「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.629 ★ 日中ホットライン使わず 中国軍領空侵犯時 形骸化浮彫り

2024年09月06日 | 日記

中國新聞

2024年9月5日

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No.628 ★ 中国 内陸部の電力制限、日系に影響=ジェトロ

2024年09月06日 | 日記

NNA ASIA

2024年9月5日

中国内陸部の四川省成都市や重慶市で、猛暑を受けた電力供給制限の影響が現地の日系企業にも出ている。日本貿易振興機構(ジェトロ)成都事務所がまとめた調査によると、成都市では回答企業の37%に当たる11社が「事業に影響がある」と答えた。

調査は成都市、重慶市の商工クラブ会員を対象に実施。成都では8月30日~9月2日、重慶では8月30日~9月3日の状況を聞いた。回答企業数は、成都が30社、重慶が23社。

「事業に影響がある」と答えた成都の企業からは、製造業で「日中の稼働停止を求められ、夜間にシフトを変えるなどして対応した」、小売業で「照明の数を通常の3分の1に減らすよう求められた」といった声が出た。

重慶では、回答企業の22%に当たる5社が「事業に影響がある」と答えた。「工場を休みにするため、従業員の出勤日を調整して対応した」などの声があった。「事業に影響はない」と答えた企業の中には、「毎年停電が発生するため、在庫を多めに用意した」という企業があった。

ただ、全面的に稼働を停止したのは成都市の企業1社だけだった。

水資源が豊かな四川省は電力の約8割を水力発電に依存している。河川の水量減少に伴って発電量が落ちたり、猛暑でエアコン需要が拡大したりすると、電力需給が逼迫(ひっぱく)する。2022年には猛暑の影響で電力の供給制限の動きが広がり、現地に工場を持つトヨタ自動車が工場の稼働を止めるなど、日系企業にも影響が出た。

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No.627 ★ 中国のネット世論操作活動、米有権者標的に=SNS分析企業調査

2024年09月05日 | 日記

ロイター

2024年9月4日

米大統領選投票日を11月5日に控え、中国が米国の有権者になりすましてソーシャルメディアを利用し、米政治家を中傷し分断をもたらすようなメッセージを流していることが分かった。米ジョージア州アトランタで5月撮影(2024年 ロイター/Alyssa Pointer)

[3日 ロイター] - 米大統領選投票日を11月5日に控え、中国が米国の有権者になりすましてソーシャルメディアを利用し、米政治家を中傷し分断をもたらすようなメッセージを流していることが分かった。ソーシャルメディア分析企業グラフィカが新調査を発表した。

「スパムフラージュ」と呼ばれる工作は、中国国家当局とつながりがある世論操作活動の一環。スパム(迷惑メッセージ)を拡散したり、世論誘導のために標的を絞った宣伝活動をネット上で展開したりしている。専門家によると「スパムフラージュ」は少なくとも2017年から行われているが、こうした工作は選挙が近づくにつれてより活発になっている。50を超えるウェブサイトやソーシャルメディアプラットフォームで数千のアカウントを活用している。

グラフィカの調査チームを率いるジャック・スタッブズ氏は「米国を標的とした中国の世論操作活動が進化し、虚偽的な行為がより高度になっている」と指摘。スパムフラージュが米国の政治的な会話に潜入し、虚偽的行為による攻勢を一段と強めていると説明した。

具体例としては、米国の反戦活動家になりすまし、交流サイト(SNS)のXで複数のアカウントを使って、トランプ前大統領にオレンジ色の囚人服を着せて 「詐欺師」と称したり、バイデン大統領を「臆病者」と呼んだりするミームを作成したものがあるという。

スパムフラージュのメッセージは、民主党もしくは共和党のどちらか一方の政治的立場を支持するものというより、米国社会や政府への批判を高めることを狙っているとみられる。

