Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

S4-5 忻州(前)

2013-07-19 06:08:43 | 日記
シリーズ4の第5話 Xinzhou です。

前回の「一音節ゲーム」に続き、今回、訳しづらかったのが
後半に出てくる映画タイトルを使ったゲーム。
邦題が疑問形になってない…。
と、いうわけで、野暮を承知で邦題とオリジナルのタイトルをご紹介。

ロジャー・ラビット Who Framed Roger Rabbit?
オー・ブラザー  O Brother,Where Art Thou?
我が谷は緑なりき  How Green Was My Valley?
バージニア・ウルフなんかこわくない  Who's Afraid of Virginia Woolf?
ギルバート・グレイプ What's Eating Gilbert Grape?


それでは、以下、Xinzhouをお送りします。
毎回のお願いですが、先に番組を聞いてからご覧くださいませ。

 ↓
 



(テーマ曲)
  今週は 「忻州」


アーサー:ニンジンがあればなぁ。
(足音)
アーサー:やあ、みんな!
キャロリン:あと21分よ。早く、早く、早く!マーティンはどこなの?
ダグラス:帽子が風に飛ばされたんだと。
キャロリン:飛ばされた?どうして飛んでいくの?あの帽子は彼より大きいのに。マーティン!
マーティン:うん。すぐ行くよ。
キャロリン:そんな帽子は放っておきなさい。あと19分よ。
マーティン:分かってる。でも、、よし、捕まえた。
キャロリン:じゃあ早くこっちに来なさい。アーサー、キャビンは準備できてる?
アーサー:うん。貨物と食事を積みこんで、キャビンチェックも済ませて、僕はもうすぐこの雪だるまを完成させるとこ。
キャロリン:どうして雪だるまを作っているの?
アーサー:雪が積もってるから。
(足音)
マーティン:お待たせ。
キャロリン:ようやくね。帽子にあごひもをつけたらどう?
ダグラス:本気でやりかねないぞ。
(ドアの音)
キャロリン:さあ、みんな入って。あと18分で日没よ。マーティン、早く中に入りなさい。
マーティン:うん。でもその前に僕、、
キャロリン:中国のような遠い国の雪景色を堪能する時間はないのよ。
ダグラス:公平に言って、ここは中国だ。
キャロリン:ダグラス、a)黙って。b)管制塔と話してきて。
ダグラス:だがa)を実行しながらでは、私はどうやって、
キャロリン:今すぐよ。
(ドアの音)
キャロリン:それじゃマーティン、見回りして。
マーティン:さっき見回りしようと思ったのに、きみが早く中に入れって言って、
キャロリン:そして私が今、言ってるのは、早く外へ。行きなさい!
(ドアの音)
キャロリン:それじゃアーサー、離陸の準備を。
アーサー:オーケイ。準備出来た。
キャロリン:よろしい。
アーサー:ねえ、僕は準備出来たし、スキップの見回りには何分かかかるから、大急ぎで雪だるまを仕上げてもいい?
キャロリン:ダメよ!
アーサー:そんなぁ。


ダグラス:(無線で)忻州管制塔へ、こちらはG-E-R-T-I。フィットンに向けての出発を要請します。
忻州管制塔:了解、G-T-I。出発を許可します。空港は日没で閉鎖されることを承知ください。
ダグラス:ありがとう、管制塔。知ってるよ。そこで我々が編み出した作戦は―その単純性を賞賛してもらえるだろうが―その前に離陸することだ。
管制塔:G-T-I、繰り返してください。
ダグラス:了解。出発許可。
(無線オフ)(ドアの開く音)
ダグラス:おっと、すごいな。雪だるまのフロスティ・パイロットだ。
マーティン:オーケイ。見回り完了だ。でも、
ダグラス:そうか。こちらも万事順調だ。あ、だが、ガーティからまた1つ部品が落っこちたぞ。
マーティン:え?どれが?
ダグラス:APU始動器が故障。
マーティン:そんなぁ。
ダグラス:幸い、そいつのいまわの際の仕事はAPUを始動することだった。つまり、第一に、そいつは好きなことをしながら死ねたし、第二に、我々は離陸できる。
マーティン:よかった。さあ、外に出て雪を見て。
ダグラス:ここから見えるよ、マーティン。素敵だね。さあ、座ってくれ。出発しよう。
マーティン:いや。気になるんだ。
ダグラス:おい、マーティン。ダメだ。頼む。
マーティン:ここで口論するより見に行くほうが早いよ。
ダグラス:分かった。いいだろう。


