「信長、天が誅する」(天野 純希著 幻冬舎 2019年11月25日第1刷発行)を読みました。
この本の題名は「信長、天が誅する」となっていますが、内容的には、
★ 第一章 野望の狭間
★ 第ニ章 鬼の血統
★ 第三章 弥陀と魔王
★ 第四章 天の道、人の道
★ 第五章 天道の旗
という構成になっていて、それぞれが独立した五つの中編をまとめて1冊にしたものです。しかも、信長を主人公とした内容ではなく、信長は、それぞれの中編の中で、脇役として登場してきます。
「★ 第一章 野望の狭間」について
桶狭間の戦いの際、織田軍と戦った今川方の武将の井伊直盛についての物語です。
桶狭間の戦いで今川方は破れ、井伊直盛も敗走して自領に帰ることになるわけですが、そのどさくさに、直盛は家臣に襲われて深手を負ってしまいます。直盛はその家臣を成敗しますが、深手は致命傷であることを悟り自害します。その時には、娘のお寅(次郎法師)(後に女領主となった井伊直虎)も居合わせました。桶狭間の戦いは、井伊直虎の初陣だったということです。
「★ 第ニ章 鬼の血統」について
信長の妹の市と浅井長政を主人公とした内容です。また、小谷城落城に関する姉川の戦いを中心とした物語でした。
「★ 第三章 弥陀と魔王」について
伊勢長島一向一揆を取り扱った内容です。
浄土真宗本願寺の顕如から伊勢長島に派遣された本願寺官坊下間頼旦に関する物語です。
ご存知のように、伊勢長島の一向衆は信長に反抗して戦い、最後には、まとめて焼き尽くされるわけですけれど、その内容について書かれたものです。
私は、本願寺官坊下間頼旦という人物のことを知りませんでしたし、伊勢長島一向一揆と信長のとの戦いのことについても詳しくは知りませんでした。その辺を書いた本は珍しいかもしれません。
「★ 第四章 天の道、人の道」について
武田勝頼に関する物語です。
武田勝頼は、設楽原の決戦(長篠の戦い)で信長に敗れますが、その後体制を立て直し、7年ほど勢力を維持します。なぜ体制を建て直せたかというと、それは、その敗戦で多くの宿老が討死したことで、皮肉なことに家臣の世代交代が進み領国経営がやりやすくなったこと、また有能な若手も育ったからとのことです。
しかし、結局は信長に敗れ、最後には少人数となり、首を取られてしまいます。
「★ 第五章 天道の旗」について
この中編は、まだ若き頃の明智光秀が、美濃明智城の飾り物の当主であった頃から始まります。美濃明智城は斉藤義龍に攻められて落城するわけですが、その前夜、城を抜け出し、真の明智家の再起を目指して諸国遍歴の旅に出るところから始まります。
そして、その後、信長の有力な家臣となって大活躍したことはご承知のとおりかと思います。
この中編では、最後に、「敵は、本能寺にあり」と諸将に命じ、本能寺に向かうところで終わっています。