木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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デザイナーとのトラブル

2006年02月14日 | デザイン契約など(相談室)


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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■デザイナーとのトラブル
20:【デザイン相談室】運用10

 前前回は工業所有権、前回は秘守義務契約と、2回に渡り、デザイナーに係わる法律関係の話をしてきました。

 今回は、デザイナーとの間でよく問題になる「デザインの2次利用」についてのお話をしようと思います。



デザインの2次利用

 個人のデザイナーの方からよく聞くトラブルに「デザインの2次利用」の問題があります。

以前、デザイナーとの付き合い方で、こんなことを書きました。

 「外観デザイン開発の際に提出したスケッチを、無断でカタログなどに使ってしまう場合がありますが、それは複製権の侵害になり、著作権法違反です。」

 例えば、ある商品のデザインを依頼され、最終プレゼンテーションに3DCADで作成したスケッチを提出したとします。(最近ではよくある話です。)

 そのとき、デザイナーからは、次のお願いをします。(これも、普通です。)

「この3DCADスケッチは、商品開発用に作成したものなので、カタログなど、営業用のパンフレットなどの販売促進用に使用する場合は、別途料金が発生しますよ。」

 でも、企業側は、商品開発用だろうが、販売促進用だろうが、対価をちゃんと払っているのだから、何に使おうがこっちの自由だとばかり、デザイナーに何の連絡もないまま、その3DCADスケッチをカタログに載せてしまいました。

 また、こんな例もあります。

 やはり、ある商品のデザインをして、そのデザインがそのまま、製品化されました。販売成績も悪くありません。たぶん、企業もそのデザインを気に入ったのでしょう。1年後、デザイナーに連絡ないまま、そのデザインを全く違う商品に、流用してしまいました。

 これも、企業側にはたぶん、全く悪気はなかったのでしょう。ちゃんと対価を払っているのだから、何に使おうがこっちの自由だというわけです。

 しかし、これは、著作権法では、「複製権の侵害」にあたり、法律違反であり、賠償請求の対象になってしまう場合があります。


複製権の侵害

 著作権法では、第21条に「複製権」という条項があります。そして、第49条で、その複製の内容を詳しく解説しています。

 著作権法では、複製権は、著作権者にあることが保障されています。従って、デザイナー(著作権者)の著作物(デザインスケッチやデザインそのもの)を、デザイナーに何お断りもなく、使用することは、禁じられているのです。

 上の例でいけば、3DCADスケッチのカタログへの流用は、スケッチ提出時に、著作者であるデザイナーが、商品開発用と販売促進用は別料金だと言っているのですから、これを無視するのは、法律的にも、倫理的にも許されることではありません。

 また、デザインそのものの流用も、やはり、複製権の侵害に当たります。これは、見方を変えれば、競合他社が、自社の製品のデザインを流用したのと同じことですよね。それを同一社内でやってしまっただけの違いです。


デザイナーとの信頼関係

 このような事例はよくあるようです。でも、フリーランスのデザイナーの発言権は弱く、実際には、ほとんどのデザイナーが泣き寝入りしています。

 デザイナーにできることといったら、もうその企業とは取引をしないという消極的な対抗手段しかありません。

 しかし、このようなことは、企業側にも不利ではないかと思います。

 カタログに使いたくなるような、かっこいいデザインやスケッチを描いてくれるデザイナーや、思わず真似をしたくなるようなデザインをしてくれたデザイナーを、もう使えなくなってしまうのです。そのデザイナーは、次は競合他社と契約をしてしまうかもしれません。

 もし、本気でデザインで商品性を上げたいと思っているのなら、そのようなデザイナーを大切にしなければならないのではないでしょうか?

 外部デザイナーを使う場合は、そのようなデザイナーの権利を守る気持ちを持ってほしいと思います。そういう対応が、デザイナーにとっても、企業に対する信頼感を向上させ、よりよいものをデザイン提案しようという気持ちにさせ、お互いにいい関係が結べるはずです。


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