2023年はユンボ・ヴィスマにとって栄光の年でした。ジロ・デ・イタリアをプリモシュ・ログリッジが、ツール・ド・フランスをヨナス・ヴィンゲゴーが、ブエルタ・ア・エスパーニャをセップ・クスが総合優勝し、同一年の3大ツールを別々の選手が征するという金字塔を打ち立てたのですから。「All-in: The Trilogy」というドキュメンタリーがJ-Sportsで放送されていましたが、この年のユンボ・ヴィスマは初めから3大ツール制覇という目標を掲げていたのです。
ジロでは最後のTTでログリッジがゲラント・トーマスを大逆転、ツールではポガチャルのバッドデイに助けられた感はありますが、ヴィンゲゴーのTTでの圧巻の走りで連覇というおまけ付き。加えてブエルタでは表彰台を独占するという強さでした。ツールの勝利に強い拘りを持つログリッジをジロに回し、ツールはヴィンゲゴーの連覇、ブエルタはログリッジとヴィンゲゴーのWエースで臨むという計画だったようです。
そして、この偉大な金字塔を打ち立てた代償として、ログリッジが移籍を決めてしまいます。そして、ログリッジを失ったヴィスマは春先からワウトやヴィンゲゴーが相次いで落車骨折、結果連覇中のツールでもヴィンゲゴーがポガチャルに大敗してしまうのです。最高のアシストのセップ・クスを開幕前にコロナ感染で欠いたことは大きく影響したと思っています。ボーラ・ハンスグローエへ移籍しマイヨジョーヌを狙いに行ったログリッジも開幕前はビッグ4と言われながら、2度の落車でリタイヤでした。
ポガチャルという絶対的なエースがいて、資金力も豊富なUAEエミュレーツは3大ツールの総合優勝を全てヴィスマに奪われてもUCIのワールドランキングで昨年もTOPでした。決して資金力が豊富とはいえないヴィスマの強さはチームの結束力です。且つてはラボバンクというビッグスポンサーが付き、オスカル・フレイレ、ミカエル・ラスムッセン、トーマス・デッケルといったツールでも活躍する選手もいたのですが、2012年にドーピング問題でラボバンクが撤退してしまった低迷期に加入してきたのがログリッジだったのです。
エースのログリッジとヴィンゲゴーという2枚看板に最高のアシストであるセップ・クスがいてこその最強チームだったことが、今年、証明されてしまったような感じがしています。この3人は3者3様で違った個性を持っている選手です。この強烈な個性がヴィスマというチームで上手く融合すれば最強になる一方で危うさも秘めていたのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます