グー版・迷子の古事記

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鈿(かんざし)の神

2013年09月22日 | 古事記
前回、アメノウズメ(天鈿女)をアメノウスメ(天細女・天細目)と結論付けたのですが、個人的にいま一つ納得出来ない感じがしていました
細女・細目では神様の性格を現していないし、「鈿」という文字にあまり向き合って考えていなかったからです。
そこでアメノウズメの登場場面・天岩戸から読み直し、「鈿」の意味を考えてみようと思いました。

  《アメノウズメ》

アメノウズメは「天宇受売」「天鈿女」と書きます。
アメノウズメの漢字分解

天宇受売 = (天)(宇受)(売)
神霊の性格を表す(宇受)の部分は音読みですので、単に「ウズ」という音しか表していません。

天鈿女 = (天)(鈿)(女)
神霊の性格を表す(鈿)の部分を「ウズ」と読ませますが、音読みに「ウズ」はないので訓読みとなります。
そのため、(鈿)の字義が神霊の性格と関係してきます。
では(鈿)の意味は?というと「かんざし」です。
「天鈿女」を直訳すると天のかんざしの女神とでも言う所でしょうか。

少し先走りますが、「かんざし」の語源を考察すると驚きの展開となります。
「かんざし」の語源が明らかになるばかりか、アメノウズメの正体も含めその他諸々の謎が明らかになるのです。
結果を見て私は驚きました

では「かんざし」とは何か少し考えて見ましょう。
「カンザシ」古い言い方だと「カムザシ」
ひと目、古代の表現っぽいなって感じがします。
古代語として分解してみましょう。

カムザシ = (カム)(サ)(シ)

(カム)…「神」後ろに言葉が続くと「カミ」→「カム」となる。
(サ)…狭い。細い。先端。
(シ)…助詞の活用形で名詞を作る。「サス」→「サシ」

「カムザシ」を直訳すると「神の先端」とでも言う所だと思います
「神の先端」とは何だろう?
私はある事を想像していました。
見ている方にも分かりやすくするため、少しずつ「かんざし」に迫ってみましょう。

「かんざし」は髪にさす物です。
髪にさす物と言えば、古代「くし(櫛)」が有名です。
くし(櫛)と言えば、古代において極めて有名な呪術道具なのです。
では何故、くし(櫛)は呪術道具となったのでしょう?
何故くし(櫛)が呪術道具なのか?今まで私は知りませんでした。

「くし」も「かんざし」もどちらも髪にさします。
一方は呪術道具、一方は「神の先端」
「くし」も「かんざし」も何か神聖な物を感じます。
どちらにも共通するのは「髪」と言うキーワードです。

では「髪」とは一体どう言った物なのだろう?
古代の人たちは「髪」をどのように考えていたのだろう?

「髪」は切っても痛くありません。しかも他の体毛と違ってどんどんどんどん伸びてきます。
             「うちの爺ちゃんの耳毛は?」
「髪」は人間の体の中で一番生命力あふれ、切っても切っても再生を繰り返します。
「髪」は人間の体の中で一番神聖な物、あるいは神(かみ)の様な存在だったのかもしれません。
そのため、髪(かみ)と呼ばれるようになったのではないでしょうか。
             「あなたの爺ちゃんの耳毛もきっと神です」

さて「かんざし」に戻ります。
「かんざし」は「神の先端」だと先ほど言いました。
それでは「神の先端」は「髪の先端」ではないのか?
「かんざし」は花や花をかたどった物を先端に付けています。
では「神の先端」は「花」なのか?

もうアメノウズメについて分かった方もいると思います。
もう少し説明にお付き合い下さい
私はある画像を思い浮かべていました。
当ブログ左上のプロフィール欄にある画像を見てください。

皆既日食の画像です。
月神が太陽神を覆い隠し、太陽神が目覚めようとする一瞬のダイヤモンドリングの画像です。
ダイヤモンドリングのダイヤモンドの部分が「花」即ち「神の先端」なのではないか?
と思ったのです。
今再生せんとする太陽神の先端です。
天の岩戸でアマテラスが岩戸隠れするイメージにもピッタリです。

もうお分かりですね
アメノウズメは「神の先端」、ダイヤモンドリングのダイヤの部分、「かんざし」の花、太陽神の今再生せんとする姿だったのです。

そうなると、「かんざし」の語源も明らかな様です。
「かんざし」の語源もアメノウズメ同様に「神の先端」だったのでしょう。
或いは、まず「アメノウズメ」ありきの「かんざし」なのかもしれません。
頭にかんざしをさした姿って、ダイヤモンドリングに似てませんか?

最後に、天の岩戸におけるアメノウズメに面白い記述があるのでご覧下さい。

天宇受売命、天香具山の天ノ日影をたすきにかけて、天ノ真折(まさき)をかずらとして、天香具山のささ葉を手草(たぐさ)に結ひて、天の岩屋戸におけを伏し、ふみとどろこし神懸かりして、胸乳を掛き出だし裳緒(もひも)をほとにおし垂れき。ここに高天原動(とよ)みて八百万神ともに(わら)ひき。ここに天照大御神、怪しとおもひて天の岩屋戸を細めに開きて、内より告るに「我、隠りますによりて、天原おのづから闇く、また葦原中国みな闇からんを、何ゆえを以て、天宇受売は楽をなし、また八百万神はともに(わら)ふや」と。ここに天宇受売まうして言わく「汝が命に益して貴き神坐す、ゆえに歓喜び(わら)ひ楽(あそ)ぶ。」と。

古事記の天の岩戸でアメノウズメ(天宇受売)が登場するところです。
簡単に説明すると

アマテラスが隠れた岩戸の前でアメノウズメが楽(あそ)び、それを見た八百万の神が笑うので、
アマテラス「なんで楽しそうに笑ってるの?」
アメノウズメ「あなた様より素敵な神様がいるから喜び笑い遊ぶのです。」

「咲」を「笑ふ」と訳してありますが、今までの事から考えると「咲く(さく)」と訳してもいいのかもしれません。
古代人はアメノウズメに「花」と言うイメージも持ってたのかもしれません。
きっと太陽が再生する時に一瞬咲く花を想像していたのでしょう