在ワシントン中国大使館のリウ・ペンギュ報道官は「中国は米国の選挙に干渉する意図はないし、干渉するつもりもない」とコメントした。

一方、米国政府は選挙に介入しようとする外国勢力の試みを調査している。米国家情報長官室は7月に発表した選挙介入に関する報告書で、中国が今回の米大統領選に慎重に臨んでおり、選挙結果に影響を与えるつもりはないと指摘しながらも「米国民により広く影響をもたらそうとする動きを追跡している」と強調している。

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No.626 ★ 「リーマンより厳しい」中国不動産バブル崩壊の惨状、習近平政権の  「ズレてる」政策で不況悪化か

2024年09月05日 | 日記

DIAMOND online (真壁昭夫:多摩大学特別招聘教授)

2024年9月3日

写真はイメージです Photo:PIXTA

中国の不動産価格下落に歯止めがかからない。かつて中国の不動産投資はGDPの約29%に達した。鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの関連需要が増え、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長した。地方政府も潤い、まさに不動産を中心に経済が好循環していた。しかし、今はそれが逆回転している状況だ。政府は国有・国営企業に補助金を出し、低価格のモノを大量生産して景気回復を試みている。が、中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」という。中国にまず必要な政策とは何か。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国の不動産バブル崩壊は 過去30年間で世界最大

 2020年8月、中国政府の不動産開発会社の借り入れ規制(3つのレッドライン)をきっかけに、中国の不動産市場に変調が発生した。そこから4年が経過したが、不動産価格の下落になかなか歯止めがかからない。7月にも新築の住宅価格が下落し、地方政府の財政悪化に対する懸念が高まっている。

 最近、国際通貨基金(IMF)は、「中国の不動産バブル崩壊は、過去30年間で世界最大レベル」と指摘した。中国の大手デベロッパー恒大集団(エバーグランデ・グループ)の粉飾決算問題もあり、今のところ、不動産関連の債務規模の実体すらよく見えない。中国経済の停滞への懸念から、中国から脱出する個人や企業が増えている。

 中国政府の政策も、人々の安心感を取り戻すには至っていない。不動産価格の下落に歯止めがかからないため、家計の節約志向は高まり個人消費は伸び悩み気味だ。また、政府が国有・国営企業の業容拡大を優先する結果、鉄鋼業界などの主要分野で価格下落に拍車がかかっている。

 中長期的に、中国の人口は減少する。民間企業の生産性が向上しないと、中国経済の実力=潜在成長率は低下する。不良債権処理の先送り、国有企業重視の政策方針が変わらないと、不動産市況の悪化は鮮明化しデフレ圧力が高まることも考えられる。

かつて不動産投資はGDPの3割に達したが…下落が続く中国の不動産市場

 8月15日、中国の国家統計局は不動産関連の経済指標を発表した。主要70都市の新築住宅価格は、単純平均で前月比0.6%、中古住宅価格は前月比0.8%下落した。不動産価格は下落傾向を脱していない。

 23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、一時的に、不動産市況も幾分か上向くかに思われた。しかし、政府の融資規制でエバーグランデや碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)などの大手デベロッパーの業績は悪化。それに伴い、未完成のまま放置されるマンションは増えた。23年6月から新築住宅価格は下落傾向で、7月は主要70都市のうち66都市で前月から下落した。

 地方だけでなく、北京、上海、広州、深センなどの都市部でも住宅市場は悪化傾向にあるようだ。都市の規模が小さいほど、価格下落率は高い。中国の不動産市場では価格下落に対する恐怖感が高まり、不動産購入に消極的なスタンスが続いている。

 1~7月の累計で、不動産開発投資は前年同期比10.2%減少した。同じ期間、新築不動産の販売面積は同18.6%減少し、新規着工は前年比23.2%減だった(販売、着工とも床面積ベース)。デベロッパーは債務の返済や住宅の完成に向けて資金調達を急がなければならないが、資金調達額は21.3%減少している。状況はかなり厳しい。

