お風呂の湯船に浸かったまま、
彼の文字の言葉に、私の脳が操られていた。
左手に、スマホを
右手は、自分の意思に反して動く。
それは彼の手だ。
胸元から、ゆっくりと優しく撫で下ろして、
おへそから腰へ。
声が出ちゃいそうなのを堪える。
余計に意識が集中する。
彼は、夜の外を
犬を連れて歩いている。
歩きスマホは、危険なので、やめて欲しい。
そう言ったのに、LINEの文字を打つのを辞めようとしなかったのは、私のため。
俺が車に引かれたら、
川に落ちたら、
きみのせいだからね。と、笑って続けた。
どうか、気をつけて。
あなたには、私の夫のようになって欲しくないの。
そう思ったのは、記憶にある。
そしてついに、彼の手が私の中に入ってきた。
懐かしい痛みを感じたい。
それを再現できなくて、苦しむ。
どうもがいても、あなたの代わりにはならないの。
私は、我慢ができなくて、彼にお願いする。
もういいよ。
彼が私を解放してくれた、その後すぐに、
私は自分の手で天極へ行った。
私の夫は、去年の11月の夜、
一人で、人気のない場所を犬を連れて歩いていた。
歩きスマホで、踏み出した場所は、2メートル下に川が流れる空中だった。
気がつけば、
冷たい水に浸かりながら、空を見ていたそうだ。
もうダメだと思ったらしい。
夫は、何とか帰ってきた。
死んでもおかしくなかったと、その時の状況を聞いた。
それからは、腰痛と腰の違和感に、今もずっと悩まされている。
私にはもう、下腹部に鈍く痛みのある快感は、訪れることはない。
もう、懐かしささえ、覚えてくるのだった。