
今年で122回を迎えたパリ~ルーベは残り距離100㎞超からの熱いバトルの連続で見所満載のレースになりました。目下2連覇中のマチュー・ファンデルプールにアルカンシェルを着たタディ・ポガチャルが挑むという構図でした。というのも、ここまでモニュメント8勝とマチューを上回るポガチャルもパリ~ルーベは初参戦となったからです。

前週のロンド・ファン・フラーデレンではパワーウェイトレシオの高いポガチャルが圧勝しましたが、その前のミラノ~サンレモではスプリントに持ち込まれてマチューの前に3着と敗れていたのです。ポガチャルがマチューに勝つには残り100㎞からの波状攻撃しかないと見ていましたが、実際は残り100㎞以上を残した第20セクターでポガチャルが仕掛けます。

最初の95.8kmはフラットな舗装路でも時々プロトンの先頭に姿を見せていたポガチャル。8名の逃げを追走するプロトンのペースを落とし過ぎないようにとの配慮だったと思います。UAEチーム・エミュレーツもポガチャルのこの動きに適切に反応して行きます。ニルス・ポリッツやフローリアン・フェルメールスがポガチャルをしっかりとガード。プロトンはマチュー擁するアルペシンがコントロールしますが、ポガチャルは緩いペースを容認しませんでした。逃げ集団との最大タイム差は2分半で推移していましたが、ポガチャルが仕掛けた第20セクターでプロトンが割れて行きます。

流石に仕掛け処は第19セクターのアランベールだと思っていたのですが、その前でのアタックには驚きました。マチューに勝つにはここから行くしかないというポガチャルの覚悟を感じました。最初に仕掛けたのはマッズ・ピーダスンでしたが、すかさずポガチャルが反応してバトルの火ぶたが切られました。

逃げ集団と22秒差でアランベールに突入したプロトンの先頭にはポガチャルが立ちます。負けじとマチューも前に出ます。アランベールを抜けた舗装路でマチューが強烈なアタックを見せ、後続を引き離します。この辺りはマチューの経験で5つ星のパヴェを抜けてほっと一息付きたいライバルたちを引き離しにかかります。これに懸命に食らい付くポガチャルの表情にも苦悶の色が浮かんでいました。

ポガチャル自身アランベールは何度か試走はしていたはずですが、アランベールを抜けた先でのアタックは想定外だったのでしょう。これがパリ~ルーベなのだとポガチャルも覚悟を決めたのではないでしょうか?これはポガチャルの想定を超えていたと個人的には思っています。