徒然なるままに修羅の旅路

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悲……大阪ナイフショーは完全中止になりました。滅べ疫病神

The Evil Castle 21

2014年11月09日 23時47分54秒 | Nosferatu Blood LDK
 ――生体熱線砲バイオブラスターか!
 キメラなどが備えたレーザーなどの熱線砲の照射器官を生体熱線砲バイオブラスターといい、その熱線照射器官を備えた個体を生体熱線砲装備型バイオブラスタータイプと呼ぶ。ほかに同型種がいようがいまいが、ほかの種類のキメラと区別がつきやすい様にするためにバイオブラスターと呼ぶことに決めたのだが――はそれ・・の同型種らしい。
 廊下で遭遇戦になった個体がこのホテルで生まれたバイオブラスターの第一世代グレードのはずなので、つまり――こいつはエルウッドと交戦したあのバイオブラスターと同様に魔術師によって直接取り上げられた兄弟もしくは彼ら・・がホテル内の宿泊客を妊娠させた結果生まれた子供・・だ。

 キメラが繰り出した放熱爪を躱し、ミンチ・メイカーの銃口をバイオブラスターの左目あたりに押しつけてトリガーを引く――だがそれよりも早くバイオブラスターが回避行動をとったために発射されたスラッグ弾は壁をぶち抜いただけに終わり、ゴキブリみたいに壁を這いずって銃弾をささっと躱したキメラがげげげげ、とこちらを嘲笑う様な鳴き声をあげた。
 とりあえずそちらは無視して、頭上を振り仰ぐ。
 破壊叫ブラストヴォイスとでも名づけておこうか、ヤモリの様に天井に張りついたキメラの鈎爪がバイオブラスター同様長く伸びている。
 その鈎爪の輪郭が、耳障りな低周波音とともに徐々にブレ始めた――藪蚊の羽音の様な低周波音がやがて耳を劈く様な高音域を経たあと、爆音めいた音を発してから聞こえなくなる。
 あれは――
 アルカードは小さなうめき声を漏らし、右手に塵灰滅の剣Asher Dustを構築しながら床を蹴った。
 あれが実用出来るほどの振動周波数に達する前に、確実に止めなければならない――エルウッドにはアルカードほどの再生・復元能力が無い。もし自分がバイオブラスターにかかりきりになっている間にブラストヴォイスがエルウッドに背後から襲いかかったら、エルウッドに防ぐ術は無い。
 実体を持つ千人長ロンギヌスの槍は極めて高い強度を誇るが、それでも物理的な手段で破壊出来る――神性を帯びた聖遺物である千人長ロンギヌスの槍自体は放っておいてもいずれ復元するが、遣い手であるエルウッドはそうはいかない。あれを効果的に潰せるのは霊体武装だけだ。
 キメラの鈎爪は音として認識こそ出来ないものの、今だ超高周波数の轟音を発し続けている――それまでへばりついていた天井から飛び降りながらキメラが振り下ろしてきた鈎爪と、アルカードが床から振り上げた塵灰滅の剣Asher Dustの物撃ちが空中で衝突した。
 塵灰滅の剣Asher Dustとブラストヴォイスの鈎爪が衝突した瞬間、歯医者のドリルの掘削音に似た甲高い音が周囲に響き渡る――耳を劈く様な高音域の振動音が鋭敏な聴覚を持つキメラには堪えたのだろう、視界の端でこちらに飛びかかりかけていたバイオブラスターが両手で耳を押さえて悲鳴をあげた。
 あの鈎爪はおそらく高速で振動している――ブラストヴォイスの鈎爪は高周波数で振動し、接触した物体の分子結合を解くことで物体を切断する機能があるのだ。
 要するに高周波メスと同じ理屈だ――この原理で運用される高周波カッターは、理論上いかなる物体でも切断出来る。物理的な実体を持たないためにいかなる物理的手段を以てしても破壊することの出来ない霊体武装でなければ、たとえ千人長ロンギヌスの槍であっても破壊されていただろう。
