アート情報et猫たちと日々の風景

アート情報と日々の風景。生き物と自然と。アートフェスティバル、クラフトフェア、地球環境展も記しています。

父と猫

2008-12-31 17:46:22 | 日々の風景
最近、猫を巡ってちょっとしたことがあって、
長年猫の世話をしてきたお年寄りが、猫の行方を心配する様子に、
父と父が可愛がっていた猫のことを思い出した。


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保護した白猫を実家に連れて行くと、「困るんだよ。この年になると、もういきものは困るんだよ。」と父はほんとうに困った顔をした。

「困るんだよ。困るんだよ。」と父に言われながら、それでも猫は父に懐いた。いつも父の後を付いて歩いていた。

私が家で飼おうと思った時には、猫はもう父の猫だった。娘は「おじいちゃんから猫を取り上げないで!」と言った。

そして、わが家には別の保護猫たちが入った。

父が心筋梗塞で入院して、駄目かもしれないと医師に言われると、「猫が待っているから、早く元気にならないと、…」と家族は励ました。
猫は父の入院中、誰の目にもほんとうに元気がなく、しょんぼりして、父を待っていた。

父は退院できて、猫を相手に話し、愚痴も言っていた。猫も迷惑だろうなと思ったが、猫はいつも父の側にいた。

夕方5時になると、父と猫は散歩に出かけた。
おじいさんが猫を散歩させているのか、猫がおじいさんを散歩させているのか、と言われながら。

父は猫に向かって「おばあになったな」と言うようになり、「猫を置いて死ぬわけにはいかない。俺が死んだら猫はどうなる?」と心配した。

去年の8月のとても暑い朝、猫は老衰で死んだ。
死の1週間前から、猫は玄関の隅に横たわり、汚すことを気にしてか廊下にも上がらず、居間にも、父の部屋にも行こうとしなかった。

父の心を推し量った私の妹が、いつでも会えるようにと、庭に続く畑に猫を埋葬した。

それから、父は水を持っては朝晩畑に行くようになった。
火葬場にやらなくて良かったと思った。

時々、私の妹たちがつぶやく。
「この胡瓜、猫を埋めた近くに成ったのよ。」とか、「猫を埋めた近くに大根作らなくてもいいのに。」

でも、私は思う。
「交通事故で死んだちぃちゃんは柿の木の下に埋めなかった?」

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