 過去のピーク時、中国の不動産投資はGDPの約29%に達したとの試算もあった。マンションなどへの不動産投資が増加したことで鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの需要は増え、インフラ関連の投資を増やすこともできた。それに伴い、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長し、雇用・所得機会が向上した。地方政府はデベロッパーに土地の利用権を譲渡して歳入を確保し、産業補助金なども確保することが可能になった。まさに、不動産投資を中心に経済が好循環していた。

若年層を中心に雇用環境は悪化 16~24歳の失業率は17.1%に上昇

 しかし、不動産投資に依存した経済成長は限界に来ている。マンション建設など投資機会の減少により、需要は縮小気味だ。特に、深刻なのは若年層の失業である。

 23年6月、16~24歳の失業率は21.3%で過去最悪の水準に上昇した。その後、国家統計局は調査手法を修正するとして公表を一時停止し、24年1月から再開した。7月、16~24歳(学生を除く)の失業率は17.1%だった。6月の13.2%から3.9ポイントの上昇である。

 中国では例年6月に大学生が卒業する。今年は4月中旬時点で新卒大学生の内定獲得割合が50%を下回ったとの報道もあった。バブル崩壊の影響で新卒の就職が難しくなり、失業率は上昇したと考えられる。全体の失業率も5.2%で、6月から0.2ポイント上昇した。

 19年の中国人民銀行の調査によると、中国の家計が保有する資産の59.1%は不動産だった。マンションの価格下落に加え、上海総合指数など本土の株価も不安定な展開だ。逆資産効果は高まらざるを得ない。しかも中国では、不動産の完成前に売買契約を結び住宅ローンの返済が始まる「予約販売」方式が多い。購入したマンションが未完成で放置されてもローンの支払いはなくならない。

 債務を減らすために、消費や投資を減らす個人が増加し、個人消費は停滞気味だ。7月の個人消費は前年同月比2.7%増だったが、コロナ禍が発生する直前の水準(7%前後)と比較すると、消費の勢いは弱い。

 需要の停滞は企業の設備投資の減少につながり、固定資産投資も鈍化した。度重なる金融緩和にもかかわらず7月の新規人民元建て銀行融資は前月比約88%減少し、15年ぶりの水準に落ち込んだ。

 現在、中国政府は、市中の商業銀行に不動産や国有企業などに対する融資を増やすよう指導している。しかし、不動産市場の底が見えないため、民間企業は人員採用や設備投資を増やすことが難しい。若年層を中心に中国の雇用・所得環境の悪化懸念は高まっている。

中国宝武鋼鉄集団のトップ発言 「リーマンショック時よりも状況は厳しい」

 不動産価格の下落に歯止めがかからないため、最近では国債を選好する投資家が増えている。中国政府は、銀行に国債購入を控えるよう呼びかけているものの、今のところ目立った効果は出ていない。

 今後は地方政府の財政悪化により、年金や医療などの給付が減る可能性も大変な懸念事項だ。また、デベロッパーが破綻することへの懸念を反映し、不良債権も増加傾向で推移するはずだ。個人、企業のリスクテイクは難しくなり、銀行の利ざや低下に対するプレッシャーが高まると予想される。

 バブルが崩壊したことによる不良債権の増加、さまざまなモノやサービスの需要減少が連鎖する環境下、金融緩和で景気の本格的な回復を目指すことは難しい。中国にとって必要な政策は、まず、財政出動によって不良債権の処理にめどをつけることである。それと同時に、財政支出で経済全体に需要を喚起する。債務問題が深刻な金融機関などに公的資金を注入し、経営再建を支えることが必要だ。

 ところが、現在の中国政府は、供給サイドの支援を最優先事項に据えているようだ。7月の「3中全会」(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)で、政府は国有・国営企業の世界シェア拡大を目指す「国進民退」を改めて示した。

 その後、地方政府の債券発行枠も増やした。鉄鋼、電気自動車、車載用バッテリーなどの分野に補助金を出し、低価格のモノを生産し輸出競争力を高める方針だ。

 しかし、すでに鉄鋼業界では生産能力が過剰で、企業の収益状況が悪化しているようだ。世界最大手の国有企業の中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」との認識を示している。不動産市況の下落が続く間、中国の本格的な景気回復へのプロセスは見えてこない。