Wooaaaraaaaaaaaaaaaaオォォォアァァラァァァァァァァァァァァァァッ!」 霊体武装と接触して周波数が可聴範囲まで落ちたために発生した耳を劈く様な高音に顔を顰め、アルカードは塵灰滅の剣Asher Dustを力ずくで振り抜いてキメラの体を跳ね飛ばした――そのまま壁に叩きつけられていれば生身の人間はおろかそこらの化け物であっても全身の骨格が砕け、内臓がことごとく破裂して即死していただろうが、ブラストヴォイスは猫の様に空中で体をひねり込み、子供用のおもちゃのスライムを壁に叩きつけたときみたいな音を立てて器用に壁にへばりついた。
 床の上に着地して、犬のお座りみたいな姿勢でぐえええええ、と叫び声をあげ始めたブラストヴォイスが反応するより早く、一気に間合いを詰める――剣で斬り込むよりもそちらのほうが早いので、アルカードは横蹴りをブラストヴォイスの胸板に叩き込んだ。
 蹴りに押し出される様にして背後の壁に叩きつけられ、ブラストヴォイスの肋骨が何本か折れる感触が伝わってくる――それが肺を傷つけたのか、ブラストヴォイスは口蓋から血を吐き散らしながらその場にうずくまって咳き込み始めた。
 よし――これであの爪も、音波攻撃も使えない。
 ブラストヴォイスの弱点は喉か肺だ――あの超音波はあくまでも叫び声なので、共鳴周波数をチューニングするまでの間声が出し続けられなくなる様にするか、もしくは呼吸そのものを出来なくしてしまえば、それで音波攻撃は封じられる。
 能力の性質はかなり違うが、あの高周波クローも鈎爪の高速振動の際に大量の酸素を必要とするだろうから、喉か肺を傷つけることでガス交換そのものを封じてしまえば持続出来なくなるはずだ。
 がしゃりと音を立てて、アルカードはそれまで左手で保持していたミンチ・メイカーを足元に落とした――ミンチ・メイカーの安全装置は撃針の動きを物理的にロックする構造を取っているため、衝撃を受けても暴発する危険性は低い。低い位置から落としたから、銃身やレシーヴァーが変形して使えなくなることも無いはずだ。
 そのままさっと左手を伸ばして、ブラストヴォイスの首を掴む。その気になれば鉄骨を変形させることの出来る握力でキメラの喉に爪を立て、アルカードは人間であれば喉仏のあるあたりを毟り取る様にして引きちぎった――びしゃびしゃと音を立てて動脈血と静脈血が入り混じってまだら色になった血が床に飛び散り、足元に転がったショットガンと両脚を鎧う甲冑の脚甲を濡らす。
 気道の一部を毟り取られて、ブラストヴォイスの絶叫が止まった。なおも悲鳴をあげようとしているのだろうが、喉笛を毟り取られたことで喉の奥に大量の血が流れ込んだためにごぼごぼという嗽の様な音しか出ない。
 ふん――鼻で笑って、アルカードは手の中に残った肉片を見下ろした。血まみれになっていて判別しにくかったが、手の中に残った肉片にこびりついた膜状の肉は、間違い無く引きちぎられた声帯の断片だ。
 とりあえず、ブラストヴォイスはこれでいい――即死するかどうかはわからないが、肺に血が流れ込んでガス交換にも支障が出るから、即座に戦闘を再開することは難しいだろう。喉と一緒に頸動脈のあるあたりまで毟り取っておいたから、脳への酸素供給にも障害が出るはずだ――生体が傷を再建するためには酸素が必要だが、それを体内に取り込めない以上、このまま脳組織が壊死を起こして死んでしまう可能性が高い。仮にそうならなくとも、とどめを後回しに出来る程度には衰弱しているはずだ。
 それよりも当面の問題は――
 アルカードは背後を振り返り、背後から飛びかかろうとしていたバイオブラスターの顔めがけて手の中に残っていたブラストヴォイスの喉笛を投げつけた――瞼が無いために血がもろに目に入ったのだろう、バイオブラスターはこちらを見失ったのか接近を防ぐために放熱爪を滅茶苦茶に振り回した。
