「桃次郎」
昔々ある所に おじいさんとおばあさんが居りました
おじいさんは山へ芝刈りに
おばあさんは川で洗濯をしておりますと
川上から大きな桃がどんぶりこと流れてきました
おばあさんは桃を抱えておじいさんに見せようと
家に帰りかけると川上から大きな桃がもう一つ流れてきました
でもおばあさんは1つしか持てないので桃は流れて行きました
もっと川下で洗濯をしていた意地悪ばあさんが桃を見付けて
一人で食べようと家に持って帰りました
ところが意地悪じいさんは仕事もしないで家でゴロゴロしてたので
桃が見つかってしまいました
「お~丁度腹減ってたんだ 食わせろ!食わせろ!」
「私が見つけたんだから 一切れだけだよ」
そう言いながら桃をスパッと切ったら中から
男の赤ちゃんが「オギャ~!オギャ~」と血まみれで泣いていました
おじいさんは血まみれになった 桃を見て「チッ!」と
舌打ちをしながら出て行きました
おばあさんは洗ったら食べられないかね~と
誰も赤ちゃんの心配をしませんでした
それでも すくすくと不良の道へと育っていきました
噂でとなり村の幸せそうな桃太郎の事を聞きながら
桃次郎は なぜ先に流れなかったのかを恨み
なぜ良いおばあさんは桃を2個持って帰らなかったのかを恨み
そして世の中を恨み 不良仲間のタヌキとキツネとカラスで
悪い事なら何でも来いのチームを作って暴れまわっていました
そんな時 桃太郎が仲間と鬼退治に出発したと
LINEのメールで知った桃次郎は
桃太郎より先に行こうと追いかけることにしました
おばあさんは「キビ団子?」お前に食わせるもんなんて無いよ!
くそ~!と思いながらも 仲間を集めて追いかけて行く事にしました
でもみんなは「今から行っても無理っすよ!俺は行きたくないな~」
などと文句の嵐です
「おい!俺は行こって お願いしてんじゃないぞ!
来いって命令してんだぞ ぶっ飛ばされたいのか?」
「はい!はい!行けばいいんでしょ」
「それとタヌキとカラスはそのままで良いけど
キツネ!お前は化けるの得意だからサルにでも化けろ」
「え~俺だけっすか?嫌だな~」
よし!これで桃太郎のメンバーと対等だ!
やっぱりライバル心メラメラとある桃次郎でした
途中 食料もないので あちこちで盗みを働きながら
桃太郎を追いかけましたが 鬼が島に着いた時には
もう桃太郎は宝を山積みにして帰った後でした
桃次郎は何をしても桃太郎には勝てませんでした
ふと周りを見渡すと 桃太郎にやっつけられた鬼達が
ガックリとした鬼や怪我をした鬼
桃次郎は鬼に自分の姿を見てるような気になりました
鬼の娘がお腹を空かして泣いています
おい!これを食べな!途中で盗んできた食べ物だけどな
鬼達はそんな物を食べたらまた桃太郎に怒られますと断ると
俺が盗んだものだから悪いのは桃次郎でいいから
お前たちは俺に言われて仕方ぬ食べたって言えばいいよ
何故か鬼の娘は桃次郎に親近感を持ったのか
ここに残ってくださいとお願いしてきました
桃次郎も村に戻っても嫌われ者なので
このまま鬼が島に残って 鬼の娘と一緒になる事にしました
仲間のタヌキとキツネとカラスにはもう自由に村へ
戻るように言いました
ついでに意地悪なじいさんとばあさんの面倒は見なくていいけど
気に掛けてやってくれと頼んだそうです
あれでも桃を切って出してくれた恩はあるから~と
頭からほほにスパッと包丁で切られた傷をなぜながら言いました。
その後桃太郎は幸せに暮らしたそうですが
桃次郎の事はどうなったのか誰も知る者はいませんでした
めでたし めでたし」