『何の矛盾もない』

2002年5月18日。午前3時頃。
突然体を揺さぶられる感覚を受けて、僕は目を覚ました。
その僕の目の前には、青く顔をこわばらせた妊婦の妻が居た。
何かに怯えているのがすぐに解る程の震える声で妻は僕に言った。

　　　「は、破水したみたい…。」

妻の膨らんだ下腹部がビッショリと濡れていた。
眠た気な脳を叩き起こす様にして、僕は事態を掌握した。
気が付くと、妻と僕は、病院へと向かうタクシーのシートに居た。
シトシト雨降る闇の中、妻は腰と下腹部の強烈な痛みに耐えていた。

　　　あの日からもう4年…。

一生涯、男の僕には、
立ち向かう事さえ許されない試練を耐え抜いた妻。
今も残る下腹部の"帝王切開"の傷跡は、妻の"人生の勲章"。
あの日、僕の心の碑に深く刻み込まれた感動は、廃れる事はない。
永遠に…NEVER CHANGE！

理不尽さ　という嵐が、　純粋さ　を覆い隠している日常。
偽り　と　矛盾　がひしめき合ってまかり通っている日常。
こんな日常の中にも"真実"がある。

　　　「僕は今、此処に生きている。
　　　　そして、愛する妻と息子との暮らしがある。」

この"真実"に感謝している。
この僕の想いに…、　何の矛盾もない。

　　

『何の矛盾もない』
作詞・作曲/長渕剛
アルバム『LICENSE』(1987年8月5日発売)に収録。

　　　「息子よ。
　　　　4歳のお誕生日。　おめでとう！！
　　　　妻よ。
　　　　特別な日を一緒に迎えれる喜びを祝おう！！」

◆関連リンク◆
　　　シーラカンスの憂鬱：『NEVER CHANGE』
　　　シーラカンスの憂鬱：『ちっぽけな僕の大切なもの -Be My Last-』

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