 振り回しながら、もう一方の手の甲で顔を拭っている――そのあまりにも人間じみた仕草に戦慄を覚えながら、アルカードは先ほど足元に落としたミンチ・メイカーのグリップを手にした塵灰滅の剣Asher Dustの鋒で掬い上げた。接近が危険なら、接近しなければ済むことだ。
 ブラストヴォイスの喉を引きちぎった際に飛び散った血でべとべとになったグリップを血塗れになった左手で掴み止め、安全装置をはずしながら据銃する――なにも頭を一発で吹き飛ばす必要は無いのだ。頭よりも的の大きい胸部を狙って呼吸器系を破壊してしまえば、恒常性ホメオスタシスの過剰稼働のために大量の酸素を必要とするバイオブラスターの能力はすべて封じられる――拳銃用のセイフティー・スラッグと同様の構造を持つスラッグ弾は、一撃でバイオブラスターの胸郭内部を徹底的に破壊して絶命に至らしめるだろう。
 動きの止まったバイオブラスターの胸元に照準を定めてトリガーを引こうとしたとき、軽い風斬り音とともに視界の端をかすめたなにかがすこんと音を立ててバイオブラスターの背後の壁に突き刺さった。
 白い蝋に似た物体で出来た、牛乳瓶くらいの大きさの棘の様な物体だ――それがぼっという音とともにいきなり発火したかと思うと、次の瞬間爆発を起こした。
 なッ!?
 回避行動を取る暇も無い――アルカードはそのまま吹き飛ばされ、背後の壁に叩きつけられた。壁に叩きつけられる前に、体を捩って受け身を取る。耳鳴りに顔を顰めながら揺れる視界を立て直そうとかぶりを振ったとき、左手にある大宴会場――扉の上に掛けられたプレートからすると虎の間だ――の扉が内側に向かって薙ぎ倒されているのが視界に入ってきた。爆発に巻き込まれて吹き飛ばされたバイオブラスターがちょうど頭の横で爆発が起こったために鼓膜が破れたのか耳から血を流しながら、戸板の上で死にかけの魚みたいに痙攣している。
 周囲にジリリリリリリという非常ベルの音が響き渡り、同市に天井の各所から水がしたたり落ち始めた。ちょっとだけ開いた蛇口の様にちょろちょろと流れ落ちるその水は、スプリンクラーの散水だ――散水口に仕込まれた圧力センサーが水に反応し、ベルを作動させたのだ。
 アルカードの頭上のひとつだけでなく、複数の散水装置が作動しているのは、おそらく炎の熱で作動したわけではないからだろう。
 旧式、そしてもっとも普及している湿式のスプリンクラーは炎の熱に反応して熔断することで作動する易融合金で作られたヒュージブルリンクのほかに、アルコールやエーテルといった揮発性の高い液体を封入した硝子バルブ式のものがある。熱が加わると揮発性の液体が瞬時に蒸発、膨張し、その内圧上昇によって硝子バルブが内側から破壊されることでスプリンクラーが作動するのだ。
 広範囲の散水器が動作しているのは炎に反応して硝子バルブが砕けたのではなく、複数の硝子バルブが爆発の衝撃波で砕けたからだろう。湿式スプリンクラーの閉鎖式スプリンクラーヘッド、特に硝子バルブ式のスプリンクラーヘッドは衝撃に弱く、それが実際には火事が起こっていないのにスプリンクラーが誤作動を起こす原因になることがままある。人間が作業中に破壊することもあるし、阪神淡路大震災や能登半島地震ではスプリンクラー設備の破損による水損が多発したそうだ。
 基本的にはスプリンクラーは一度作動すると垂れ流しなので、たいていは警報装置と一緒になった制御バルブ――要は元栓だが――を閉めないと止まらない。基本的に普段は開きっぱなしになっているので、今の様にちょろちょろと垂れてくるだけというのは事前に意図的にバルブを閉めておかないとあり得ないのだが――
 まあそうなっているのはこれのせいだろう。自分の頭上に盛大に降り注いでくる大量の水でずぶ濡れになりながら、アルカードはガシガシと頭を掻いた。
