【設定情報】喰屍鬼編

　書き直すのが面倒だったので、今回は敬語になってません。


概要……
　喰屍鬼《グール》は吸血鬼に襲われた被害者のうち、吸血鬼として蘇生せずそのまま死ぬことも無かった個体が変化するもので、ただ肉を喰らうだけのゾンビの様な存在である。喰屍鬼という名称で呼ばれているが、実際には生きた人間をより積極的に襲う。
　非常に怪力で（ただし火事場の馬鹿力的なもので、吸血鬼の様に極端に筋力が強化されているわけではない）俊敏であるが、知能を持たないためその敏捷性が有効に作用する事態は少ない。
　その喰屍鬼《グール》群の最上位個体を直接噛んだ個体の肉声による命令には服従するが、きわめて単純な命令しか実行出来ない。

喰屍鬼が忌避される理由……
　喰屍鬼は吸血鬼が噛まれ者《ダンパイア》を作ろうとした失敗例であるとみなされている。
　下位個体が人間を襲って血を吸うと上位個体は下位個体が被害者から奪った魔力の大半を奪うことが出来るが喰屍鬼が人間を襲っても肉を喰らうだけで魔力を吸い上げることが出来ないためで、それに加えて知能を持たないために痕跡の隠滅等も行えず、人間側の警戒を招くからである。
　また、高位の吸血鬼になればなるほど、犠牲者が喰屍鬼には変化しにくくなるのも理由のひとつである。

変化の条件……
　喰屍鬼は吸血鬼による吸血で変化するほか、喰屍鬼に喰われる際にも変化する。喰屍鬼に噛みつかれた人間が死ぬと、そこから喰屍鬼に変化する例が確認されている。ただし、すでに死んでいる人間の肉を喰らっても、喰われた死体が喰屍鬼に変化することは無い。
　未吸血の吸血鬼個体であるヴェドゴニヤの様に上位個体の死亡によって生身の人間に戻ったりすることは無い。
　また、最上位個体を噛んだ吸血加害者が死亡しても、一斉に死滅したりはしない。加害者が吸血鬼である場合は蘇生前に加害者が死亡するとただの死体に戻るが、喰屍鬼として蘇生済みの状態であればそのまま活動を続ける。
　吸血鬼による吸血の影響で変化した喰屍鬼の場合、上位個体が既に現場にいなくても噛まれ者の蘇生防止処置、すなわち脳・脊髄・心臓・肺のいずれかもしくはすべてを破壊することで蘇生を防ぐことが出来る。
　また、喰屍鬼独自の蘇生防止処置として、視床下部を破壊することによっても蘇生の防止が可能である。ただし喰屍鬼適性者と吸血鬼適性者の区別がつかない状況である場合、前述の四ヶ所を破壊するほうが確実であるため、意図的に視床下部を破壊しようとすることは滅多に無い。あえて行うなら、頭部を縦に両断することで脳も視床下部ももろともに破壊出来る。
　加害者が喰屍鬼である場合は、被害者の蘇生前に上位個体の喰屍鬼が死亡しても被害者はそのまま喰屍鬼として蘇生する。後述もするが、このケースの場合は前述の四大器官を破壊しても蘇生を阻止することは出来ない。このケースにおいて蘇生前の死体をただの死体に戻そうとする場合、視床下部を破壊しなければならない。

吸血鬼による喰屍鬼化と喰屍鬼による喰屍鬼化の相違……
　吸血被害者が変化する喰屍鬼と喰屍鬼の被害者が変化する喰屍鬼の違いとして、吸血被害者の変化した喰屍鬼は蘇生までの時間が数時間～数日と噛まれ者に変化する際とさほど変わらないのに対して、喰屍鬼の被害者の遺体が喰屍鬼に変化するまでには数分から数十分のタイムラグしかない点が挙げられる。
　また、吸血鬼に噛まれた喰屍鬼適性者の死体が上位個体の死亡及び脳・脊髄・肺・心臓の四ヶ所の一部または全部を破壊されることで蘇生しなくなるのに対して、喰屍鬼に喰われた遺体は蘇生の条件を満たしていれば、損壊の程度にかかわらず必ず喰屍鬼になるのも特徴のひとつである。
　蘇生の条件は『視床下部が無傷で残っていること』。喰屍鬼に噛まれて死んだ遺体は視床下部さえ残っていれば、どんなに損壊していても喰屍鬼として蘇生する。

喰屍鬼の耐久性……
　知能を持たない半面、喰屍鬼は非常に強靭である。
　胴体と首が切断されても霊的な回路《パ ス》によって接続されているため、胴体だけでも行動し続ける。同様に、腕や足を切断しても手足は動きを止めない。
　またカロリー摂取のために行動しているわけではなく、飲まず食わずの状態であっても餓死することは無い。

弱点……
　喰屍鬼の弱点も視床下部である。喰屍鬼を破壊する手段は霊体を破壊するか視床下部を破壊する以外では全身を潰すしかないが、たとえ霊的な破壊力を持たない攻撃であっても、視床下部にごく小さな損傷が出ただけで喰屍鬼はただの死体に戻る。この場合、死体は消滅しない。
　なお、喰屍鬼として蘇生した吸血被害者は噛まれ者に再変化することは無い。同様に噛まれ者として蘇生した吸血被害者も、喰屍鬼に再変化することは無い。

喰屍鬼に襲撃された人間の救助方法……
　喰屍鬼に襲われた人間が既に死亡している場合、助ける方法はありません。
　吸血鬼に血を吸われた喰屍鬼適性を持つ遺体と違って、喰屍鬼に食い殺された人間は極めて高確率で喰屍鬼として復活します。
　上位個体の魔素によって外傷が治癒し、脳の状態もそのまま保たれる噛まれ者と異なり外傷もそのまま、脳の機能も損なわれており、加害者が吸血鬼であれ喰屍鬼であれ加害者が死んでも喰屍鬼のままであるため、死亡した時点でもう助かりません。

　対して被害者がまだ生存していた場合ですが、この場合は被害者が死亡しないまま一定期間生存すれば喰屍鬼化の恐れはなくなります。ちなみに、二、三日程度であれば喰屍鬼にまったく関係無い死因であっても（例……転んで頭を打つ、車に撥ねられる、窒息死等）喰屍鬼として蘇生します。その場合、復活する条件は上項『吸血鬼による喰屍鬼化と喰屍鬼による喰屍鬼化の相違』に準じます。