうしてでございましょうか?

主人: そうね~。画面が「山水文」だからかな。「山水」といえば「枯山水」というように「枯」を連想するだろう。だが、全体から見ると完全に「枯」にはなっていない。まだ、ちょっぴり「華」も残っているね。下半分に墨ハジキで牡丹唐草が描かれているからだろうか。それで、「老」ではなく「初老」をイメージするのかな~。

初老: 「初老」というのは何歳の頃からを言うんでしょうか。

主人: もともとは四十歳の異称らしいね。まっ、二十歳を「はたち」と呼ぶのと同じ様なものなのだろう。でも、これは「人生五十年」の時代の話なんだろうね。現今のように、「人生八十年・九十年」の時代には、とてもとても、「四十歳を「初老」なんて呼べないよね。
 それじゃ、現今では、いったい何歳からを「初老」と言うのかは、なかなか難しい問題だけれども、辞書などで見ると、「初老」とは「老人の域に入りかけた年ごろ。」とあるので、行政上の統計なんかでは六十五歳以上を「老人」としているようだから、六十歳くらいを指すんだろうかね。

初老: そうですか。現代においては、その辺が妥当なところかもしれませんね。

主人: それにしても、お前はいいよな~。永遠に「初老」でいられるんだものね。私なんか、もうとっくに老人になり、かの、悪名高き「後期高齢者」の域に着々と向かっているよ(涙)。
 それにしても、お前は平凡だな~。別名「凡夫」というところかな・・・・・。

初老: どうして、そのような平凡なものを買われたんですか・・・・・。

主人: まあね。お前には悪いが、裏話をすると、その時、これぞといって他に何も買うものがなかったので、まあまあなお前を買ったんだよ。平成2年の8月に東京のお店で買ったんだけど、その時は買う気で行ったのに、何も買わずに手ぶらで帰るのもシャクだったんで、可もなく不可もない、平凡なお前を買って連れ帰ったわけだ。
 その時は、お前を特に気に入ったわけではなかったんだが、せっかく東京まで来て手ぶらで帰るのもなんだから、「これでも買うか。」、「これしか買うものがないか。」という、いわば「でもしか購入」の心境で買ったのかな。

初老: そんな気持ちで購入することもあるんですか。でも、そのような気持ちで集めたコレクションは、他の人に感動を与えるようなことはないのではないですか。自分で感動し、是非とも欲しいと思って購入した物は、必ずや他人にも感動を与えるでしょうけれど、自分では何の感動も受けないで購入してきた物が他人に感動を与えるはずがないと思います。そのような収集態度は邪道だと思います。

主人: う~む。これはしたり。「初老」も、いや「凡夫」もなかなか言うね~。
 確かに、鑑賞陶磁器の場合はそうなんだろうな。人は、美術館などで展示されているものを見て感動し、芸術的共感を得て満足するというところに鑑賞陶磁器としての役割があるのだろう。あたかも絵画などと同じようにね。そこには、視覚を通しての鑑賞があるわけだ。いわば純粋鑑賞の世界だね。
 でもね、骨董としての鑑賞陶磁器は、それとはちょっと違うと思うんだよね。こうして、見ているだけではなく、手に持って、触って、その感触を楽しんだり、手取りの重ささえも楽しんだり出来るものね。あれっ、見た目よりは軽いんだ! とか、意外と、見た目よりもズッシリとしているんだな~、とかね。それに、ちょっとした料理を載せれば味覚も楽しめるし、香りだって楽しむことが出来る。また、お前のような山水風景を見ていると、さわやかな風さえも聴くことが出来るじゃないの。更には、こうして、お前と互いに語り合うことさえ出来るんだ!
 骨董にはそういう利点があるね。美術館等で見る鑑賞陶磁器とは違って、単に見るだけじゃないんだ! 五感で楽しむことが出来るんだよ。 

初老: お言葉ですが、やはり、工芸美術品は、徹底的に美しく、欠点もなく、完璧でなければいけないのではないでしょうか。そうでなければ、世界に通用する美の基準には適合しないでしょう。そのような条件を備えていなければ、世界の人々を魅了することは出来ないのではないでしょうか!

主人: それはそうかもしれないな。世界中の人々から愛されるためには、欠点もなく、完璧である必要があるのかもしれない。Aという欠点はA国の人々には愛されないだろうし、Bという欠点はB国の人々に愛されず、Cという欠点はC国の人々に愛されず・・・・・、ということになるだろうからね。
 でもね、私は、骨董好きの日本人だ。ある欠点は、日本人から見れば、むしろ、美点になってしまうこともあるだろう。その分水嶺は「茶の心」かな・・・・・。日本以外の或る国の人々にとっては欠点でも、「茶の心」からみれば、それは、むしろ、美点に見えることもある。
 お前は、平々凡々、何の変哲もない小皿だ。「俺は芸術だ!」なんていう主張もしていない。見ている私だって、そんなことは感じないから、見ていても疲れを感じないね。えてして芸術作品は「俺は芸術だ!」なんて主張しているから、見る方も興奮して疲れを感じるものだよ。

初老: そうですか。そんな見方もあるんですね。

主人: こうして、のんびりと、日向ぼっこをしながら語り合えるなんて、なんて幸せなことなんだろうと思うよ。これぞ骨董だろう!

初老: はい、わかりました。肩の力を抜いて、ゆったりとした日々を送りたいと思います。

主人: そうだ! それが骨董だ!! 骨董万歳だ!!!


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2 コメント

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遅生さんへ (Dr.K)
2021-03-03 18:21:49
お褒めいただきありがとうございます(^-^*)

これ、平凡でつまらないな~と思っていたんですが、今日、試しに、墨はじき部分の拡大写真を撮っていて、私も、「おっ!」と思いました。
自分の持ち物を褒めるのもなんですが、「あれっ、これ、意外と良いじゃないの!」と思いました。
この、墨はじきの部分は、非凡ですよね(^_^)

それに気付くのは流石ですね\(^O^)/
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Dr.Kさんへ (遅生)
2021-03-03 15:02:14
「肩の力を抜いて、ゆったりとした日々を送」れる小皿と思いきや、精緻な墨はじき模様に圧倒されました。しかも、その部分の地が薄呉須とは仕掛けに念が入っています。目が悪いので、ダマシの術中におちいりそうでした。

これだけの墨はじき、そうそうはお目にかかれませんね。初老君も鼻高々(^.^)
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