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CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

ツール・ド・フランス2024を振り返る(9)

2024-11-17 15:05:05 | ツール・ド・フランス
 ツールの14ステージはピレネー2連戦に突入し、総合争いが佳境に入ります。レース前のインタビューでアダム・イエーツでステージ優勝を自分はタイム差をキープすると冗談めかして話していたポガチャル。超級トゥールマレーを越え、最後の超級プラ・ダデではマルク・ソレルからパヴェル・シバコフへと牽引が引き継がれ、残り8kmからは総合4位のジョアン・アルメイダに牽引が代ると、ポガチャルと言葉を交わしたアダムがアタック。

 これにはアダム本人も疑心暗鬼だったようで、何度も後ろを振り返ります。本当にポガチャルは来ないのか、来たら牽引かという迷いがあったとレース後に勝っているのです。ポガチャルはアダムにたた「行って」と使えただけだったようです。
 前日に逃げに乗り、総合でも7位につけるアダムは軽快に飛ばし、逃げていたベン・ヒーリーを視界に捉えます。そしてフィニッシュまで残り4.6km地点で今度はポガチャルがアタック。ヴィンゲゴーやレムコは付いて行けず、どんどんタイムは開いて行きました。
 ポガチャルはあっという間にヒーリーを捉えたアダムに追いつき、アダムがハイペースでポガチャルの前を牽くことになります。前待ち作戦がハマったポガチャルは残り4kmで単独先頭に立ち、ヴィンゲゴー&エヴェネプールとの差を拡げていきました。そして大歓声を浴びながら登るポガチャルのスピードは最後まで落ちることなく、超級山岳プラ・ダデを制覇。ハルクポーズで雄叫びを上げ、区間2勝目を掴み取ったのです。

 レース後「アタックしたのは作戦ではなく本能に従っただけ。スプリントでのステージ勝利を狙っていたのだが、アタックしたアダムに追いつけば独走勝利できると思った」と語ったポガチャル。彼は「本能」という言葉を良く使いますが、経験や観察に裏付けられた「直感」に近いものと見ています。勝負勘が抜群に優れているのです。
 その勝負勘の良さは翌15ステージのプラトー・ド・ベイユでも遺憾なく発揮されました。前日はUAEに主導権を握られていたヴィスマは、この日は積極的にハイペースで前を牽き、ポガチャルのアシストを削る作戦に出ます。ただ、今年のポガチャルは2022年のポガチャルとは別物に進化していたのです。

 マッテオ・ヨルゲンソンが懸命にペースを上げ、残り10.5kmでヴィンゲゴーが発射するも、ポガチャルはシッティングのままヴィンゲゴーに付いて行きます。残り5.4kmで初めて後ろを振り返ったヴィンゲゴーに隙ありと感じたのか、ポガチャルがアタックしピレネーで連勝してしまうのです。
 この時のプラトー・ド・ベイユのポガチャルの登坂タイムは何と39分58秒で、1998年のマルコ・パンターニの記録を3分30秒も更新しているのです。この時のデータを振り返り、ヴィスマの監督にヴィンゲゴーは今のポガチャルには敵わないと言わしめたほどなのです。というのも、ヴィンゲゴーの登坂タイムもパンターニより2分22秒も速かったのですから。ツールを連覇している二人の登りの強さは別格なのです。

 「子どもの頃マーク・カヴェンディッシュが勝利を重ねる姿を見て、”彼は違う星から来た選手だ”と手の届かない存在だと思っていた。だが、夢は追いかければこうやって掴めるんだ」と語っていたポガチャル。今年、ツール通算35勝という大偉業を成し遂げたカヴェンディッシュですが、ポガチャルは今年もツールで6勝を挙げていますので、スプリンターではない選手がここまででツール通算16勝というのも驚きです。流石にカヴェンディッシュの35勝は無理かもしれませんが、エディ・メルクス等に並ぶ総合優勝5度というのは現実味を帯びて来ました。
 




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UAEチーム・エミュレーツの強さとは?(2)

2024-11-17 11:37:03 | プロ・ツール
 このように春先のレースだけを振り返ってみても、UAEはチームTTや個人TTの強さが際立っていました。資金が豊富で強い選手をお金で買っているイメージもあるUAEですが、アユソやデルトロといった若手が多いのも特徴です。ポガチャルもそうでしたがツール・ド・ラブニールで結果を残した選手を青田刈りしている傾向はあるものの、大金で選手を買うケースはそれほど多くは無いと思っています。

 UAEは特にタイムトライアルに特化したトレーニングをしている印象があります。タイムトライアルに強い選手を集めていることもありますが、科学的なトレーニングをしっかりしているはずです。それはポガチャルを見ていれば良く分かります。ツールを連覇し頂点に立った感のあるポガチャルですが、5年前のポガチャルは粗削りで未完成な印象が強くありました。

 ヴィスマにそこを突かれて2年連続でマイヨジョーヌ争いに敗れたことで、ポガチャルの数少ない欠点が明らかになってしまうのですが、今年は明らかにその欠点を見事に修正して来ているのです。特にタイムトライアルの走りが大きく改善されているように感じています。ポガチャルといえば登坂だったのですが、今では平坦も下りも安定して速いのです。これはエアロダイナミクスを意識したUAEの資機材やフォーム改良に加え科学的に計算された補給等、UAEチームが選手達にもたらしたものは大きいと思っています。

 スプリントに特化するのではなく、長い距離を登り・下りに関わらず速く走ることが重視されているせいか、スプリント争いではむしろ弱い印象があります。そもそも総合系のチームなので、スプリンターを抱えてもメリットが少ないと考えているのかもしれません。それよりもエースのポガチャルの為に強烈な牽引力を育んでいるのは当然なのかもしれません。
 




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