グー版・迷子の古事記

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タケミカヅチとサルタヒコ②

2013年10月11日 | 古事記
タケミカヅチとサルタヒコについて、以前考察してみました。
下はその時の経緯です。

タケミカヅチとサルタヒコ〕〔鏡の神話〕〔鈿(かんざし)の神〕〔天孫降臨〕〔アメノウズメ

タケミカヅチとサルタヒコは非常に良く似ているのです。
しかし前回考察した時は決め手を見つける事は出来ず、二柱の神様は別の神様であろう、と思っていました。

ところが先日ちょっとしたヒントを見つけ、もしかすると二柱の神様は元々同じ神様であったのではないか、と思うようになってきました

チ(乳・祖・地)の神霊でチの神霊について考えていた時、「チ」には元々「親」「祖先」と言う意味があったであろう事に気付きました。
そしてこの時、アイヌの火の神様・フチカムイの事を思い出し、今回のヒントを得ました。
アイヌの火の神様は、フチカムイ・アペフチカムイ・カムイフチなどと呼びます。
「フチ」は「老婆」と言う意味です。
「チ」が「親」「祖先」だとすると、「フ」は「古い」と言う意味ではないかと思いました。
「フチ」で「古い親」「古い祖先」と言う意味となり、「老婆」とも意味が重なってくるのです

  《タケミカヅチ》

前回、中臣氏について考えていた時、中臣氏が祭る鹿島神宮の祭神であるタケミカヅチとフツヌシを思い出していました。
タケミカヅチは別名、タケフツノカミ、トヨフツノカミ、と言います。

フツヌシは「経津主」、タケフツノカミは「建布都神」、トヨフツノカミは「豊布都神」と表記します。
タケフツノカミとトヨフツノカミは古事記でタケミカヅチの別名として、またフツヌシは日本書紀に出てきます。
この三柱の神様は、イザナミがホノカグツチを切った場面で出てきます。
三柱の神様が、同一神かどうかははっきりしませんが、限りなく同一神に近いと言えそうです。
私はこの三柱の神様を、それぞれタケミカヅチの神格の一つと考えています。

この三柱の神様の「フツ」は現在次のように解釈されています。

①「フツ」は刀で物を断ち切る音。
②「フツ」は「フツフツ」と沸き上がり「フルイ起す」フツ。(ウィキペディア)

現在の解釈は「フツ」を擬音語として解釈しています。
私も今まで「フツ」は刀で物を断ち切る音なのだろうと、安易に考えていました。

「経津主」「建布都神」「豊布都神」は、それぞれ万葉仮名での表記です。
万葉仮名は、古事記の序文でも書いてある通り、古意を表すのに「訓」を用いています。
「音」を用いた漢字は音しか表現していませんが、「訓」を用いた漢字は古意を表現しているのです。

それでは、「フツ」はどう言った意味でしょう。
「経津」は「訓」です。「経津」の意味を考えてみましょう。

経…時間の経過を意味します。「フ」と読ませているところから、「年を経た」「古い」「古(いにしえ)」を意味するのではないかと思います。

津…港。渡し場。川の向こうとこちらを渡す所。
単語の前後を繋ぎ渡しているので、「~の」と言う意味だと思います。

「フツ」は「古(いにしえ)の」と言う意味になりそうです。
そうすると、「フツヌシ」は「古の主」、「布都神」は「古の神」と言う意味になります。
タケミカヅチには、「古(いにしえ)の神」と言う神格があったのです

私は、この事に気付いて愕然としました。
サルタヒコにも、「古の神」としての神格があるのです。
伊賀国風土記によると、

「猿田彦の神、始め此の国を伊勢の加佐波夜の国に属けき。時に二十余万歳此の国を知れり。」
(猿田彦の神は、初めこの国を伊勢のカサハヤの国に属させた。二十余万年この国を治めた。)

また一つ、タケミカヅチとサルタヒコの共通点が明らかになりました。
タケミカヅチとサルタヒコは、古(いにしえ)の神様だったのです

つづく