珍友*ダイアリー

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第二十二話

2006-09-29 16:41:31 | 第三章 手ぬぐいと明かり
「うめーーーーっ」
 おれたちは、我を忘れてガツガツ弁当を食っていた。ヤベェ、マジうめぇ。生き返る。
「お茶も飲んだら?」
 おれたちの勢いに気圧されて、半ば呆れたように樹里が言った。
「らっへ、マヒ、ふへぇほん、ほへ」
(だって、マジ、うめぇもん、これ)
 太一が口をもごもごさせながら言った。
「ちゃんと食べ終わってから言いなさいね。ちゃんと」
 そばで空音が笑っている。
「武蔵、はい。食べる?」
 せいあが紙皿におにぎりとおかずをとって、おれに差し出した。
「おう。食う」
 一気に口に入れすぎて、詰まりかけていたおかずを、お茶で流しこんでから、せいあから皿を受けとった。
 いーヤツじゃん、コイツ。 
 おにぎりにかぶりつく。途端、ブーーーッ!と、米粒を吹き出した。
「うわっ!?武蔵っ、きたねっ」
 米粒は、前にいたヨースケにまるまるかかった。
「だ…っ、だって、これ…辛っ。何コレ!?」
 せっかく拭き取った汗が、また噴き出していた。何が何だかわけが分からず、涙目で、手に残ったおにぎりを割ってみた。
「わさび…?」
 中にどっさり。もはや緑色のおにぎり。
 げろーん、となった。汗の温度が一気に5度ぐらい下がった気分。
「テメェ…」
 傍らのせいあを睨む。 
 わざとだ。絶対わざとだ。
 するとヤツは、
「そっちのレモンを食べたら、疲れがとれるかと」
 と、鶏のから揚げの間にあるレモンの輪切りを指差して、しれっと言い放った。
「これっ」 
 口を押さえつつ、声をあげた。 
 やっぱ、とんでもねー女。
 太一、オメー、別れて正解だよ。
 つき合ってたときどんな目にあわされたか、想像するだけで胸が痛むね。
 みんなが笑った。

「あ゛―――、あいつ、とんでもねーことすんなー」
 口直しにお茶を飲みながらつぶやいた。まだ口の中がジンジンする。心なしか声がヘン。
「武蔵――、大丈夫―?」 
 さすがに少し心配になったのか、空音が聞いてきた。
「あ゛あ゛…。ラウ、食う?」
 側にいたラウに、おにぎりの残りを差し出すと、ラウはちょっと臭いをかいで、すぐに鼻をフンッと鳴らした。
「けっ、このバカ犬」
 にくいっ。ペットは飼い主に似るって、あれ、ほんとだ。
「逆じゃねーの?お前と違って、頭いいんだよ、ラウは」
 ヨースケが言うと、ラウはワンッと吠えて答えた。尻尾まで振っている。
 何故か、おれ以外の人間にはとても愛想がいい。

                            ≪つづく≫


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