グー版・迷子の古事記

古事記の世界をあっちへふらふらこっちへふらふら
気になったことだけ勝手に想像して勝手に納得しています

お盆

2013年10月16日 | 落書き帖
昼下がりタバコを買いに外へ出た。
玄関を出ると室内の快適さが身にしみて、思わず後悔さえ感じてきた。
暦の上ではもう秋だというのにアスファルトの上は揺らいで見える。
湿気を伴った火の気は、行く所が無いとでも言うようにいつまでも留まって去ろうとしない。

下り坂に差し掛かり下を見ると、三十メートル程ある坂の終わり、通りと交差する所にある民家の角の軒先に小学校に上がる前くらいの幼い女の子が座っていた。
厳しい太陽の日差しを避けるように膝を抱え通りを往来する人達をぼんやりと眺めている。
そのうちこちらに気付いたようで、坂を下ってくる大人に興味深そうな視線を注ぎ始めた。

……知っている子供だろうか?

側を通る時、少し顔を見てみたが心当たりは無い。
彼女の興味は相変わらず私に向いているようだ。
少し気になったので通り過ぎた後、右を見る振りをして視界の隅で彼女を追ってみたが、まだこちらを見ているようだった。

コンビニでタバコだけ買いすぐ家路に着いた。
通りに出てみると、女の子はまだ先ほどと同じ場所で通りを往来する人達をぼんやりと眺めている。
彼女のいる方向へ歩いていくと、今度は意を決したかのように近づいてきた。

「こんにちは。」
「こんにちは。」

私は周りの人に、独り言でも言ってるかのように見られているのでは無いか、と少し心配になった。
彼女の方は子供独特のなれなれしさで話しかけてくる。

「そこの神社にお墓があるって聞いたんだけど本当かな?」

通りの反対側の小高い丘の上にある神社のことを聞いてきた。
道は既に家へ向かう登り坂へ差し掛かっている。

「どうだろう?おじさんは知らないけど、もしかしたらあるのかもしれないね。」
「ふーん。」

……知らない子供だし家まで来られたら困るなぁ

「おじさんは今から家に帰るから、遊んであげられないよ。」
「大丈夫、私のうちもこっちにあるから。」

あらかじめ私の言う事を知っていたとでも言うかの様に、話し終わるか終わらないかのうちに応えてきた。

……賢い子供だったんだろうなぁ

坂を上りきり既に分かれ道の無い所まで来ていた。
彼女は、以前は上の集落への階段があった突き当りへ向かい歩いていく。
楽しそうに、ふわふわ… ゆらゆら… 。

まだ若い葉が一片あるかないかの風に舞った。

我照らし
影に一葉(いちまい)
黄緑か
戯れ風へ
真白に踊る