「大きな道」
ある時のどが渇いて 公園で水を飲もうとしたら
蛇口から水が流れてなくって 仕方なく蛇口を舐めてたら
こっちへおいであそこの神社の水飲みは場からこぼれてる水
飲めるから行ってきたら
君この街の事よく知ってるんだね
僕はこの街で生まれたのに うろうろ しなかったから
何も知らないんだ
へ~こんなところもあるんだ~
ちょっと気をつけなさいね そこの工事中
マンホールなんて落ちたら這い上がれないからね
仲良くなったメス猫は 街の隅々までよく知っていました
決まったところで エサをもらいたくないって
あちこちエサを捜し歩いて 生きて来たんだって
その点僕は親猫がエサをもらってた所で 親の後をそのまま
エサ場にしたので なんの苦労もしてません
そんな僕から見て そのメス猫は少し乱暴な言葉や態度だったけれど
何故か 引かれるところがあったのです
ここ突然車が来るから あなたは渡らない方が良いわね
そう言いながら本人はぴょんって広い道を渡って行く
直ぐにカラアゲを咥えて戻って来て 私食べて来たから
食べていいわよって
まだ知り合って間もないのにすっかり意気投合して
何処に行くにも 早く来なさいよ~って怒られながら
2匹で街をぐるぐるする毎日
ただこの街のボス猫が来た時は 死ぬ覚悟で
突っ掛って行ったな~
どうなったかは想像通り 手足は血だらけで耳は千切れるし
散々な目にあったけど 最後僕が吐き出した血が
目に入ったのか ボス猫は帰って行きました
チョットは頑張るじゃん ダメだったら私が加勢するつもりだったけど
必要なかったみたいね そう言いながら
夜中じゅう 傷口を舐めててくれた 本当は優しいんだな~
このまま幸せが続くと思ってた ある日
ここで待っててと言い残して 広い道を渡ったまま帰ってこなくなった
待ちくたびれて 道を渡る勇気を出して
何度かクラクションを鳴らされながら道の向こうへ
初めての場所で 迷いながら大きな駐車場へ
その隅で棒を持った人間の若者が数人笑ってた
その足元の転がったカラアゲのすぐ横で メス猫が倒れてた
そのあとの事はよくわからない
僕は柵を乗り越えて 人間に襲い掛かったようだ
もちろん適うわけはないものの 一矢は報いたのか
人間たちは急いで帰って行った
僕も脚が折れたのか激痛の中 動かない彼女へ「向こうへ帰ろう
2匹の街へ帰ろう」って言いながら
彼女の首筋を咥えて引きずって広い道の向こうへ
脚も彼女も動かない でも車の合間を突いて広い道へ
クラクションと急ブレーキの音と大きな衝撃と・・
気が付くと渡り切った道で 彼女が僕の気が付くのを
待っててくれたんだ
バカね~危ないから大きな道は渡っちゃダメだって言ったでしょ?
だって戻ってこないから心配で
でももっと早く行けばよかった ごめんね!
わかったもういいから安心して あなたと もう離れないからね
ずっと一緒にいましょうね 「どちらかが 生まれ変われるまでは」
振り返ると大きな道で清掃員が僕たちを片付けていました
めでたしめでたし