ダグラス:うん、大丈夫だ。さあ、行こう。
マーティン:いや、僕、、この雪はぬかるんでるように思えるんだ。
ダグラス:全然ぬかるんでないよ。綺麗な、ふわふわの雪だ。べちゃべちゃだったら雪玉を作ることはできないだろう。だが、ほら。見てみろ。
マーティン:うん、でも、それは、それは正式な雪玉じゃない。構造統合性に欠けている、
(雪玉があたる音)
ダグラス:問題なさそうだが。
マーティン:きみがやるだろうと分かっていたよ。
ダグラス:それでもきみは避けなかった。
マーティン:ああ。でもさ、こうして軽くすくったら、


アーサー:ねえ、あれはずるいよ。
キャロリン:なにが?
アーサー:窓の外を見てよ。雪だるまを完成させる時間がないんだったら、どうしてマーティンとダグラスはあんなこと出来るの?
キャロリン:まったくもう!


マーティン:ほらね?当る前にこわれちゃう。だから安全ではないんだ、
キャロリン:殿方。パイロットたちの楽しい冬の世界にお邪魔して申し訳ないけど、この飛行機をあと11分で離陸させないといけないのよ。
マーティン:キャロリン。僕の考えでは、翼に積もった雪が、離陸するにはぬかるみすぎているんだ。
ダグラス:そして私は完全に大丈夫だと考えている。
キャロリン:そこであなたたちは雪合戦で決着をつける気なのね。
マーティン:いいや。べしゃべしゃの雪はどんな大きさでも形を保てないけど、乾いた雪なら、
ダグラス:あの、マーティン。
マーティン:なに?
ダグラス:あれを見てくれ、アーサーの極上の雪だるまを。あれをぬかるんだ雪で作ることは出来ないだろ。
マーティン:ああ、うん。大丈夫みたいだね。
ダグラス:その通り。だからみんな機に戻ろう。今夜、出発するぞ!
(足音)
ダグラス:アーサー?
アーサー:ん?
ダグラス:きみの雪だるまは今日を救ったぞ。
アーサー:最高。


ダグラス:(無線で)管制塔へ、こちらG-T-I。滑走路1-8の停止位置。離陸準備完了。
管制塔:了解。許可するまで待機。
(無線オフ)
マーティン:よし!本当に間に合ったぞ。
ダグラス:驚きだが、やり遂げたな。しかも、まだ4分残っている。
マーティン:あれ、ヘンだな。ねえ、ベーコンの匂いがしない?
ダグラス:いや。
マーティン:本当に?これ、これは確かにベーコンの匂いだよ。
ダグラス:マーティン、それがきみの仲間内の隠語なのか?この機に警察官が乗っているという意味かね?
マーティン:真面目な話さ。きみは本当に匂わないの?
ダグラス:ああ。
マーティン:本当?困ったな。その、ベーコンの匂いがするって、なにか意味があるのかな?
ダグラス:ああ、その質問は哲学者向きだな。
マーティン:本気でさ。だって、例えば焦げたトーストの匂いがするときは、脳卒中のおそれがあるっていうから。ベーコンの匂いがするときは、なんのおそれがあるんだろう?
ダグラス:朝食かい?
キャロリン:(客室から)おい、運転手さんたち!何やってるの?離陸するの、しないの?
(ピンポン)
ダグラス:こんばんは。キャロリンたちとアーサーたち。こちらはみなさんのダグラスです。4時間に及ぶ中国の交通渋滞は徒労では終わらず、我々は幸せなことに、この謎めいた東洋を離れて、謎のないフィットンに戻るための離陸許可を待っているところです。
キャロリン&アーサー:やった!
ダグラス:私はマーティンの指示で操縦室に加わり、彼が本日のマーティンを担当します。
マーティン:ハロー!
ダグラス:みなさんの客室乗務員は、みなさんです。彼らは全力を尽くしてパイロットのフライトを平穏に、そして快適なものにしてくれることを信じて疑いません。
キャロリン:とんでもない。私はずっと寝ているわよ。
ダグラス:まさに幸先のよいスタートです。それでは、お席でくつろいで、
管制塔:(無線で)G-T-Iへ。
ダグラス:はい、管制塔。
管制塔:離陸許可を却下します。
ダグラス:なんだと?どうして?
管制塔:駐機場に貨物を置き忘れています。戻って回収してください。
マーティン:いや、いや、それはないよ。僕が見回りしたんだ。絶対になにも忘れていない。
管制塔:ここから見えますよ。高さは約1メートル、横50センチ、白色です。
ダグラス:あれは雪だるまだ!ただの雪だるまだよ。
管制塔:戻って回収してください。
ダグラス:それでは日没前に離陸できない。
管制塔:夜明けまであと8時間4分です。おやすみなさい!
(無線オフ)


