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メディアが伝えない「休暇分散化」検討経緯とその意義

2010-03-11 20:43:24 | 国・行政・地域の動き
政府の休暇分散案に対し、反対意見がいろいろと出ています。
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「地域ごと連休」反発相次ぐ…教育界・労組
3月9日0時3分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100308-00000967-yom-pol

 観光庁は8日開かれた観光立国推進本部の分科会で、地域ごとに休日をずらして取得するという同庁の休暇分散化案に対する教育関係者や労働組合の意見を聞いた。
 出席者からは「国民が一緒に祝日を祝うという精神文化が弱まる」(全国連合小学校長会)などと、反発が相次いだ。
 同本部は、3月中に分科会としての意見を集約した上で2012年以降の実施を目指すが、反対意見の根強さが早くも浮き彫りとなった。
 8日の会合では「部活動や全国大会開催に影響が出る」(全日本中学校長会)、「有給休暇の取得促進の方が重要だ」(連合)などの意見が続いた。藤本祐司・国土交通政務官も「実施には、相当な周知期間が必要になる」と述べ、実現に向けたハードルが高いことを認めた。
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賛成意見は報道になりにくいという事情もありそうですが、案の良い点には一切目を向けず、悪い点ばかりに議論が集中するのは、非常に残念でなりません。
変えないより変えることが大変な負担を強いられることはわかりますが、変化を拒む姿勢がじわじわと自分の首を絞めることにつながります。こういった判断・合意の遅れが経済に及ぼす悪影響は測り知れません。

その一方で、今回の休暇分散案が正式に表に出たことは、素晴らしい成果だと思います。
実は、メディアでは報道されなかったようですが、今回の案は突然政府案として登場したわけではなく、麻生政権時代に大きなキッカケがありました。

そのキッカケとなったのが、平成21年3月17日に開催された”経済危機のための有識者会合(経済界(農林水産業・運輸業・不動産業等))”での、一人の企業経営者のプレゼン内容でした。旅行産業で数々の事業再生を果たしてきた星野リゾートの星野佳路さんです。

首相官邸のウェブサイトでは、その時の星野さんのプレゼン資料、議事録、動画を全て見ることができます。
一年前にYoutubeでこの動画を見た時、的外れな官邸側のコメントに、お蔵入りされてしまうに違いないと思っていましたが、この意義ある提言がきちんと精査され、こうして日の目を見たことに、希望を感じることができました。

星野さんは、旅行産業の人間ながら、3世代旅行などの教育的意義について強調しており、そんなものあったのかと思うような「国民が一緒に祝日を祝うという精神文化」より遥かに重要だと私は思います。

星野 佳路(株式会社星野リゾート代表取締役社長)
└【提出資料】地方には魅力があるのに国内観光地が低迷する訳
http://www.kantei.go.jp/jp/keizai_kaigou/090317/090317_07.pdf

動画 47:38~55:00および1:13:00~1:14:51に星野さんの発言あり
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2473.html

