遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

大皿・大鉢・壷34 鎌倉時代?『常滑壷』

2022年08月19日 | 古陶磁ー大皿・大鉢・壷

よくわからない物シリーズ第4弾、今回の品は、鎌倉時代の壷として買った物です。

胴径(最大) 25.2㎝、口径 20.9㎝、底径 17.0㎝、高 35.6㎝。重 6.6㎏。

縦長の壷です。特にこれといった特徴はありません。平凡な姿形のためでしょうか、図録などに載っているのを見たことがありません。

底に現われている陶土は、砂けの多い常滑の土そのものです。

所々に石咬みがあります。

古い常滑焼といえば、肩がギュッと張った鎌倉時代の壷、特に不識壷が有名です。ソロバン型のこの壷は、いかにも質実剛健な鎌倉武士をおもわせ、人気があります。灰が降っていて、茶室に入るほどの小型壷となると、かなりの高額になります。

そんな訳ですから、何でも屋の遅生が手を出さないはずがありません(^^;

ところが、不識壷は江戸時代も、ずっと作られ続けていました。特に、江戸後期には、鎌倉物の精巧な写しが作られ、よほど精通した業者でないと見分けがつかないほどです。ましてや、素人のガラクタコレクター、見事に引っ掛かってしまいました(品物はもう手もとにはありません(^^;)

ということで、鎌倉の常滑壷がずっとトラウマになっていました。そこで、比較的最近入手したのが今回の壷でなのです。

うーーーーん、これが鎌倉? よくって室町後期か?

内部を覗くと、粘土紐で輪を積み上げて壷を作っていく時の跡が残っています。一気に積んでいくと自重で崩れるので、いくつか積んだ後、少し乾かします。そして、また輪積み成型を続けていきます(段継ぎ)。この時にの段差が幅広の帯状に残ります(下写真)。

段継ぎの痕跡は、外側にも表れます。下の写真の左端の形をみると、3段ほどの段継ぎになっていることがわかります。

おお、そこそこ古い造りの壷か、と気をよくして、上部を観察すると、歪みのある胴体に対して、首部はスッキリと整っています。

ひょっとして、別々に作った?

再度、内側を覗いてみると、

あっ、ありました。指で押さえた痕が。口部分を別に作っておいて、ここで接合したのですね(中国の胴継ぎと同じ)。

この技法は、鎌倉時代の瀬戸の瓶子でもみられます。

どうやら、時代は鎌倉として良いようです。そういう目でみると、この平凡な壷は、その形から、土師器末期の壷の延長線上にあるようにも見えてきました(^.^)

コメント (6)
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