 ほかの散水器が冬場に水道管の凍結を防ぐためにちょっとだけ蛇口を開いたみたいにちょろちょろ流れ出しているだけなのに比べて、アルカードの頭上からは大量の水がだばだば流れ落ちてきている――おそらく真上にあった散水器が爆発で破損し、散水器が吹き飛んだか配管に穴が開いてそこから水が漏れているのだろう。そのせいで配管内部の水圧が下がり、残る散水器には満足に水が供給されていないのだ。
 まあそれでも――
 胸中でつぶやいて、アルカードは周囲を見回した。見回したところ、周囲に制御バルブらしきものは無い。どのみち今積極的に止める理由も見つからなかったので、アルカードはそちらは放っておくことにした。
 バイオブラスターの生体熱線砲バイオブラスター、あの客室内で襲ってきたキメラの冷凍ガス、ホールで仕掛けてきたキメラのシアノアクリレート、いずれも周囲に大量の水――特に雨やシャワーの様に頭上から大量に降り注いだり、水しぶきが周囲に飛散している状況のほうが対処する側であるこちらには有利になる。問題は頭から水をかぶって、下着から靴下まで濡れ鼠になってしまったことだけだ。おまけに配管内部の細かな錆が混じっていたからだろう、そこかしこが妙にちくちくする。
 しかしおかしなことだ――小規模とはいえ爆発が起こったにもかかわらず、壁や床がそれほど焼損していない。それどころか場所によっては、明らかにスプリンクラーの飛沫以外の真水で濡れている。
 さらに、妙に息苦しい――今の爆発で酸素濃度が落ちたのか? 普通の炸薬の爆発なら炸薬そのものが爆発に必要な酸素をすでに添加されているから、爆発の際に酸素など必要としないはずだが――
 いぶかしみながら曲がり角から廊下に出て、棘が飛んできた方向に視線を向ける――また新型種なのだろう、背中に甲虫の鞘羽根の様な甲殻を持ち、肩にもボリュームのある大きな甲殻を備え、両脇に鮫の鰓裂に似たスリット状の器官のあるキメラが、こちらを認めてげげげげげっと声をあげた。
 あれがどんな能力を持っているのかはわからない。ただ、今まで見た限りではブラストヴォイスもバイオブラスターも、そして残る二種類のキメラ――シアノアクリレートの噴射能力を持つキメラを接着剤グルー、一酸化炭素を合成して冷気を発生させる能力を持つキメラをフリーザ様と名づけたのだが――も、距離攻撃と近接戦闘に特化した能力をひとつずつ持っている。先ほどの爆発する棘が飛び道具なら、接近戦のための武器をもうひとつ持っているはずだ。
 見たところ、体の前面にはあの棘は見えない――となると、背中の鞘羽根か肩の部分の甲殻の中に隠されているのだろう。ならば撃ち出すのには時間がかかるはずだ――そう判断して、アルカードは床を蹴った。こいつの能力も鈎爪に関連するものなら、接近戦に持ち込んでしまえばどうとでもなる。
 だが、それに合わせる様にキメラが両腕を突き出した。両腕の手の甲側にはなにかの射出管に似た器官がある――おそらくあそこからなにかを噴射するのだ。
 それに気づいて舌打ちした瞬間、両腕の射出管から火炎放射器の様に炎が噴き出した――猛烈な劫火に毒づいて顔をかばいながら、床を蹴って後方に跳躍する。
 炎の届く範囲から出たからか、キメラが噴射を止めてぎええええ、と鳴き声をあげる。
 髪の燃えるひどい臭いに顔を顰めて、アルカードは小さく舌打ちを漏らした。キメラの火炎放射で、髪の一部が燃えたのだ。
 後退したときに破壊されたスプリンクラーの真下を通ったために水を頭からかぶり、燃えた個所はすでに消火されているが、それでも不愉快には違い無い――なにより、もっと強力な魔物や物理法則を捻じ曲げるほどの技量を誇る強大な魔法使い、魔王や上級天使級の高位神霊ならばいざ知らず、たかが通信用のアミュレットの生成ひとつまともに出来ない三流の魔術師の造ったキメラに肉体を傷つけられたことが彼のプライドに障った。
