「だまつてゐる心と心」 坂本遼
おかんの咳の白い息が
火燵の上までおろした十燭のかさにあたる
屋根窓からとびこむ粉雪が
あぶら褪せた赤いおかんの髪の毛に音もなくとまる
ああ なき妹と揉みくらべした時にくらべて
いまつかんでゐるこの肩の筋肉のゆるみ
それからのびきつたこの皮膚
おかんはぢつと燻つたかさをみつめては
また苦しく咳こむ
たたいてもたたいても息をつかず
ブリキ鑵のやうに空虚にひびく
痩せた脊のかなしさ
うびゆうと唸る旋風が通りゆく
咳のこえ
ああ あしたでていく今夜をどないしよう
おかんの咳の白い息が
火燵の上までおろした十燭のかさにあたる
屋根窓からとびこむ粉雪が
あぶら褪せた赤いおかんの髪の毛に音もなくとまる
ああ なき妹と揉みくらべした時にくらべて
いまつかんでゐるこの肩の筋肉のゆるみ
それからのびきつたこの皮膚
おかんはぢつと燻つたかさをみつめては
また苦しく咳こむ
たたいてもたたいても息をつかず
ブリキ鑵のやうに空虚にひびく
痩せた脊のかなしさ
うびゆうと唸る旋風が通りゆく
咳のこえ
ああ あしたでていく今夜をどないしよう