議事録 p,15~に星野さんの発言あり
http://www.kantei.go.jp/jp/keizai_kaigou/090317/gijiroku.pdf

以下、議事録より星野氏発言部分を抜粋。
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日本の観光産業の競争力、世界競争力は、世界経済フォーラムの発表によると28位です。外国人の訪日観光客は大体830万人くらいです。これも大体毎年28位前後です。
世界トップはフランスです。6,000万人の人口で7,600万人を集めています。日本は本当は世界トップ5に入れる実力があると思っていますが、そこが私たち観光産業における競争力の今、足りなさだと思っています。
私、持論が2つありまして、この2つをやれば必ず観光立国になるという説があるのですが、そのうちの1つを今日は準備してまいりました。
こちらの100日と265日というふうに大きく書いてあるところを是非ご覧いただきたいと思います。
実は日本の観光産業には構造的な問題があります。地方には魅力があるのに、国内観光地が低迷するわけと書いてありますが、私たちはどの業者も大体、大枠で、これは正しいのです。100日の黒字と265日の赤字があります。
100日の黒字というのは、私たちの努力で決まっているのではなくて休日で決まっています。年末年始、ゴールデンウィーク、夏休み、または祝日がたまたま土日と重なって3日の連携になったときなどは、産業全体が黒字の日です。それ以外の平日というのは大体赤字の日となります。
見ていただくと赤字が圧倒的に多いので、年間を通して赤字になる体質を持った業界だということが、私たち観光産業の最大の問題です。
需要がある一定の日にちに集中してしまいますので、高速道路は常にこの100日に関しては渋滞です。30キロ、40キロという渋滞です。すべての料金が高くなります。恐らく価値以上に高くなってしまうわけです。ゴールデンウィークなどは値段が高い。そして、泊まりたいところに泊まれない。一生懸命仕事をしていて、ゴールデンウィークの2週間前になってプランを決めていないと、予約していないところは取れないわけです。だから旅行をやめてしまうという人がいるのですが、最近埋蔵金という言葉がはやって来たので、私はこれを考えたのですが、埋蔵内需というのが実は観光産業にはあるということです。
先ほどちょっとお話ししましたが、事業者利益は頑張っても頑張らなくてもそんなに変わりません。ということは頑張らない方が得だというマインドもどうしても生まれてしまう。
最近固定のスタッフ、それから、派遣のスタッフということも話題ですが、私たちの業界は昔から派遣が中心です。なぜかというと、100日の黒字、265日の赤字の日はどうするのか。したがって、これは固定がなかなか増やせない。したがって、優秀な人材が採れない。それは観光産業全体の競争力に影響していくということにつながっているわけです。
この裏の紙をご覧いただきたいのですが、これが実際の経済対策としての私の提言です。
お正月と夏休みを平準化するというのはすごく難しい話だと思うのですが、ゴールデンウィークを地区別に取得したらどうだろうかということが私の提案です。日本全国地域を8つに分けまして、例えば関東の例でいくと埼玉県のゴールウィークは5月の1週目、神奈川県は2週目、千葉県は3週目、東京は幾つかに分けまして、東京A 区は例えば5月の4週目。そうすると大体5月から6月いっぱいまでゴールデンウィークがどこかで続きます。
こういう政策は、実はフランス、ドイツ、フィンランド、こういう経済大国では既に行われています。
例えばフランスでは、2月2週間小学校も休み、会社も休みですが、Aという地区では、2月の1週目と2週目が休みです。Bという地区では、2週目と3週目が休みで、Cという地区では、3週目と4週目が休みなのです。
したがって、大体フランスのスキー場や観光地に行くと、2月はずっと需要が平準化していて、高速道路も渋滞しませんし、宿泊施設も平準化します。したがって、需要の平準化策というのは非常に効きます。
どのように効くかというのは、3ページ目の下の方を見ていただきたいのですが、観光すごろくというものをつくってきました。需要を平準化しますと、混雑が解消します。宿泊料金も交通料金も下がります。恐らく飛行機も下がると思います。そうすることによって希望宿泊施設が取れますので、満足度が上がります。
満足度が上がるということは、埋蔵内需の顕在化になる。今、満たされていない内需が満たされるようになっていく。これはダイレクトな経済効果だと思います。
これは業界全体の売り上げを増やしますので、私たちの業界全体は稼働率が向上し、かつ平準化します。そうすると派遣中心の社員の形態から固定中心の社員形態へと変わっていきます。そうするとサービスの質が向上します。サービスの質が向上すると、頑張る施設は利益増になりますので、いいサービスをしているところには予約が入るという状態になりますので、利益が出てくる。利益が出てくると設備投資に回るわけです。
日本の観光というのは、地方ですから、地方の建設、地方の金融、地方の農業への、観光というのは波及効果が非常に大きいとされていますので、こういったところに波及していきます。
設備投資されると、訪日外国人集客に効いてきます。まず、老朽化している施設が近代化されてくるところが一部に出てくる。
派遣社員から固定社員中心に変わっていくので、ソフトの改善が充実してくる。この2つが出てくるとやっと世界市場の中で魅力ある観光地というのが、日本の地方へ生まれてくるということになります。
よくビザの問題、空港の問題、これも大事だと私は思っているのですが、日本の車がなぜ世界中で売れているかというと、買いやすいから売れているのではなくて、いい車だから売れているわけです。
日本の観光も同じです。行きやすいから来てくれるのではなくて、魅力的だから来てくれるという形に変えていくには、私はこの需要の平準化というのが一番効く、私の持論の2つのうちの1つとして非常に重要だと思っています。
2009年今年の秋は、史上初、秋のゴールデンウィークが誕生します。たまたまなのですが、9月19日~9月23日まで5連休です。日本の高速道路は全部渋滞です。飛行機の値段は上がります。宿泊施設も普段の2、3倍の価格になります。
このままですと、今年の9月はみんな増収して、来年の9月はみんな減収するわけです。
要するに、需要のアップダウンによって、いい年と悪い年が決まっていってしまう。もしこの秋のゴールデンウィークも地区別取得ができたならば、10月1日~11月30日まで需要が平準化します。
そうすると、いろは坂で渋滞の中ではなくて、ゆっくり紅葉が見られるようになったりするわけです。
日本中どこかで必ず紅葉のピークがありますので、必ず自分の休みのときに紅葉のピークの場所があるというそんな国土になっていきます。
年末年始、春のゴールデンウィークは5月、6月、夏休みがあって、秋のゴールデンウィークは10月、11月、そして、年末年始と、通年で需要が平準化してくると、私たちの業界の経済効果というのは非常に大きいと思っています。

