この本は、ベーシックインカムを通じて、完全雇用、所有、賃労働、生産性、貯蓄といった、これまで中立あるいは無条件に善とされていた私たちの価値観を覆し、「労働しなければ１円の所得も貰えない仕組み」という現代社会の正体を暴いてゆく。そして、ベーシックインカムが構造的デフレ不況下における景気対策に留まるものでなく、足元に迫るＡＩ、ロボット時代を経て環境に調和した持続可能社会までの進化を促す主動力なのだと理解させてくれる。また、巧妙な罠である緊縮型ベーシックインカムについても言及されており、私たちが余計な回り道をしないよう導いてくれる。経済の仕組みや不況の原因、お金の役割を分かりやすく解説した上で、ベーシックインカムを導入すると暮らしや経済がどう変化するか述べられているのでイメージしやすい。本来、生産と分配の在り方は自然循環中の公平な配当であり、それを生活の場で人間にとってより快適に機能させる知恵を授けてくれる完成度の高いベーシックインカム入門書。