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No.625 ★ 習近平でも止められない中国経済の衰退 不動産不況で急増する“自己破産”と抗議運動 

2024年09月04日 | 日記

MONEY VOICE (勝又壽良)

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中国はかつて40年にわたる高い経済成長を誇っていたが、新型コロナウイルスのパンデミックを契機にその繁栄は急激に揺らぎ始めた。不動産バブルの崩壊により、市民生活は失業や住宅詐欺といった深刻な問題に直面し、抗議運動も増加。一方、習近平国家主席は経済危機を軽視し、消費刺激策を拒み続けている。このままでは中国経済の衰退は避けられないだろう。(『 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

中国経済はコロナで一変

中国は、鄧小平による改革開放(1978年)によって、40余年もの間、高い経済成長率によって国民生活が改善してきた。国民へ選挙権は与えられなかったが、平均約10%の経済成長によって、生活を楽しむゆとりが持てた。海外旅行も活発であった。地球の至る所に中国人が足跡を示す時代を迎えた。

それが、2020年の新型コロナ発生によって局面は大転換した。それまでが「天国」とすれば、3年間のパンデミックによって「地獄」へ変わった。この劇的転換によって、中国経済を支えてきた景気の中身が不動産バブルであり、この「仮面の繁栄」は脆くも崩壊したのだ。

こうして経済環境が一変した。市民は、失業と賃下げリスクに怯えている。さらに悪夢と化したのは、住宅ローンを払い続けても住宅が手に入らない一種の「住宅詐欺」に遭遇する事態となったことだ。不動産開発企業が、資金繰り難で工事を続行できず放棄する羽目になった結果である。これが、市民の抗議活動を増加させている。

中国は、国民2人に1台の割で監視カメラが設置されているという。国民の抗議行動は、事前に抑制できるシステムが完備している。だが、不満と不平を抱える国民の悩みは、確実に抗議行動へ移っている。米人権団体フリーダムハウスの「中国反体制モニター」が集計したデータによれば、今年4~6月に記録された抗議件数は、前年同期比で18%も増えている。8月発表のリポートでは、大半が経済問題に関連した抗議だという。44%が労働に関連し、21%は不満を抱いている住宅所有者によるものだと指摘した。

抗議理由の「労働」は、失業や賃金未払いなどだ。「住宅」は、ローンを払い続けながら住宅が手に入らない問題であろう。中国政府は、こうした不満が政治不信へ拡大する事態になると、極めて厄介な問題になる。インフレが猛威を振るった1989年に、北京の天安門広場で民主化を求める学生らのデモ参加者が流血の弾圧を受けたからだ。こういう前例をみても、経済の不満と不安はいつか「大衆運動」へ点火するリスクを孕んでいる。

習氏は個人消費を軽視

習氏は、国民生活に直結する「個人消費刺激策」に対して消極的である。習氏の目には、国民生活への支援が「西欧流福祉主義」に映るようである。これは、中国国民から「革命精神」を奪う危機と捉えている。習氏は、共産党革命行動で最大危機であった長征(1934~35年)の1年間に及ぶ行軍が、最終的に革命を成功させた要因と位置づけている。この間に養われた「不撓不屈」の精神が、共産党革命を成功に導いたと信じているのだ。

習氏は、現在の経済危機が「長征」に匹敵するという理解である。ここで、経済的苦難に打ち勝って製造業を強化すれば、台湾侵攻が可能になる。さらに、米国との戦争を勝ち抜き世界覇権を握れるという遠大な夢に結びついている。こういう、毛沢東張りの大構想を描いている習氏にとって、現在の経済不振は「蚊に刺された」程度の認識であろう。中国経済の深刻さは、この習氏の経済観の間違いに原因がある。蚊に刺されたどころか、命に関わる事態がこれから待っている現実に気付かねばならないのだ。