質問:ゴールデンウィークの平準化に、何が問題になるか。

学校もそうですし、どういう地域で分けるかというのが大事で、埼玉県、神奈川県というのは、私が例として出したのですが、フランスなどでは、国全体を3つのエリアに分けていまして、3つのエリアと言っても大きく3つではなくて、各地域ごとにA BCと組んで、それぞれが渋滞しないように、一緒に休まないようにしていますし、ほかの国でも同じような政策が取られています。
学校の問題もありますし、会社の問題もあります。会社はどちらかというと最近かなりフレックスで、自分の好きな時間に休みが取れるようになりましたので、学校が一番大きな課題だと思います。
家族と旅行するということは、教育にとってはすごく大事だと私は思っていまして、家族旅行という意味でも、今、日本のファミリーは非常に大変なわけです。ゴールデンウィークの一番高いときに子供2人、3人いる家族が5人分払って旅行しなければいけないという現象が起きているわけです。
ですから、家族旅行を推進するという意味でも、需要を平準化すると、行きやすくなると思います。
学校の問題は確かにあるのですが、たまたま教育委員会も県別に教育のシステムができていますから、県別に学校の休みを日本の中で出していくということは、真剣に取り組めばできるのではないかと思っています。

休みの平準化というのはものすごく大事で、2月はこれが起こりました。昨年の2月11日の祝日が土日にかかっていたわけです。3日連休だったわけで、日本中の観光地は2月の売り上げは、今年の2月より高かったと思います。今年の2月に、どこもみな落ちたのは、経済の影響ではなくて、休みの影響というのがすごく大きかったと思います。

今でも平日に旅行している人は、平日に行っています。平日の方が快適なわけです。ですから、混んでいるべきではなくて平日に行くということは今も行われているのですが、飛騨高山も、平日と土日の差は、行って見ていただければ、一目瞭然なくらい、赤字の日と黒字の日が確実になっています。
最近よくなってきているのは、黒字幅が増大したということであって、決してこの比率が変わったわけではないと私は思います。
もう一つは、高齢者にとっての旅行の目的が変わってきていると思います。昔は家族みんなで住んでいて、たまにだれかが旅行に行く。今は核家族化していますから、旅行こそが3世代旅行の一つの機会になっているわけです。おじいちゃん、おばあちゃんと、お父さん、お母さんと孫が一緒になって旅行する。私たちのところにも3 世代でいらっしゃる方はすごく多いです。ばらばらに住んでいる家族が、一つになってみんなで旅行する機会として、旅行をとらえているということがあります。おじいちゃん、おばあちゃんと会う機会は、小学生にとっては旅行だということがあるわけです。
したがって、高齢者の旅行もかなり休みに影響するということがあります。
3つ目に、そうは言っても、日本全体の人口は減少して来ます。したがって、旅行のマーケットそのものは国内の需要に頼っていると、ボディブローのように減少していくわけです。だからこそインバウンドであり、外国からの訪日旅行者を増やさなくてはいけません。そのためには世界の中で競争しているわけですから、日本の観光地の競争力を世界水準に上げていく必要があります。
したがって、頑張っているところが黒字体質になる。設備投資が生まれる。そういう循環をつくっていくことが大事だと私は思っています。
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抜粋、ここまで。
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