アーサー:本当にごめんなさい。
キャロリン:もういいのよ。
アーサー:ただの雪だるまなのに。
マーティン:そうだね。
アーサー:それにさ、思い出してほしいんだ。あいつは今日を救ったんだよ。今日を台無しにする前は。
キャロリン:いいのよ。さて、今日はすごく楽しかったわね。明日、もう一度同じ事をやりましょう。ダグラスはホテルへ戻るタクシーの手配をお願い。マーティンはガーティをシャットダウン。アーサーはおとなしくそこに座って、雪だるまを作らないこと。
マーティン:飛行機をシャットダウンって、、ダグラス?
ダグラス:ああ、なんてこった。
キャロリン:今度はなに?
ダグラス:APUの始動モーターが故障したんだ。シャットダウンしてしまったら、再起動できない。
アーサー:そんな、、APUってなに?
マーティン:補助動力装置。
アーサー:え、そんな!、、 補助動力装置ってなに?
マーティン:エンジンが止まっているときに飛行機に電力を送る機械さ。
アーサー:了解。
キャロリン:そう。でも問題ないわ。エンジンをオンにするまでは電力はいらないもの。
ダグラス:本当かい?ではどうやってエンジンをスタートさせるんだ?木の枝をこすり合わせるか?
キャロリン:つまり、日の出までAPUを作動させておく必要があるのね。
ダグラス:そうだ。
キャロリン:作動している間、飛行機をほっておくわけにはいかない。
マーティン:うん。
キャロリン:つまり、私たちはみなガーティで一晩過ごすのね。
アーサー:最高!


