大震災
ガガさんのカップを手にした及川さん(右)と芳賀さん
東北歴史博物館(宮城県多賀城市)に保管されている米人気歌手、レディー・ガガさんのティーカップ。
キスマークと一緒に、「日本の為(ため)に祈りを。」と書き込まれたメッセージは被災者を励ました。しかし、5年もすれば摩耗や変色で消えてしまう。そこで、学芸員ら2人は試行錯誤を繰り返し、特殊な加工法によって、“永遠の宝物”に変えた。
ティーカップは、チャリティーオークションで、大崎市の歯科医が約600万円で落札した後、宮城県に寄贈された。
「様々な人の思いが込められ、支援の象徴として贈られたティーカップを永久保存したい」。研究員の及川規(ただし)さん(57)、学芸員の芳賀文絵(あやえ)さん(25)は今年5月、ガガさんの代理人に、使用した口紅のメーカーを問い合わせた。
しかし、返答は「ノーコメント」。歌手は夢を売る商売なので、どんな口紅を使っているかは秘密だというのだ。仕方なく、手に入る口紅8種類を用意し、実験用のカップに付着させた。美術品を保存する際に使うアクリルやシリコン樹脂を塗るなど、約30種類の保存方法を試してみた。だが、口紅が変色したり、油性マジックの文字が消えたりしてしまった。
あとは、文化財の保存などを行う東京文化財研究所(東京都)に教えもらった「パリレン加工」と呼ばれる方法しか残されていなかった。有機化合物のパラキシレンで紫外線や熱に強い膜をつくることができ、摩耗にも熱にも強い。実際、医療現場では人工臓器の酸化を防ぐために使われている。ただ、美術品の保護に使われる例は国内ではほとんどなかった。
2人はこの方法にかけた。東京都内の専門業者に加工してもらった実験用カップを、強い紫外線や80度の高温に1週間さらした。その結果、指でこすっても口紅は取れなかった。
本来なら加工には高額な費用がかかるが、業者は「震災復興のためなら」と無料で請け負ってくれた。こうして8月下旬に永久保存に成功した。芳賀さんは「多くの人に見てもらえるようになったことが何よりもうれしい」と喜び、カップを大切そうに見つめた。
(石橋武治)
(2013年12月7日11時51分
読売新聞)
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