力もない。自信もない。味方もいない。
それでも、立ち上がってみようと思った。
■監督 ニキ・カーロ
■脚本 マイケル・サイツマン
■キャスト シャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、ショーン・ビーン、シシー・スペイセク、ミシェル・モナハン、リチャード・ジェンキンズ
□オフィシャルサイト 『スタンドアップ』
子供を連れて故郷に帰ってきたジョージー。 鉱山の町としての伝統を育んできた町の住人たちは、10代で息子を産んでシングルマザーとなり、父親のちがう娘を連れて、戻ってきたジョージーに“身持ちの悪い女”と冷たい視線を向ける。 そんな中、ジョージーは子供たちのために、自立を目指して、鉱山で働きだす。 だが職場では、男性社会に進出してきた女性に対する会社ぐるみの厳しい洗礼と、屈辱的な嫌がらせが待っていた。
おススメ度 ⇒★★★☆ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★★
この物語は実話に基づくものである。 今は当たり前の言葉にもなった“セクシャル・ハラスメント”。 その第一歩の礎となったのがこの物語であり、ジョージーの勝ち取った誇りある生き様であり、ある意味時代を変えた史実である。
シャーリーズ・セロン、彼女は優れた女優さんだ。 けれど彼女は彼女なりに出演する作品に対してのポリシーを持っている女優さんだと思う。 それは前作の『モンスター』を観た人にはわかってもらえると思う。
たとえどんなに優れた女優さんがいても、あの役を無難にこなせる人はいないだろう。 それはあの実在の女性連続殺人犯アイリーン・ウォーノスを見事に演じきったことで既に証明されている。 そして彼女は『モンスター』でアカデミー主演女優賞を獲得している。
鉱山というはっきりとした男性の職場に、彼女は飛び込み、女性であるが故の虐待や嫌がらせを受け続け、また父親のわからない息子との上手くいかない仲に苦しみながら、それでも自分の主張が正しいと信じつつ、自分を奮い立たせ、一人でも小さな勇気を出し、立ち上がる。 コレだけでもストーリ-的には魅力あるし興味のあるところだが、彼女は女性として、そして母親として前向きに戦っていった。
このジョージーの生き様をシャーリーズ・セロンは自分の戦いでもあるように演じ切っていた。 彼女も私生活で決して父親に対してよい思いを残していない(実際、彼女の父親は正当防衛で母親に射殺されている)。 男だけの職場で、女性の仕事仲間からも軽蔑され、同じ職場にいる父親からも冷たくされる。 そんな中で母親としても働く女性としても自立して行く姿、そして全米最初の“セクシャル・ハラスメント”訴訟に勝訴し、以降も働く女性に影響を与えるような社会を動かしたジョージー・エイムズを見事に演じている。
この映画で彼女をサポートする役者たちは素晴らしい。
目立った役ではない地味ではあるが彼女のことを見守る母親役には、僕の年代では忘れようとしても今だ脳裏から離れないあの『キャリー』を演じたシシー・スペイセク。
父親役には燻し銀のようなリチャード・ジェンキンズ。 キャリアは十分の名脇役である。 心の底では娘を愛しているのだが、世間体を気にし、娘に冷たい寡黙な父親を演じている。 特に鉱山の組合員たちの集会で、矢面に立たされ、阻害されたジョージーを初めてフォローする姿には涙が止まらなかった。 ただ彼は『ディック&ジェーン』を観た方には分かるだろうが、その映画ではアル中の役員を演じているのも面白いところだった。
そして最もこの映画で重要な役回りはフランシス・マクドーマンド ジョージーの旧友であり同じ鉱山で働く同僚であるグローリーを演じた。 ジョージーに鉱山で働くことを勧めたのも彼女だ。 彼女の存在感は既に色んな映画で目にしているので詳しく書くこともないが、では今回何故彼女がこの役に選ばれたのか、また彼女をキャスティングしたスタッフは多分、僕が思ったのと同じ印象で抜擢したのではないかと、この映画を観終わった後そう思った。 これから御覧になる人にはネタバレになるので反転させておくが、観終わった方はそっとあとで見て欲しい。
彼女をこの映画でのポイントは 「まさに彼女の眼力である。 病気が発覚し、言葉を発せないようになって、最後の最後の裁判において、彼女の言葉のないあの目の表情が全てを物語り、また同じ鉱山に働く女性たちの目を覚まさせ、勝訴に導いた最大の目の演技、まさに“眼力”である。
もうひとりはショーン・ビーンである 渋い役どころでありながら、妻を愛し、ジョージーを理解し、彼女の息子までも、まるで男として、父親代わりとして、ジョージーの息子を諭す姿や、体を壊した自分の代わりに鉱山で働くようになり、そのため妻も病気に陥ってしまったそんな役を渋い控えめな感じで演じている。