マーティン:オーケイ。3つの座席をできるかぎり後ろに倒したよ。そして非常用キットの毛布を全部出した。
ダグラス:それは快適だな。誰が通路で寝るんだ?
アーサー:僕だよ。そのほうが楽しそうだもん。
ダグラス:ふむ。パジャマ・パーティは魅力的だが、私は操縦室に座って読書することにするよ。今晩操縦するつもりで、コーヒーを3杯飲んでしまった。
マーティン:うん。でもさ、ダグラス、きみは眠らないといけないよ。
ダグラス:どうして?
マーティン:僕たちパイロットは睡眠時間を最低5時間とらないと、明日、飛行することが出来ないからさ。
ダグラス:マーティン。私は大丈夫さ。1979年の一夜、私は5日間起きていたことがある。
キャロリン:一夜なのに?
ダグラス:あれはすごい夜だった。
マーティン:そうか。でも、規則として、
ダグラス:分かったよ。
キャロリン:アーサー、あなたベーコンを調理しているの?
アーサー:ううん。
マーティン:ほらね!言ったとおりだ。
キャロリン:なにを誰に言ったの?
マーティン:ベーコンの匂いがするって。ダグラスは感じないらしい。
キャロリン:ええ、これは確かに焼いたベーコンよ。どうして匂うの?
マーティン:分からない。きみは匂うかい、アーサー?
アーサー:匂わない。でも、嗅覚は僕の得意分野じゃないんだ。
ダグラス:あえて聞くが、きみの得意の感覚はなんだね、アーサー?
アーサー:触覚だよ、絶対。科学の授業のときに、袋に入ったものを手探りだけで当てるゲームがあって、僕、ほとんど全部当てたんだ。ブドウもね。
マーティン:機内にベーコンはある?あったら、今、ほしいな。
アーサー:ないけど、でも、夕食を作ろうか?
キャロリン:ええ、お願い。私、腹ペコなの。
マーティン:僕もだ。今日のメニューは?
アーサー:チキンが2つ、子羊肉が2つ。
マーティン:いいね。なるべく早く頼むよ。
アーサー:承知!
(カーテンの音)
キャロリン:残念!
ダグラス:どうした?
キャロリン:なんでもないわ。ただ、明日の出発だと、トスカに間に合わないことに気付いただけよ。
ダグラス:残念。それはおバカのハークが納得しないかもな。
キャロリン:彼のことをそう呼ぶのは止めてちょうだい。
ダグラス:申し訳ない。おバカーズのハーキュリーズ。
キャロリン:ともかく、彼と行くわけじゃないの。あの人は今チューリッヒよ。
ダグラス:エア・カレドニアがチューリッヒに運航しているとは知らなかった。
キャロリン:違うわ。彼は、その、家探し中よ。
マーティン:そうなの?
キャロリン:うん、うん、そうよ。彼はあっちに引っ越すかも。
ダグラス:引っ越すかも?
キャロリン:ええ。彼がそう望めばね。
マーティン:きみも一緒に行くかも?
キャロリン:とんでもない!どうして私が?
マーティン;だって、もう1年半も付き合ってるじゃないか。
キャロリン:16ヶ月よ。それに、私たちは付き合っていません。私たち、、たまたま同じ場所にいることが多いだけ。
ダグラス:なんとロマンティックな。
マーティン:それで、どうして彼はチューリッヒに?
キャロリン:その、、いい?これは内緒の話よ。スイス・エアウェイズが国際化に乗り出して、エア・カレドニアを買収したの。それでハークはチューリッヒへ異動しないと、早期退職しなければならないのよ。
マーティン:スイス・エアウェイズが国際化を?
キャロリン:ええ。でもそれは私の話の要点じゃないけど。
マーティン:あ、ごめん。でもさ、新規採用もあるよね、きっと。
キャロリン:そういうことね。ええ、そうだわ。あなた、応募すべきよ。
ダグラス:そうかい?
キャロリン:もちろんだわ。他の仕事を探すべきだって、ずっと言ってるのよ。
ダグラス:本当に?
キャロリン:ええ!私、お給料が払えないことにうんざりしているの。マーティンは翼を大きく広げないと。
ダグラス:我々の翼は折りたたむのにかい?
マーティン:きみは僕が応募すべきではないと思うのかい、ダグラス?
ダグラス:いや、そうは言ってない。応募できる、ってことさ。結果はどうあれ、やってみろよ。あそこは一流の航空会社だがね。
マーティン:分かったよ。
ダグラス:つまり、立候補するのはいいことだ。ただ、私が思うに、初心者が帽子を投げる先としては、もう少し穏やかな所もあるんじゃないかな。
(カーテンの開く音)
アーサー:あの、母さん?
キャロリン:なに?
アーサー:ちょっと質問。みんなが一羽づつ食べられる、小さいチキンのこと知ってる?
キャロリン:ええ。
アーサー:あれはなんて名前?
キャロリン:プーサン(=ひなどり)よ。
アーサー:ああ。ベイビー・チキンじゃないんだ。
キャロリン:ええ。
アーサー:ああ。ねえ、みんな、間違いについてこの前話してたでしょ?
マーティン:なにしたんだ?
アーサー:間違いは誰にも起こることで、仕方がないことだって。
キャロリン:なにしたの?
アーサー:僕、ちゃんと伝えるべきだったんだ。ケータリングを注文するときに、メニューにベイビー・チキンってあって、あの小さいチキンのことだと思ったんだ。僕はあれが大好き、巨人になった気がするから。でもあれじゃなくて、これだって。
キャロリン:そう。飛行機に一晩閉じ込められた4人のために、あなたが準備したケータリングは、アーサー、チキン味のベイビーフード2瓶なのね。
アーサー:違うよ。これだけじゃない。ラム(=子羊)味のも2瓶あるよ。
ダグラス:ベイビー・ラムをなんだと思ったんだね?
アーサー:子羊はみんなベイビーだもん。
マーティン:それじゃ、朝食は?
アーサー:朝食は注文してないんだ。
マーティン:どうして?
アーサー:夕食でおなかいっぱいになると思ったから。
マーティン:もう!


(続く)