砂漠のレインメーカー

夕暮れの 陰の廃墟に 病みを視る
宿す闇こそ 塩の道なり

辺見庸の番組を見た後では…

2011-05-01 08:19:43 | メディア不信

本日の朝、食事時にテレビをみる。

辺見庸の番組を見た後では(正確には見る前からだが…)、震災関連の報道を視る・聞くにつけ、その薄っぺらさにいら立ちを覚える。
こんな情報を垂れ流すぐらいなら、とにかく馬鹿なバラエティ番組やコメディ番組を放送してくれ。
中途半端に真面目な、自らのナルシシズムをみたし、泣かせたいような番組をやるぐらいなら、とんでもなく無意味な番組を、ナンセンスな番組をやってくれ。(内容はエロでも何でもいい)

強くそう思う。

父親が、ヨーロッパチャンピオンリーグのシャルケ04 VS マンチェスター・ユナイテッド戦の話題を振ってくる。
陽気さを含んだ声で「シャルケ負けたな~」
私の返答は「チームとしての格が違う」。父親には悪いが、この震災と死屍累々の光景のまえでは、そんな話題はどうだっていいと思っている。

新聞を開くと、安藤美紀が日の丸をふり、そこには「ガンバロウ ニッポン」と…

安藤選手の美しく無垢な笑顔であるからこそ、私は戦慄せざるえない。
その笑顔と旗は、「個別的な死」に向けられたものでは無いのではないか。
全てが集団とイメージに回収される。
リアルな存在・実存に寄り添う言霊や行いは、こんなにも少ないのか。

語れば語るほど、情報を得れば得るほど虚しいという感を抱く。

最後に辺見庸の新作詩を紹介しておく。

【死者に言葉をあてがえ --辺見庸】

わたしの死者ひとりびとりの肺に
ことなる それだけの歌をあてがえ
死者の口びる ひとつひとつに
他とことなる
それだけしかないことばを吸わせよ

類化しない 統(す)べない
彼や彼女だけの言葉を
百年かけて 海とその影から掬(すく)え
砂いっぱいの死者に どうかことばをあてがえ
水いっぱいの死者は 
それまでどうか 眠りに落ちるな
石いっぱいの死者は
それまでどうか語れ

夜更けの浜辺に仰向いて
わたしの死者よ
どうかひとりでうたえ

浜菊はまだ咲くな
あぜとうなはまだ悼(いた)むな
わたしの死者ひとりびとりの肺に
ことなる それだけの
ふさわしいことばが
あてがわれるまで


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
辺見庸の新作詩を転載してもいいですか (tadaox)
2011-06-09 02:12:33
この詩を多くの人に読んでもらいたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
返信する
転載OKです。 (レインメーカー)
2011-06-09 02:13:34
tadaoxさん

転載は特に問題ないです。
ただ今回の新作詩は雑誌『文學界』の最新号に掲載予定です。最新号の『文学界』を買うか、図書館で参照する。
または、新作詩が載るであろう単行本を購入してほしいなと、思います。
(僕はそのつもりです)
著作権ビジネスにはあまり良い印象を持っていないのですが、作者に対する何らかの礼儀は示すべきだろうと思っていますので。
返信する
わかりました。『文学界』を購入します。 (tadaox)
2011-06-09 02:15:27
アドバイスありがとうございます。
『文学界』に載るのであれば、喜んで購入します。
単行本も『辺見庸コレクション』1,2など手元にあり、ときどき刺激を受けております。
まとまりましたら、それもまた手に入れたいと思います。
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