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宇宙飛行士は早く老ける?

2007-01-29 22:06:25 | BOOKS
ジョーン・ヴァーニカス 「宇宙飛行士は早く老ける?」 朝日新聞社 2006.09.25. 

宇宙飛行士たちは若く、体力もあり、厳しい訓練に耐えた、選び抜かれた人たちである。にもかかわらず、ミッションが終わって宇宙から戻ったときにはなぜか、彼らの身体に急に歳をとったのと同じようなさまざまな変化が現われます。視力が低下してものがぼんやりと見えたり、身体の姿勢をうまく保つことができなくなったり、歩くときには赤ちゃんのようなよちよち歩きになってしまいます。 老化の問題について考えると、老化による多くの症状は、年齢そのものとは関係がないと確信するようになりました。現代の生活習慣に身体を慣らしてしまった人は、重力の恩恵を避けて生活しているようなものです。重力を理解し、重力を利用する方法を身につけることが、よりよく老いる秘訣なのです。 筋肉の衰えと骨量の喪失は加齢との関係で、再び若い頃の状態に戻すことは不可能。また、高齢者のエクササイズは怪我をしやすくて危険だとされていました。老年医学の専門家であるタフツ大学のマリア・フィアクローン・シンらは1994年に、歳をとって筋肉が衰えても、元に戻すことができる、という研究成果を発表しました。90代の高齢者が、12週間ウエイトトレーニングを行なった結果、筋力と持久力が増加したのです。重力と寿命がどうかかわっているのかは、いまのところはっきりしていません。まず、過重力下では体重が増して代謝も亢進するので、寿命は短くなると考えられます。実際、ミバエを過重力下で飼育した実験では、早死にする傾向が認められています。2Gの過重力下でラットを飼育すると、筋肉や骨は丈夫になるのですが、寿命は10%程度短くなっています。一方、重力のほとんどない宇宙で何カ月も生活をすると、代謝率が下がり、体温が低下します。骨は弱くなり、筋肉は脂肪化する傾向にあります。宇宙飛行士の消費エネルギー量は時間が経つにつれて地上の60%くらいまで減少していきます。これは単純に重力に逆らうためのエネルギーが必要なくなるからだと考えられます。宇宙で身体が突然老け込んでしまったようになるのは、無重力への適応の姿なのでしょう。地上に戻ってきた宇宙飛行士たちが、必ず元に戻ることもまた、大きな意味をもつのです。人類が火星に恒久的に住むことになったら、何代か世代を重ねたのち、寿命が延びることが証明されるかもしれません。

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