「ヤングコミック」の創刊400号を記念して描かれた特別読み切り。谷岡ヤスジ、どおくまんとの競作となった。
美男美女カップル、トシとマリが最近オープンした「ビューティビレッジ」なる避暑地へ車で向かうところからドラマはスタートする。
ロッジに着いたトシとマリは、受け付けのおばさんからレストランのウェイター、ウェートレスに、美男美女であることをネチネチ言われたり、性加害や逆セクハラを受けたりと、相当な嫌がらせを受けることになる。
不気味に感じたトシとマリは、ロッジを出ようと、車を走らせるが、ハンドルが全く利かず、同じ所を何回も廻るよう、誰かに悪戯をされてしまう。
仕方なくロッジに戻るトシとマリ。すると、今度は屈強なマッサージ師が二人の前に現れる。
宿泊の料金に含まれているというので、そのままマッサージを受けるトシだったが、顔を無茶苦茶にイジられ、やはり踏んだり蹴ったりの目に遭ってしまう。
もうこれ以上、辛抱は出来ないと、トシとマリはキャンセルする旨をフロントに伝えるが、ロッジの従業員達が全員集合し、不気味な笑みとともに、二人にこう伝える。
「ここへ来た人はもうここから出られませんよ」「おまえら ボクらになんのうらみがあるんだ!?」と訴えるトシに、フロントのおばさんは、あなた方の顔に恨みがあるのだと言い、従業員、延いては集まった村人達にお面を取るように促す。
何と、彼らが普通の面構えをしていた顔は、実はお面で、それを外すと、ホラーメイクさながらの恐怖感を湛えた醜いそれであった。
とある一人の老婆の話によれば、彼ら一族はブスとブ男しかいないため、一般社会には出られず、近親相姦によって子孫を増やしていったという。
そう、ロッジの従業員達も村人達もみな、同じ血縁関係を持った者達だったのだ。
美しい人間が憎いと、その心情を吐露する彼らは、トシとマリを集団でなぶり殺そうとするが……。
因襲と閉鎖的空間に支配されたニュータウンを舞台に巻き起こる戦慄の狂騒劇。パッケージ(絵柄)の古めかしさ故、作品全体に漂うロートルな空気感は否めないものの、赤塚ギャグ特有の読者をあっと言わせるショッキングなプロットと、それに連なる猥雑な世界観はまだまだ健在で、マイナーな短編作品ながらも、この時期の赤塚としては、相当注力したタイトルであったことが推察出来よう。
同質のテーマとシチュエーションを備えた藤子不二雄A原作によるカルト的傑作短編『田園交響楽』(72年)と読み比べてみるのも一興だ。