「上等だ、躾のなってない馬鹿犬め」
 こめかみをひくつかせながら、アルカードは焦げた髪の房を塵灰滅の剣Asher Dustで切断した――おかしなことに、キメラの足元の床が大量の水で濡れている。明らかにスプリンクラーの配管から漏れ出した水ではない――それであのキメラの能力がなんなのかがはっきりした。
 水素だ。
 まだ飛行船の浮揚ガスとして使われるヘリウムがアメリカでしか生産されていなかった一九三七年、ヘリウムの禁輸措置を取られたために水素を浮揚ガスに使用して水素ガスを大量に蓄積した飛行船・ヒンデンブルグ号がドイツで火災を起こした様に、水素は地上でもっとも激しく燃焼する可燃物のひとつだ。きわめて燃焼速度が速く、そのためにロケット燃料としても利用される。
 おそらくあのキメラは両脇の鰓裂さいれつ状のスリットから空気を取り込むか、もしくは肺でガス交換を行った後の空気をそこから排出して、その際に水素だけを抽出して蓄積する能力を持っているのだろう。
 水素が酸素と化合すると水が出来る。床が濡れているのはそのためだ。周囲の壁紙や絨毯の焼損がそれほど激しくなかったのは、おそらく水素の燃焼と同時に発生した水蒸気のために、火勢ほどの燃焼力を持っていないからだろう。火力はそれなりにあるものの、同時に副産物として発生した水蒸気が周囲を湿らせてしまうために、結果として被害が少なくなるのだ。
 となると、おそらく先ほど飛ばしてきたあの棘はナノカーボンの塊なのだろう――白蝋状の物質で覆われているのは、たぶん白燐かなにかだ。
 水素は常温では、どんなに圧縮しても液状化しない――そのためにいわゆる水素ボンベというものは、技術的には不可能だ。安定した状態で保存するためには、水素吸蔵物質に吸蓄させた状態で保存しておくのが一番適している。
 ナノカーボンは炭素を基調にしたジャングルジム状の構造を持つ同素体で、タオルが水を吸い込む様に大量の水素を吸収し蓄積する特性を持つ。
 プリウスの様なハイブリッド自動車や電気自動車用の水素反応型燃料電池の主構造材としても研究が進められており、それまで主流だったニッケル・マグネシウム合金の五倍以上の水素を蓄積することが出来るのだと、昔読んだ科学雑誌に載っていたのを記憶している。
 生体の体には炭素が存在しているから、ナノカーボンを作るのに必要な炭素は自分自身の体組織や、あるいは摂食の際に取り込んだ獲物の肉から容易にひねり出すことが出来る。
 おそらくあれは、取り込んだ炭素を使って体内でナノカーボンを作り出す器官を備えているのだろう――ナノカーボンに水素を蓄積し、白燐で覆って撃ち出すことで、一種の炸裂弾の様な挙動をすることになる。
 ナノカーボンに蓄積された水素は大気との摩擦で発火した白燐の発生する熱と目標に突き刺さった衝撃で放出され、そして白燐の炎で引火して高速で燃焼し爆発するのだ。
 先ほどの爆発直後に息苦しかったのも、おそらくそのせいだ――ナノカーボンは水素を大量に蓄積しているが、酸素は吸蔵していない。水素が燃焼するには酸素が必要だから、燃焼の際の酸素は周囲の空気から奪うことになる。周囲に空気が十分に存在しても、酸素濃度が低ければ人間は息苦しさを感じる――水素が酸素と化合したために周囲の空気から大量の酸素が奪われたから、周囲の酸素濃度が低下して息苦しく感じたのだろう。
 おそらく先ほどの火炎放射は水素と一緒に少量の燐を高速で噴射することによって自然発火させ、それを点火剤スターターとして利用しているのだろうが――

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