佐藤亜有子さんの遺著『ママン愛人ラマン』が出版された

2014-06-03 | 話題
【記者ノート】愛を書いた 愛を求めた

小説『ボディ・レンタル』で知られ、今年1月5日に急性薬物中毒のため43歳で死去した作家の佐藤亜有子さんの遺著『ママン愛人ラマン』が、河出書房新社から出版された。

自身が抱える心の傷を、作家は最期まで文学に昇華させようとしていた。

佐藤さんは1969年、岩手県生まれ。

東大仏文科卒業後、96年に『ボディ・レンタル』が文芸賞優秀作となった。

女子大生が自分の体をレンタルし、客に応じてモノになる姿を描く。

「心」と「体」を切り離し、主体的に生き、愛することはできるのか――。

翌97年には、被害者の二重生活が注目された東電OL殺人事件が起きる。

同作の主題は、人間の生き方が自由になった時代の光と影をも映していた。

同年に「葡萄ぶどう」で芥川賞候補となったが、次第に執筆から遠ざかる。

佐藤さんは実は、子供の頃に心が傷つけられ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えていた。

夫の平明典さん(52)とは、治療先の病院で10年前に知り合った。

平さんは外国で人間が大量に虐殺される現場を目撃した体験があり、同じ病を抱えていた。

「非常に聡明で正直。一緒にいて助けられた」。

キノコ狩りや海外旅行を楽しんだ。

一方、つきあい始めた頃はジンを簡単に一本空けるほど飲んだ。

飲酒癖はやまず、2007年には妊娠したものの、心の傷の連鎖を恐れ、産まなかった。

『ママン愛人ラマン』はその後、書き始められた。

主人公は、息子を亡くした大学教員だ。

飲酒と薬剤におぼれる彼女のもとへ、息子に似た学生が現れ、不倫関係となる。

<ぼくは男です。恋しい女にしたいことをする>

産まなかった子への愛情を、代わりに小説の中で学生に注いだなどと、同作を読みたくない。

どのような傷を抱えても、人間は愛によって変わる。

自分を変えるような愛を強く求めずにはいられないのだ。

仏文学のような流麗な言葉で、自分の宿命である愛の問題と向き合った。

体調が悪い中、佐藤さんは少しずつ書き継いだという。

最期まで作家であろうとしたのだ。

この一年の佐藤さんはアルコール依存が進み、リクライニングチェアで寝起きしていた。

体力低下に加え、処方された睡眠薬と酒の摂取が重なり急性中毒症状を起こした。

「……ありがとうって言いたい」。

今の心境を語る平さんは、新刊をまだ読むことができない。

(文化部 待田晋哉)

(2013年7月30日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20130723-OYT8T00501.htm?from=navlk








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