goo blog サービス終了のお知らせ 

韓国労働運動情報

民主労総はじめとした韓国労働運動関連記事の翻訳

本の紹介 『25日 現代自動車非正規職蔚山工場占拠闘争の記録』(日本語版)

2013年04月10日 04時38分06秒 | 非正規職

本の紹介

『25日 現代自動車非正規職蔚山工場占拠闘争の記録』(日本語版)

 

著者 パク・チョムギュ
原著発行日 2011年7月29日 第1刷発行
原著発行所 レディアン・メディア(韓国)

 

 2010年11月15日から12月9日にかけて、韓国の現代(ヒョンデ)自動車蔚山(ウルサン)工場の組み立てラインにつく社内下請けの非正規職労働者が、正規職化を求めて工場占拠闘争に立ち上がった。本書はその25日間の記録である。
 上部団体である金属労組の団体交渉局長として共にこの現代自動車蔚山非正規職支会のろう城闘争を担った著者が、現場で書き留めた記録をもとに再現した25日間は、ろう城突入の過程、会社側との攻防、正規職との連帯と対立、日常直面する様々な困難、内部での討論など、緊迫した場面の連続だ。
 闘いの火点となったのは、「2年以上勤務した社内下請けの非正規職労働者は現代自動車の正規職」とした同年7月の大法院(最高裁)判決。金属労組は判決説明会を組織し、非正規職の組合員数は飛躍的に増すが、会社側は判決を無視する。この過程で非正規職労働者の自覚が促され、11月15日に怒りがはじけたのだ。
 本書で注目すべきは、現代自動車の正規職支部との関係だ。ろう城闘争に対し、食料搬入作戦など正規職組合員の支援行動が展開される一方、正規職の指導部は、非正規職の闘いをお荷物扱いし、ろう城を乱暴に収拾させようとする。そもそも現代自動車工場で非正規職が増大したのは、97年の国家不渡り危機以降吹き荒れた整理解雇の嵐の中で、2001年に正規職労組が、非正規職を16.9%まで使用することで使用者側と合意したからだった。
こうした現実を見たとき、非正規職の増加を許し、さらには正規職と非正規職の共同闘争を困難にしているのは、両者の存在形態の違いなどではなく、労組指導部の問題であることが突き出される。
 本書は、25日の描写の折に触れ、こうした非正規職増加の背景や、全国の非正規職闘争の歴史を説き起こす。
 労組経験の浅い、若き非正規職指導部の姿も新鮮だ。時に敵の罠にはまり、時に動揺し、しかし組合員に支えられ、団結のみに依拠して踏ん張りぬく姿が、美化することなく描かれる。
 ろう城闘争で世論が非正規職問題に注目しはじめたさなか、北朝鮮による延坪島砲撃事件が発生し、闘争に少なからぬ打撃を与える。南北分断下の労働運動の困難性を突きつける現実だが、「現代自動車蔚山工場――ここが戦場だということを示してやろう」とツイッターを使って跳ね返してゆく。
 日本の現実と同じ点、違う点、強く励まされ、深く学ばされる一冊である。

(全国労働組合交流センター発行『月刊労働運動』2013年4月号より)

 

日本語版 2013年4月1日発行
翻訳 広沢こう志
A5版 240ページ
頒価 1000円
発行 労働者学習センター
    千葉市中央区要町2-8 DC会館
    Tel 043-222-7207
    Fax 043-224-7197
    E-mail:doro-chiba@doro-chiba.org



最新の画像もっと見る