ウディ・ハレルソン、なんだか久しぶりにスクリーンで観たような気がする。 僕にはどうしても『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のあのキレたカッコいいしかも度肝を抜かれたハレルソンの姿しか浮かばないのだが(笑) でもこの映画でもしかしたら彼は新境地を開くかもしれない。 そんな予感もした。
監督はニキ・カーロ。 前作は『クジラの島の少女』を撮っている監督さんだ。 この映画、ブログを始める前に観ているのでレビューはないが、僕の2003年のベスト2にあげた映画である。 1作目といい、この2作目といい、2本の作品しか撮っていないけれど、何て素晴らしい監督さんなんだろう
「2003年ベストシネマ15」
残念だったのはジョージーの息子役だ。 ここにはもっと子役でもしっかり演技が出来る子役を使って欲しかった 難しい時期に反発するだけの役なら誰でも出来ると思う。 しかしここでは母親を憎むだけの少年から、観時間時間に一歩大人になり、母親を力づけるくらい大人の男の片鱗を見せる必要がある役まわりだ。 もう少し他の子役がいなかったのだろうか・・・。
僕は観終わってブラッド・レンフロ(もちろん子役の頃の)のような子役が良かったなぁと勝手に思った。 そういえば彼はどこへ行ってしまったんだろうか(笑)
シャーリーズ・セロンのバイオグラフィーを見て改めて驚いた。 彼女は1975年生まれ、まだ30歳なのだ。 端役でデビューしてまだ10年。 あまりにも存在感のある“性格俳優”に成長したとつくづく感心した
ちょうど、この映画を観る前の予告で彼女の次回作『イーオン・フラックス』を観れた。 その印象はマトリックス+キャット・ウーマンだった(笑) オフィシャルサイトのトップページの彼女の写真、ゾクゾクしますよ~
≪追記≫
シャーリーズ・セロンが、新作映画『ジ・アイス・アット・ザ・ボトム・オブ・ザ・ワールド』(原題)のプロデュースと主演を務めることが決まった。 これは、セロン自らがマーク・リチャードの短編小説の映画化権を獲得して数年前から映画化を進めていたもので、物語はチェサピーク湾を舞台に、健康問題からしぶしぶ引退した元海軍大尉とその家族の関係を描く人間ドラマだ。 セロンは元海軍大尉の娘で、ヘロイン中毒のシングルマザー役に扮する。(1/17、FLIX moviesiteより引用)
ぼくもウディ・ハレルソンが渋くなっているのに驚きでした。
イメージとしては『ハード・プレイ』が強いです。
とは言え2月公開の
『ダイヤモンド・イン・パラダイス』では
けっこうはじけてますが…。
私はこれを見てから『クジラの島の少女』を見たのですが
こちらもとてもステキな映画ですよね♪
>ぼくもウディ・ハレルソンが渋くなっているのに驚きでした
そうでしたか^^ 髪は少なくなっても演技は丸みを帯びてよかったですね!
>『ダイヤモンド・イン・パラダイス』ではけっこうはじけてますが…。
おっと、チェックしてみます~♪
情報ありがとうございます^^
>私はこれを見てから『クジラの島の少女』を見たのですが
女性監督らしさがどちらの作品にも活かされていましたね!
カイル&グローリー夫妻、ジョージーのご両親に泣かされました。フランシス・マクドーマンドはいつ見てもその存在感に圧倒されますが今回は彼女とショーン・ビーンにそうとう泣かされてしまいました。
TBさせていただきます。
公開直前で行くかどうか迷ったのですが、行ってよかったです。
久々に映画を観ながら本気で怒って、お父さんには思いっきり泣かされました。。。
そしてシャーリーズ・セロンさんスレンダーなのにホント骨太な女優さんで、
これからが楽しみになりました。
脇の素晴らしい役者さんたちに見事に泣かされた作品でした。シャーリーズ・セロンは本当に素晴らしい女優さんになりましたね!
>迷ったのですが、行ってよかったです
そうですね!素晴らしい映画でした^^
>シャーリーズ・セロンさんスレンダーなのにホント骨太な女優さんで、これからが楽しみになりました
愛らしい顔なのにほんとガッツがありますね^^
スレンダーボディは次回作で十分楽しめそうですよ(笑)?!
ジョージーのパパ、どっかで観たことあるなと思ったんですが、『ディック&ジェーン』ですね♪最初はひっどい父親だと思ったんですが、集会シーンは自分も涙腺脆くなりました。
>集会シーンは自分も涙腺脆くなりました
そうですね^^ ジョージーにここにいろとマイクの前に立ったときは、ジョージーの戸惑いの表情に涙腺破裂しました><