不動産価格の下落は、新築住宅だけの話ではない。住宅資産価格全体の引き下げに通じる難題だ。住宅ローンの有無にかかわらず、全ての住宅評価に波及する問題である。こうして、住宅相場が下がれば資産価値全般が減って、自然と消費支出を減らす結果になる。習氏には、こういった価格波及過程が頭に浮かばないのであろう。市場機能を否定している習氏は、経済の連鎖反応を認めないのだ。

「自己破産」の困窮度

中国では現在、所得の伸びが鈍化し、失業が広がっている。こういう状況下で、持ち家の評価額が下がることで、「ネガティブ・エクイティー」といわれ状態が発生している。これは、ローンで購入した物件価格が急落して、ローン残高を下回るケースを指している。

この状態になると、無理して住宅ローンを返済することに疑問の念を抱かせるようになる。延滞することで、事実上の「自己破産」するのだ。中国にはまだ、自己破産の法律がなくローン延滞者には手厳しい経済的制裁が科されている。高速鉄道に乗車できないとか、人権無視の制裁である。それでも、経済的な困窮から脱したいという人々が存在する。

ネガティブ・エクイティーの恐怖は、銀行にも及んでいる。自己破産した物件は、競売に付せられる。その数は23年に過去最多を更新した。ブルームバーグがまとめたデータによれば、銀行は23年に247億元相当(約5,400億円)の住宅ローン不良債権を担保とする金融商品を発行した。これは、過去最高額とされる。

ローンの返済を怠った住宅所有者は、銀行が起こした訴訟に引きずり込まれ、自宅差し押さえの憂き目に遭う。持ち家は、最終的に20~30%程度の値引きで売却される。自己破産者は、前述のように非人間的な制裁を受けている。それだけに、なんとか自己破産しないように歯を食いしばって返済している状況だ。こうなると、稼得所得はまず住宅ローン返済に向けられ、余った金で生活する事態へ追い込まれる。生活を切り詰めるほかないのだ。

ブルームバーグのデータによると、中国の家計負債は2023年末時点で、1人当たり可処分所得の145%にも達している。過去最高水準を記録した。英国は126%で、米国が97%である。この状態で、中国の消費回復など期待する方が無理である。

さらに問題は、短期的に住宅相場の底入れが望めない点だ。習近平氏は、住宅問題に対する関心が薄く、政府補助金はひたすら製造業振興へ向けている。こうした状況では、今後も住宅価格の値下がりが続くであろう。

中国の家計は、すでに崩壊状況にある。中国社会は、家計資産の7割が不動産である。住宅価格が5%下落するごとに、19兆元(約380兆円)の住宅資産価値の消失になるとブルームバーグが試算している。これからもなお、30%の下落が予想されている。約2,300兆円が消える計算である。この状況で、中国の家計が保つだろうか。冷静に判断すれば、「不可能」という3文字が浮かぶはずだ。

ブルームバーグ・エコノミクスによれば、住宅セクターの経済におけるウエートは、26年までに中国GDPの約16%にまで縮小する可能性がある。それにより、アイルランドの人口に匹敵する約500万人が失業や収入減のリスクにさらされる恐れがあるとしている。『ブルームバーグ』(5月20日付)が報じた。

西側福祉主義を忌避

以上の記述によって、中国経済が不動産バブル崩壊によって最大の危機にあることが、実証されよう。習近平氏は、これにもかかわらず「イデオロギー」遵守に徹している。「中国式現代化」とは、中国が中国式社会主義によって「中華民族の復興」を目指すものである。習氏は、これから経済的な苦難が起ころうとお構いなく、共産主義路線を貫徹する姿勢を取っている。極めて危険な賭である。

中国のエコノミストや投資家らは、GDPを押し上げるべくもっと大胆な取り組みを中国政府に求めている。特に個人消費の喚起策として、必要なら新型コロナウイルス下で米国が導入した現金給付を実施すべきとしている。中国が、米国に近い消費者主導型の経済へ移行を加速させれば、成長が長期的に持続可能となる、とエコノミストらは指摘するのだ。

