◆工業デザイナーの探し方(2) 行政の紹介
69:【デザイン相談室】第69発
こんにちは!
デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。
株式会社ビートップツー (木全が取締役を勤めています)
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■工業デザイナーの探し方
フリーランスの工業デザイナーは縁の下の力持ちで情報発信をほとんど行わない上に、日本に六〇〇〇人くらいしかいません。そして、そのほとんどが東京名古屋大阪に集中して、地方にはほとんどいません。探すのはなかなか難しいようです。
中小企業の方が付き合えるフリーランスの工業デザイナーを探すには、次の3つの方法があります。
(1)口コミ
(2)行政の紹介
(3)デザイン学校の紹介
3回にわたって、工業デザイナーの探し方をお知らせしています。
今回は、「(2)行政の紹介による探し方」についてお知らせします。
■行政の紹介による工業デザイナーの探し方
行政はデザイナーとのマッチングを行っています。
東京都の場合、財団法人東京都中小企業振興公社がホームページで「東京デザイナー情報」として200社以上のデザイナーやデザイン事務所を紹介しています。地方においても各県の工業試験場や工業技術センターでデザイナーとのマッチングを行っています。
たとえば、北海道立工業試験場は、とてもユニークな取組をしています。
一般的に行政が企業とデザイナーのマッチングを行う場合、紹介するだけでそれ以降のサポートはあまり積極的にしていませんが、北海道立工業試験場は、もっと深く企業と付き合い、ユーザーリサーチや商品コンセプトの立案といった開発の上流段階から、デザイン案の検証・試作開発・市場導入までトータルにサポートしています。
もちろん、民間に必要なサポートを請け負えるデザイナーがいる場合には、開発テーマに相応しいデザイナーやデザイン事務所を紹介するという形で企業とデザイナーの仲介役も担っています。こういった取り組みは、技術サポート的な側面も持ったデザインコンサルタント業務と言えるかもしれません。
行政が無償、ないしは廉価な費用でデザインコンサルタントを行ってしまうのは、民間のコンサルタントにとっては脅威ですが、企業にとってはデザインの有効性を実感できる、またとない機会です。
北海道立工業試験場もそれは十分に認識しており、地域の民間事業者から支援を得られにくい領域での対応など、公的な立場としての適切な対応を念頭に、中小企業のデザイン活用サポーターとして、また企業とデザイナーの橋渡し役として業務に当たっています。
■行政によるデザイナーと企業の橋渡し
また、北海道立工業試験場は、企業とデザイナーの意識の差にも注目しており、この差を埋めるための場づくりを支援しています。
2008年には、企業経営者とデザイナーが交流し、デザイン活用経営を学び合う「北海道デザインマネージメントフォーラム」の立ちあげに中核的に係わり、運営面も支援しているそうです。
中小企業経営者は、デザインはわからないし、その重要性も充分認識しておらず、デザイナーは企業との接点が少なく下請仕事に甘んじていると感じています。
その溝を埋めるために、これまでにも道庁と北海道立工業試験場はデザインマネージメントセミナー(年三回開催)を主催してきました。同セミナーでは、ほぼ同数の中小企業経営者とデザイナーの参加を得て、実践的な演習課題に取り組んでもらい、その中でお互いに意見交換や意識の共有化をはかれるよう工夫しています。
中小企業経営者は、現行事業の延長線上で短期的な経営計画をイメージすることを得意としています。一方、デザイナーは従来とは異なる目線から発想する新規事業や新商品の姿、5年・10年後の企業のあるべき姿を具体的に可視化する力に優れています。こういった互いの能力を認めあい、補完できることが認識できれば、企業とデザイナーの正しい付き合い方に繋がっていくと期待しています。
実は、このセミナー受講生同士の交流がきっかけとなって、経営とデザインの融合を目指す機運が高まり、「北海道デザインマネージメントフォーラム」が誕生したのだそうです。
企業側の「デザインはわからん」という心のバリアーと同時に、デザイナー側にも「どうせデザインはわかってもらえない」という諦観があるのかもしれません。その二つを同時に解決しようとする北海道立工業試験場の取組はかなり先進的ですが、今後はこのようなムーブメントを官民問わず起こしていく必要があるのだと思います。
■行政の上手な使い方
デザイン活用に係わる相談やデザイナーを探すために行政機関に助力を求める場合は、是非、足繁く担当窓口に通ってください。
行政の担当者も中小企業経営の現場を知っている方たちですので、相談者の悩みを何度も聞くうちに、本当に困っていることは何か、外部の冷静な目で判断してくれます。それがわかれば、デザイナーも含めて最適な人材や行政が持っている支援メニューを紹介してくれることでしょう。
また、足繁く通うこと自体が本気でデザイン活用意欲があり、デザイナーを探しているという意思表示になります。
何度も会っていれば、行政の担当者も積極的に対応してくれるようになります。行政の担当者と仲良くすることも、デザイナーを探したり、適切なデザイン活用を軌道に乗せる準備だと考えてください。
行政の担当者と意志の疎通が図れていれば、相性のよいデザイナーが見つかるまで紹介し続けてくれるかもしれません。
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