だが、習氏は先述の通り消費刺激策を「国家福祉主義」として否定する。一方で、習氏の唱える「共同富裕論」は、まさに福祉主義であろう。西側の「国家福祉主義」と、習氏の「共同富裕論」はどこが違うのか。

習氏の視点によれば違うようだ。欧米流の消費主導による経済成長に対し、習氏は根深い反対論を抱いている。中国政府の意思決定をよく知る複数の関係者は、そう指摘するという。習氏は、欧米流成長に浪費が多く、中国を世界有数の産業・技術大国に育てる自身の目標とは相いれないと考えているというのだ。

習氏はまた、中国が財政規律を守るべきだとの信念を持っている。中国が抱える債務総額が、対GDP比で300%を超えている現状では、習氏の指摘にも一理がある。この結果、米国や欧州のような景気刺激策や福祉政策を導入することは考えにくい、と中国政府関係者は指摘する。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(23年8月31日付)が報じた。

習氏は、計画経済である社会主義が、合理的な政策決定を行うのに対して、市場経済である資本主義経済は無駄な支出を行っていると規定している。これは、習氏が共産主義というドグマに支配されていることを如実に表している。旧ソ連が崩壊した事実こそ、計画経済の非現実性を示している。この歴史的事実を、棚に上げているのだ。

高速鉄道が無用の長物

その無駄な一例として、高速鉄道建設を挙げれば十分であろう。

中国は、インフラ投資による経済成長の一環として高速鉄道建設に邁進している。国家鉄路局によると、中国国内で営業する鉄道路線は23年に15.9万キロと、過去5年で2割も増えている。このうち高速鉄道は同4.5万キロで、18年より1.6万キロも延びた。毎年のように、日本の新幹線の総営業距離に相当する路線を新規開設してきた計算だ。

これだけ急ピッチな建設であるから、最初から採算は度外視である。23年12月期業績は、営業総収入が1兆2000億元に対し純利益は33億元。純利益率は0.28%に過ぎない。負債総額は、6兆1282億元(約125兆円)もある。年間純利益で返済すると1857年もかかる計算である。事実上、利益での返済は不可能だ。

日本の旧国鉄の累積赤字は、民営化直前の1987年に31兆2000億円であった。中国高速鉄道の累積赤字は、2022年末で122兆円である。旧国鉄赤字の3.9倍にも達している。今後の路線延長と人口減でさらに赤字は膨らみ続ける。その対策はゼロだ。日本は、赤字脱却策として国鉄民営化(JR)へ踏みきった。市場原理の導入である。現在のJRは、健全経営に向っている。

中国が、高速鉄道経営で失敗した例をもう1つ挙げておこう。

路線拡大を優先し、駅の設置計画が極めてずさんな計画であった。駅を開設したものの未使用や、使用率が低くてすぐに閉鎖した駅があるのだ。これは、事前調査が不十分で、ただ路線を拡大すれば目的を果すという適例であろう。中国には同様に稼働していない高速鉄道駅が少なくとも26カ所あり、このうち8カ所は完成から一度も使われないまま放置されているという。

中国では、人口急減という鉄道経営の根幹に関わる事態がこれから発生する。国連が2年に一度推計する各国人口によれば、中国人口は激減する。2024年をベースにして、2054年は14%減に。2100年は、実に55%減になる。超高齢社会では、高齢者の鉄道利用率が減る。中国自慢の高速鉄道は、「空気を運ぶ箱」に一変するのだ。これは、中国がいかに合理的な経済計算を行っていないかを示す適例である。

中国は、習氏の描く「中国式現代化」によって、過剰債務を解決できず逆に増えるという最悪事態が想像できる。これを回避するには、市場経済中心の「民進国退」へ戻るしか道はない。だが、習氏が国家主席にとどまる限りその可能性はゼロである。先の「3中全会」で「中国式現代化」を承認した以上、路線変更は不可能である。中国経済の将来は、衰退局面を早めるだけであろう。共産党政権を守るための犠牲である。

勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

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